ハプニング : インタビュー
「シックス・センス」での鮮烈な監督デビュー以降、常に観客を驚かせるユニークなアイデアで映画を撮り続けてきたM・ナイト・シャマラン監督。最新作「ハプニング」のアイデアはどこから生まれたのか? 監督本人を直撃した。(取材・文:立田敦子)
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M・ナイト・シャマラン監督インタビュー
「人は変化するし、違ったことをやるべきだと思う」
――「ハプニング」では、人が奇妙な行動をとって最終的には死に至る、という現象が脅威の対象となっています。この発想はどこから得たのですか?
「僕が知っている中で最も賢い友人がいるんだ。プリンストン大に通っているとき、路上で他の自転車に乗った学生が車にはねられてふっ飛ばされるのを目撃した。友人はとんでいったら、その学生は、『大丈夫、大丈夫。救急センターに行く前に、寮に自転車をおいてこうようかな』って言ったそうなんだ。友人は、まず救急センターに行くべきって言ったんだけど、また数分後に、その学生は、自転車を置いてこようかな、という。友人は、生涯の中で最もぞっとした瞬間だといっていたよ。人間が同じことを繰り返すのは、体の中でなにかが起こった証拠なんだ。その学生の脳は内出血をしていて、重症だった。今回の現象の元はこの話からきているんだ」
――その現象の理由は、説明されませんね。
「ヒッチコックの『鳥』は、すごくパワフルな映画だよね。なぜ鳥が人を襲い始めたのか、なぜ襲撃を止めたのか、なにも説明はない。それは人を謙虚にさせると思うんだ。僕たちは常に答えをもっているわけじゃない。なぜ洪水が起こり、地震が起きるのか誰にも説明できない。不安に感じたり、無防備だと感じたり、この惑星のとるに足らな小さな動物だと感じることは正しいと思う。もっと人生を豊にするという意味でね。理想的な物語のエンディングとは、終わりがないこと。人生と同じように、ずっと続くんだ」
――これまでのあなたの作品では、エンディングでのドンデン返しが常に用意されていましたが、その期待をあえて裏切ろうとしたのでしょうか。
「(今までと同じドンデン返しを)やったとしても、馬鹿だし、やらなかったとしても馬鹿だったと思うね。どっちにしても、僕は馬鹿なんだけど(笑)。僕の唯一の選択肢は、これは飛び込み台からのダイビングのように、とてもシンプルなもので、アクルバティックなものはなにもない、とはっきり言うことだけだ。それが、最初からこの作品でやろうと思っていたこと。人は変化するし、違ったことをやるべきだと思う。だから、とてもクラシックなストーリーにしたんだ。次の僕の映画には、観客は、さまざまな異なる期待をもつようになるだろうね。このエンディングが観客にどのように受け取られるか、興味深いよ」
――ところで、現在公開されている「インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国」に関わるはずだったとか。
「プロジェクトの最初に脚本家としてアプローチされたんだ。スティーブン・スピルバーグやジョージ・ルーカスと会って話したけど、それは素晴らしかったね。僕は、ちょうど『アンブレイカブル』を終えようとしていたときだったけれど、すでに『サイン』のアイデアもあった。書いた脚本を渡すというのではなく、彼らと一緒に仕事をするという話だったので、家も長期で空けなければならなかった。それで、結局は断ることになった。家族で決めたことなんだ。残念だったけど。僕のオフィスには、僕の作品じゃない映画のポスターが1枚だけあるけど、それは『レイダース/失われたアーク《聖櫃》』なんだよ」