ダイアナの選択 : 特集
ユマ・サーマン、エバン・レイチェル・ウッド主演の「ダイアナの選択」が間もなく公開を迎える。美しい映像とミステリアスな雰囲気に、白昼夢を見ているような不思議な気分にさせられる作品だが、そんな中で迎える結末は驚きの仕掛けが……。そんな本作の魅力とは?(文・構成:平田裕介)
観る者を引き込む、数々の仕掛けと要素に満ちた「ダイアナの選択」
■巧みな語り口と醸し出されるムード、繰り返し見たくなる緻密で巧妙な構成
大がかりでド派手なアクションに興奮したり、VFXをフル投入した先駆的ビジュアルに息を呑むのも悪くないが、たまには巧みな語り口や全編から醸し出されるムードにハッとさせられたいもの。そんな気持ちを叶えてくれること間違いなしなのが、この「ダイアナの選択」だ。
コネチカット州郊外の小さな町、ブライアー・ヒル。地元の高校に通う17歳の女子高生ダイアナとモーリーンは、正反対な性格でありながらもなぜか気の合う親友同士だった。そんなある日、クラスメイトのマイケルによる銃乱射事件が校内で発生。興奮状態にある彼からマシンガンを突き付けられた2人は、「どちらかをひとりを殺す」と究極かつ残酷きわまりない選択を強いられる。
それから15年後、ダイアナは美術教師に。かつての事件の記憶と罪悪感に苛まされがらも、愛する夫と娘に囲まれた幸せな生活を送っていたが……。
そのヒリヒリとした雰囲気もさることながら、本作最大の妙味といえるのが“繰り返して見たくなる”緻密で巧妙な構成。10代のダイアナと30代のダイアナ。ひとりのヒロインのふたつの人生を、“過去と未来”とも“現実と理想”ともつかないシークエンスを交錯させながらドラマを進行させつつ、想像もつかない驚愕のラストへ導いていく。また、そうしたシークエンスのいくつかが複数回にわたって登場、そのひとつひとつが現れるごとに細部の変更が施されており、物語が進んでいくに従って重要な伏線になっていくという仕掛けには感嘆させられてしまう。
そして、随所に挟みこまれる自然風景を捉えた美しいビジュアルも鮮烈な印象を放つ。
ダイアナが住む家の庭に咲き乱れる色とりどりの花、その周りを飛び交う蜂と鳥といった映像が、作品の根底に横たわるテーマのひとつ“生と死”のメタファーとして、物語に重みと深みを与えている。
■監督は2作目にして名匠の風格&2人の女優が体現する繊細な空気
メガホンを取るのは、ジェニファー・コネリー主演のドラマ「砂と霧の家」で高い評価を得たバディム・パールマン。長編映画デビュー作だった同作で、いきなりのアカデミー主演男優賞、助演女優賞、音楽賞の3部門ノミネートという快挙を果たした彼の満を持した監督第2作で、その手腕には既に名匠の風格が滲み出ている。
そして、ダイアナを演じる2人の女優も無視することができない。17歳のダイアナに、「サーティーン/あの頃欲しかった愛のこと」でゴールデングローブ賞にノミネートされ、若手女優の急先鋒に躍り出たエバン・レイチェル・ウッド。本作でも「サーティーン」同様に、言いようのない不安や焦燥を抱え、なにかとトラブルを引き起こす思春期ならではの少女の内面をリアルにすくい取る。そして30代のダイアナに「キル・ビル」2部作の実力派ユマ・サーマンが扮し、過去に背負った心の傷に苦しむ姿を繊細に体現。両者の演技が、観る者を作品に引き込む重要なファクターとなっている。
「ヴァージン・スーサイズ」に代表される少女映画の位置にありながら、「ユージュアル・サスペクツ」にも似た衝撃と緊張感を内包した、“ヒューマン・ミステリー”とでも呼ぶべき作品だ。
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