「映画的な味付けに芸がない」ゼロの焦点 マスター@だんだんさんの映画レビュー(感想・評価)
映画的な味付けに芸がない
非常に丁寧に作られている。登場人物も整理されていて分かりやすい。ミステリーとしては単純だが、うまく時代背景に乗った話に仕上がった。
前半は、皆、怪しそうで、常套ながら出演者たちの持ち味が活かされている。中盤から犯人像が絞り込まれていくが、犯行の動機は依然はっきりせず、ラストで一気に解き明かす構成がいい。
気に入らないのは、事の成り行きを、語りだの字幕で処理してしまう手法だ。映画は、絵と音で表現するものであり、観るほうも馬鹿ではないのだから、状況で判断できる。そういう絵作りをするのが映画人の仕事。ナレーションやスーパーが多い映画は、説明っぽくて嫌いだ。せっかくの構成も、荒れ狂う北陸の海のような、観る者に迫る勢いが消失してしまった。
女優陣、魅力的だし、さすがに上手いが、お互いを意識しすぎか、やや力みが見えるところも。
昭和30年代の様子が上手く出ている。列車の揺れ具合など当時を思い出す。壁に貼られたホーロー看板やチラシは、やや整然とし過ぎて不自然。
余談だが、写真館が使うカメラのスリ硝子に投影される像は、正像ではなく、天地逆さまになるはず。また、当時の印画紙(写真)はバライタ紙であり、樹脂が含まれていないので、燃やしても化学的な色の炎にはならない。
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