洒脱でコミカル。
ウイットに満ちてちょっぴり涙も。
《友達がひとりもいないこと》を突然周囲のみんなから
「そうだよ!そうだよ!」と指摘されて、狼狽をするフランソワが哀れで悲しい。
まるで意地悪ゲームか悪夢のような風景ですよね、
それも妻同席のテーブルでですよ!
・・・・・・・・・・・・
なぜ人は「だからあなたには友だちがいないのね」と言われると、かくもダメージを受けて落ち込んでしまうのだろうか、
父が母からその台詞を言われてた。
それを聞いてしまったのは僕が小学生の頃であったが、子供ながらに僕自身がひどく傷付いた思い出がある。
近年では、
「きりんさん、どうして阿修羅のような顔をしてるんですか?」
「あなたが街を歩いているのをたまたま喫茶店のガラス越しに見たんですけど死人のような顔でしたよ」
・・これ、僕が仕事仲間から言われた言葉なんですけど、
近づきがたいオーラがきっと出ているはずです、はいはい、わかってます。
実は逆に僕も言ったこともあるんですよ、
「きりんちゃん友だちじゃないかー」
「え?君は知り合いだけど友だちじゃないよ」。
「きりんさんとは友だちでいたいと思っているんです」
「友だちなんかにならなくてもいいからちゃんと仕事やってくれ」。
友達。
僕にもいないなぁと思っていたので、予告を見てこの映画に、壺を衝動買いする主人公フランソワのごとく、誘蛾灯の蛾のように吸い寄せられたんですね。
・・・・・・・・・・・・
フランス映画によく見られる“冷めた会話”に寄ったストーリーではなく、雰囲気重視の、人の存在の暖かみを喜び合えるルコント作品です。
(でも少々の毒気は忘れていないけど)。
短い尺でテンポは快調。
ギャグテイストもふんだん。
“商売もの”が得意なルコントは身近で既視感があって共感できる。
そして登場人物の全員が抜群の役者なので画面が非常に締まっています。
ほとんど台詞のない役者さんたちについても、どんな人なのか知りたくてしょうがなくなるほどお顔が魅力的。
ブリュノ ムロツヨシ
フランソワ 吉幾三
キャサリン 天海祐希
・・とかでリメイクできそう、脚本が完璧だから。
・・・・・・・・・・・・
タクシー映画の良作ですね。
ブリュノのお母さん役(マリー・ピレ)は、あのビフォアシリーズのジュリー・デルピーの本当のお母さんなんですよ。
「パリ、恋人たちの2日間」で、その本性ご覧ください。
・・・・・・・・・・・・
で「友達」いるのかって?
鬼籍に入っちゃったり超遠距離だったりですよ、
補充したり代用したり、ましてや友達捜しで作るもんじゃないですからね。
“浅く広く”より、“深く深く”のきりんです。