チェ 28歳の革命 : インタビュー
「チェ/28歳の革命」「チェ/39歳 別れの手紙」で20世紀最大のカリスマをスクリーンに再現させたアカデミー賞俳優ベニチオ・デル・トロ。ともにアカデミー賞を受賞した「トラフィック」の盟友スティーブン・ソダーバーグ監督と組んで、一世一代の大仕事を成し遂げたデル・トロに、ゲバラを演じる上での役作りや撮影時の苦労などを聞いた。(取材・文:サトウムツオ)
ベニチオ・デル・トロ インタビュー
「チェ・ゲバラを演じることは不可能に近い。それは恐ろしいことだった」
──25キログラム減量したり、役作りに大変苦労されたと思います。特に、内面でどのように取り組んだのですか。また、第1部と第2部でチェ・ゲバラの年齢も違います。どのようにアプローチしたのですか?
「普段、役作りをする準備段階には音楽を聴いているんだけど、今回第2部の撮影前は作品の内容もあって一切聴かなかった。一方で第1部ではたっぷり音楽を聴いていた。それがアプローチとしての大きな違いだね。
リサーチの方法もいろいろあるんだろうが、今回はまず、チェ・ゲバラの自伝をむさぼるように読んだ。特に、彼自身が書いた伝記から彼の心情を学ぼうとした。それと、チェの場合、貴重な財産がある。つまり、彼と時を共に過ごした人々がまだ生きているということだ。そういう方々に話を訊いて、また彼を撮った写真もたくさんあるのでよく見て、彼のイメージを頭の中に詰め込んで、それから一旦捨てた。
俳優として大切なことは、そのシーン毎に求められていることが何かということなんだ。だから、撮影の時はできるだけ集中して、ソダーバーグ監督の要求に沿うように演技を固めていったんだ。やはり、役作りの上では“これでいいんだろうか”と相当に悩んだよ(笑)。でも、監督をはじめ、カメラマンやメイクの人の姿勢に後押しされたんだ」
──今回は役作りするほかに、プロデューサーを兼任していますね。映画の取り組み方はやはり違うものですか?
「プロデューサーをやる上で今回大きく違った点は、ストーリーラインを作る際にも関わったことかな。これは俳優だけで参加する場合、普通ないことだね。やっぱり、撮影に入ると、俳優業に専念したんだけどね。その前の準備段階では、チェ・ゲバラについての証言者にアポを取って、会いに行くというとてもクリエイティブな作業もしたんだ。その旅先でつかんだ情報、収穫を、脚本家(ピーター・バックマン)に伝えて、脚本作業に役立てるわけなんだね。
また、監督から“こんなエピソードはないかな?”という要求があると、それに近い情報を得るために脚本家と一緒にロケハンをしたりして、いい証言者がいれば向かったりした」