告発のとき : インタビュー
3年前の賞レースシーズンにポール・ハギス監督と出会い、そこから友情を育んで本作に出演したというシャーリーズ・セロン。「モンスター」「スタンドアップ」に続いて、現代アメリカの問題を直視した社会派ドラマに挑戦した彼女に、本作に出演した感想を聞いた。
シャーリーズ・セロン インタビュー
「私たちは兵士の生の声を聞くべき時にきているのよ」
――どういった経緯で本作に出演することになったのですか?
「ポール(・ハギス)と私は、05年度のアカデミー賞のシーズンに初めて出会いました。ポールは『クラッシュ』で、私は『スタンドアップ』でノミネートされていて、私たちは負け犬2匹のように、どこの会場の裏の通路でも、タバコを吸っていました(笑)。それで、お互いに話を始めて、話が進み、友情が生まれ、それがシーズン中ずっと続き、彼がこの物語を話してくれました。それから1年後のある夜、彼がメールで脚本を送ってくれました。そして、それを読んだ私は翌日、出演する旨をポールに伝えたんです」
――ポール・ハギスは現在ハリウッドで最も注目されている脚本家・監督です。彼との仕事はいかがでしたか?
「言うまでもなく、彼はとてつもなく優れた脚本家の一人よ。そんな彼が、人生の後半に入った今、監督をする気持ちになったのは、素敵な驚きよね。彼は、信じがたいほど才能に恵まれ、人間行動を非常によく理解出来ていて、今問題となっている、重要な主題について関心を抱いている。とても賢い男性だわ。また一緒に、仕事をしたいわね」
――今回はトミー・リー・ジョーンズとの出番が多いですが、彼との共演はいかがでしたか?
「トミー・リーとの仕事は、まるで神様からの贈り物のようでした。彼のことは俳優としてとても尊敬しているし、トミー・リーのスタイルは私の仕事の仕方とよく似ていて、とてもいい共演だったと思うわ。彼の演技があまりに素晴らしいから、時によっては、彼が台詞を言い、私がそれに返すだけで、素晴らしいシーンになることがあるの(笑)。そんな経験滅多に出来ないわ。また彼とドキドキしながら共演したいわね」
――あなたにとって、このような映画に出演する意義は何なのでしょうか?
「私はいつも、観客が映画に接するように、自分の出演作に接したいと思ってるの。なぜなら、私は映画を見に行くのが好きだから。私が今回のような社会的なメッセージが含まれてる映画に携わる場合、一番やりたくないのは、説教くさくなること。そういう説教めいた映画は見たくないでしょ(笑)。だから、今回のように事実を基にした物語では、ただ真実をありのままに伝えることが大事。それが一番望ましい形だと思うわ。そして、好ましい議論と好ましい会話を喚起する。ただ、戦争に焦点を当てるのではなく、今ここで何が起きているか。それに目を向けることも重要よね。本物の人間が、この戦争から帰国したのだということに目を向けて、帰国してからも悲劇を続けさせないことが大事なのよ」
――本作は、意義ある議論を巻き起こす内容になってますが、反戦映画なのでしょうか?
「これは、ある家族に本当に起きた出来事に基づいて作られた“本物の人々”の映画よ。だから、当然、否定することは出来ない。兵士たちがイラクで次々と死んでいるという真実はとてもショッキングだけど、帰国しても、彼らの身には恐ろしいことが起きている。これは政府、そして私たちも、彼らに対する責任を取っていないということなのよ。しかも、私たちは兵士たちが送り込まれた場所について正確に理解していない。だから、彼らが帰国しても、私たちは彼らのことを気にもかけずに、肩を抱きしめたり、軽く『ご苦労様』と背中を叩いたりして、彼らが経験した事が、トラウマとならないように期待するだけになってしまうの。この映画はそんな傷ついた兵士たちの物語よ。私たちは、政府によって歪められた意見ではなく、彼ら兵士の生の声を聞くべき時にきているのよ。彼ら兵士が、どう感じているかを聞いて、彼らに敬意を払い、彼らがどんなツールを必要としているかを聞かなければならないわ。彼らが帰国してから、健全な人間として生きるためにも」