「背筋が寒くなるような現代劇」おとうと わたぼうさんの映画レビュー(感想・評価)
背筋が寒くなるような現代劇
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過去に山田洋次監督作品は「隠し剣、鬼の爪」や「武士の一分」を見たことがあったが、現代劇は初めてでした。
パッと見で豪華。脇を見ても豪華なキャストが少し古くさい空気とセリフで、現代社会の問題点を風刺するような感じで動いている。
「ディア・ドクター」で衝撃的に主役を好演した鶴瓶が破天荒な弟を上手く演じ、大女優・吉永小百合がしっかりした姉を演じていたが、心に強く残ったのは別の方々だった。
まず1つ。
ホスピスの所長役の小日向文世。
一見、苦しい民間経営のホスピスをスタッフと懸命に続け、笑いを絶やさないようにしている献身的な善人に見えるが、実際は最も人間らしくない機械のようなキャラクターだと思う。
死に日常的に触れ、恐怖感が麻痺して慣れてしまったが故に、吉永小百合や蒼井優が涙している時に冷静に脈を計り、死亡時刻を確認する。
その淡々とした一連の動作を見て、吉永小百合と蒼井優が呆気に取られたような表情をしたような気がするのは自分だけだろうか?
加瀬亮が怒鳴るんじゃないだろうか、とハラハラしてしまった。
もう1つは、ラストシーンの加藤治子のセリフ。
蒼井優の2度目の結婚式前日、食卓を囲んで、「あの人(鶴瓶)は来ないのかい? 最近、かわいそうになってきてね。呼んでやったらどうだろう。それとも、今からじゃもう遅いかねぇ」。
背筋が震えて、涙腺決壊寸前だった。
この2人に物語の大半を持ってかれてしまった本作。優劣は付けたくないが、自分は山田洋次監督作は時代劇の方が好きだなと思った。
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