劇場公開日 2010年1月23日

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サヨナライツカ : インタビュー

2010年1月21日更新

日本で興行収入30億円を超すヒットを記録した「私の頭の中の消しゴム」のイ・ジェハン監督の最新作「サヨナライツカ」が、1月23日に全国で公開される。辻仁成原作の人気小説を、「東京日和」以来12年ぶりとなる中山美穂主演で映画化にこぎ着けたイ・ジェハン監督に、話を聞いた。(取材・文:編集部)

イ・ジェハン監督“岐路”を経て突き進む、傑作への飽くなき願望

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■原作者・辻仁成からの無言の激励

イ・ジェハン監督にとって、韓国で260万人を動員した「私の頭の中の消しゴム」(2004)以来、実に5年2カ月ぶりの新作。日本でも大ヒットを記録したことは記憶に新しいが、そんなときに韓国語に翻訳された「サヨナライツカ」に出合った。読後すぐに映画化に向けて動き出し、07年5月に仏パリ在住の辻へ完成したばかりの脚本を送付。「台本が非常によくできているとほめてくれましたし、傑作になる確信を抱いたとも言ってくれました。『映画は君の作品だから』と祝福してくださった後は、私のやろうとしていることを尊重して注文や要求も一切なかったし、いつも応援してくれた」と振り返る。

それから数カ月後の夏、パリからさらなる吉報が届いた。辻の手元にあった脚本を読んだ中山が関心をもっているという内容で、「美穂さんの意思がパリから東京を経由して韓国に連絡がありました。うれしかったですね」。イ・ジェハン監督は、「Love Letter」で初めて中山の存在を知ったといい「あの作品を見て、美穂さんのファンになったんです。それ以来、いつか機会があれば一緒に仕事をしたいという気持ちがずっとありました。沓子がもつ自由奔放な魂を美穂さんも持っているんじゃないかな……と感じていたし、それは的中したと思います」と静かに、そして揺るぎない口調で語った。

次回作はアクション映画を撮るという
次回作はアクション映画を撮るという

■今後も傑作を夢見ていく

同作は、タイ・バンコクや日本を舞台に、決して結ばれることのない男女の25年間にわたる愛を描いた、壮大な恋愛叙事詩だ。“人間は死ぬとき、愛されたことを思い出すのか、それとも愛したことを思い出すのか”。劇中で何度となく出てくるセリフが、同作の本質、イ・ジェハン監督の伝えたいことを明確に代弁している。

そして、イ・ジェハン監督は全編を総括したときに“岐路”という言葉に強い思い入れを込める。西島秀俊扮するエリートビジネスマンの豊を愛する2人の女性が対峙するシーンがある。愛されることが幸せだと思ってきた女と、愛し続けることが幸せだと思ってきた女という、対極に位置し、決して相容れることのない存在が浮き彫りになる決定的な場面だ。石田ゆり子が演じる豊の婚約者・光子は、穏やかながらも最後まで自分の愛を貫く姿勢を前面に出す。それに対し、豊と過ごした日々を脳裏に浮かべ、さまざまな感情が去来しながらも涙をこらえる沓子の姿に「私自身、あのシーンに最も強く岐路を感じています。そして、同僚から祝福のシャンパンを頭からかけられるシーンが、豊にとっての岐路でしょうね」と説明した。

ラブストーリーの旗手であるイ・ジェハン監督にとって、今回の撮影は英語、日本語、韓国語、タイ語が飛び交う多国籍プロジェクトは刺激多きものとなったようだ。今後の創作活動について、いつになくじょう舌に話してくれた。「SF作品あり、コメディあり、多様なジャンルの作品を撮っていきたいと思う。『サヨナライツカ』が、今後も傑作を夢見る私にとってスタート地点になる位置づけの作品にしたい。決して、終止符ではなくて(笑)」。

インタビュー2 ~中山美穂「愛したことも、愛されたことも思い出したい」
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