「ピクサーの宝物」ウォーリー odeonzaさんの映画レビュー(感想・評価)
ピクサーの宝物
子供たちの大好きなロボットが宇宙を舞台に大活躍する冒険ファンタジーであると同時に名作「ローマの休日」や「わんわん物語」を思わせる胸きゅんラブストーリでもあります。
地球が環境汚染で住めなくなり人々は宇宙へ旅立ってしまいます、汚れた地球で空き缶や鉄くずを纏めて片付けるのがウォーリー(Waste Allocation Load Lifter Earth-classゴミ配置積載運搬機・地球型)たちロボットの使命でした、700年もの月日で生き残ったのはウォーリー1台だけになってしまいました。ウォーリーは仕事が終わると自分のコンテナに戻り大好きなミュージカルビデオを観るのを楽しみにしています、いつか自分も恋人と踊って、手を繋ぎたいと夢見ています、そんな折、突然現れた宇宙船から出てきたのが最新型ロボットのイブ(Extraterrestrial Vegetation Evaluator宇宙からやって来た植物探査機)です、妖しいものは容赦なく爆破してしまうお転婆さんで空も飛べるし箱型のウォーリーとは月とすっぽんに思えます、砂嵐が迫る中、必死でイブを自分のコンテナに避難させます。ウォーリーはイブに宝物(ウォーリーが拾ってきたガラクタですが)を自慢します、緑の草を見せたところで突然イブが草を回収して固まってしまいます。
例えればイブはノアの方舟にオリーブの枝を咥えて戻る鳩さんだったのです・・、ここから先は本編で。
感情豊かで芽をだした草や虫にも優しいウォーリーは人間以上に思えます。
ウォーリーとイブのほかにも多勢のユニークなロボットが出てきます、ウオーリーの大型式はちょっと怖い、お掃除ロボットのモーは働き者でいつも拭き拭き、ロボットのほかにもあれがいます。人類が滅びても生き残るだろうと言われるゴキちやんです、一人ぼっちのウォーリーには大事なお友達です。ウォルト・ディズニーが貧しかったころ屋根裏部屋にいたネズミがペット、後にミッキーマウスになった話を思い出します。
ピクサーの偉いところは最先端の技術力を持ちながら物語性や心象の表現に重きを置き、手段と目的の取り違いを決してしないところです、これはスティーブ・ジョブスの理念でもありましょう。
アンドリュー・スタントン脚本・監督は実際のウォーリーたちを映画のように撮りたいと考えました、アニメーターたちを集めて講師に呼んだのはアカデミー賞カメラマンのロジャー・ディーキンスさんです。実際の映画ならどう撮るか、照明プラン、カメラワーク、レンズ特性まで研究し尽くしました。ロジャーさんはメイキングの中で、「遠くを撮ると手前がボケてしまうのはレンズが発明されて以来メーカーが取り組んできた改善点です、アニメーションでわざわざやるとは笑えました」と振り返っています。ゼロ・グラビティの宇宙空間で消火器で飛び回るウォーリーとイブのランデブーは素敵でしたね、このシーンも室内シーンだったところを大幅変更して実現しました、たとえ試写会まで漕ぎ着けても違和感に気付けば撮り直し、ストーリーまで変えることを厭いません、許した経営陣、作業を厭わなかった仲間たち、なんと素晴らしい絆でしょう。
子供たちだけでなく大人もしばし童心に帰ってほっこりしてみてはいかがでしょう、お勧めです。