サマーウォーズ : インタビュー
細田守監督 インタビュー
――描かれた家族像は、ご自身の思い出と重なるでしょうか?
「高校生の頃は、確かにお盆に田舎で親戚が集まって、形の合わないテーブルをあわせてワイワイご飯食べてましたね。それが夏の大きなイベントでしたし、楽しかったという思いはあります。いまの人はどうなんでしょうね。夏に親戚で集まったりしないのかなあ……。でも、集まる人は集まりますよね、きっと」
――女の人が台所に集まってワイワイやっている姿がリアルというか、普遍的な感じがしました。陣内家を女系家族に設定したのは?
「昔の家庭といって思い起こすのは、この映画でも描いているように、男の人は酒を飲んで酔っ払って、女の人がお酒を管理してたり、親戚のおばさん同士が台所でおしゃべりしたりする姿。そういう昭和の家族像みたいなのって、封建的なものを引きずっているように見えますけど、実はどんな家庭も女性が支配してるんじゃないかと思うんです。だから、実は全然封建的じゃない。一見、男が偉そうにしてるけど、完全に尻にしかれている(笑)。そういった『女性がビシッと締めてくれている安心感』というのは、昭和の昔から日本の家族を支えてきたと思うんです。だから、陣内家が栄おばあちゃんを中心とした女系家族になったのは、日本の家族史の本音の部分に近いんじゃないかなと思うんです」
――オリジナル作品をやるというのは、現在の業界の事情的にも難しいと思うのですが、「時かけ」が興行的にも内容的にも成功を収めた後の新作で、オリジナルで勝負しようと思ったのは?
「こういう不況になると、企画も保守的になりがちですけど、映画というのは、そういうときこそ、みんなを励ますためにあると思うんです。そのひとつの意気込みというか、こういうときだからこそ、みんなで頑張って突破しようという気持ちの表れが、オリジナル脚本で映画を作ろうということにつながっていると思います。あとは、アニメーション映画や日本映画全体の可能性、楽しさを広げていきたいという思いがありました。こうした大家族を楽しくワイワイ描いて、しかもアクション映画にするっていうのは、いままでにないわけですから。それはチャレンジングな企画ですが、スタッフ、キャストはみんな、それに意味を感じて一生懸命作ったので、見てほしいなと思います」
――ヒット作の次ということで、プレッシャーはありましたか?
「プレッシャーは毎回あります。『時かけ』が成功したから急にというわけじゃなく。映画監督って、1本失敗したら終わりですから(笑)。毎回最後だと思ってやってます。作った映画をみんなに見てもらえて、次のチャンスを与えられたとして、そこでチャレンジせずに保守的なことをしていたのでは、支持してくれた人に申し訳ない。そいう思いで、『サマーウォーズ』もチャレンジだらけの作品になっていると思います」