今度は愛妻家 : 映画評論・批評
2010年1月12日更新
2010年1月16日より丸の内TOEI1ほかにてロードショー
改めてパートナーを大切にしたい気持ちになれる、大人のためのファンタジー
原作は池田成志・長野里美主演で8年前に上演された、舞台の戯曲。登場人物は離婚寸前な夫婦を中心とした、5人の男女。そして、物語は自宅のリビング、ほぼワンシチュエーションで進行していく。そんなウェルメイド感漂うニール・サイモンのような作品を、なぜ三谷幸喜でなく、行定勲が監督しているのか? ネタバレ厳禁な本作、最大のヒントはそこにあるといえよう。
ダメダメな夫を演じる豊川悦司と天然でエイジレスな妻を演じる薬師丸ひろ子。まるで、“その後の「きらきらひかる」”のような2人による呼吸の合った歯切れよい掛け合いが続く前半パートはさすがの一言だ。しかも、行定監督とカメラ・福本淳の共犯による“とにかく可愛く撮る”という薬師丸愛を尋常じゃないほど感じるではないか! 石橋蓮司演じるおせっかいなオカマは、あまりにベタなキャラかもしれないが、男女の愛をテーマにした本作にはいいフックとして効果を出しており、総合的に夫婦や恋人など、改めてパートナーを大切にしたい気持ちになれる大人のためのファンタジーに仕上がっている。だが、ネタバレ後のダメ押しといえる展開があまりにクドく、若干興醒めしてしまうところも……。これはとにかく泣きたいという、今の観客に合わせたサービスなのかも知れないが。
(くれい響)