「もしかしたら、ハリウッドはもうこのような無邪気なスーパーヒーローものを観客に受け入れさせてきた魔法の神通力を失ってしまったのかもしれません」アイアンマン あき240さんの映画レビュー(感想・評価)
もしかしたら、ハリウッドはもうこのような無邪気なスーパーヒーローものを観客に受け入れさせてきた魔法の神通力を失ってしまったのかもしれません
アイアンマン
2008年公開
これは面白い!
男の子の心を鷲掴みにする映画です
VFX も素晴らしく、チープさは皆無
名作です!
それなのに超久方ぶりに観ると心から楽しめなくなっている自分に驚きました
何だろう?
ストーリーも映像にも何も文句ない
相変わらず、とてつもなく面白い!
素晴らしい!
なのにつまらない
何故なんだろう?
イーロンマスクなんて男が現れたからだ
今日は2025年4月
本作公開から17年も時は流れました
その年月の長さ故に?
いやこの数年だけのことが自分の心の中の何かを変えて本作を痛快娯楽作品として楽しめないようにしてしまったからのようです
冒頭のアフガンから、米軍は逃げるように撤退したのを見たのは2年前の2023年8月のこと
そして、
ウクライナ戦争はその前の2022年から始まっていました
いまはもうその戦争も3年も過ぎさり新大統領が停戦交渉に乗り出しているところです
それも侵略されている側のウクライナに難癖をつけるのを見てしまったからでしょう
イーロン・マスクなんて男、本作冒頭のトニーそのまんまの人間が現れて、どんなことをしたか、何を話すのかを見聞きしてしまったからでしょう
それに新大統領がウクライナに、戦争を止める為にもう古兵器を売らないと通告したのは、本作のトニーそのように改心した訳では全然ないのを知っているからです
本作はただの娯楽作品です
そんなことは何の関係もありません
それは分かって入るのに、もう楽しめなくなっている自分に気づくのです
もしかしたら、ハリウッドはもうこのような無邪気なスーパーヒーローものを観客に受け入れさせてきた魔法の神通力を失ってしまったのかもしれません
残念なことですが、これも時の流れなのでしょう
大きく時代が変わったとつくづく思いました
西部劇の正義の保安官も、超音速戦闘機を見事に操るパイロットも、国際秘密情報局のスーパー工作員もみんな色褪せてしまったのです
アメリカに対する信頼感や好感が一気に吹き消されたかのように感じてしまうのです
憧れていた自由の国アメリカは映画の中のことだけだったのです
2025年の春
アメリカという物語のエンドロールを今観ている気がするのです
そしてその最後に新大統領とロシアの大統領と中国の主席が三人揃って現れて新しい世界への勧誘をしているのです
アベンジャーズにようこそ!と
あんなに楽しかった本作なのにそんな事で頭がグルグルと巡ってしまうのです
自分だけの考え過ぎかも知れません
でも世界中の人々がそのような幻滅を感じているのだろうと思わされてしまった作品でした
蛇足
モチーフの似ているロケッティアは1991年の公開です
だからそちらの方が17年も早いです
そちらも少年の心を虜にします
お薦めです
あき240さん
確かに、現アメリカ大統領の発言を見聞きする度に、アメリカに対する印象を変えざるを得ない、そんな報道が続いていますよね。
先日行われたアカデミー賞授賞式で受賞者者の方々が語った、今の世界情勢や分断に対する強い思いに心を打たれ、ハリウッドや映画界が、世界を変えていく大きなうねりのひとつになるのでは、と感じました。