劇場公開日 2008年10月4日

「“映画っぽくしてみました”が鼻につく」容疑者Xの献身 かみぃさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0“映画っぽくしてみました”が鼻につく

2009年10月16日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

悲しい

知的

自ブログより抜粋で。
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 直木賞受賞作が原作だけあってテレビドラマの劇場版と思えば充分面白いんだけど、テレビ的価値観による“映画っぽくしてみました”が鼻につく。

(中略)

 原作未読のおかげで驚きのトリックにはまんまと騙されたし、感動の大団円も素で満喫できた。
 けど、オープニングの派手なだけの実験や取って付けたような雪山登山とか、なんか「頑張って映画スケールにしてみました」っていうあざとさが気になってしょうがなかった。
 山小屋が顕著なんだけど、照明がよくないのか撮り方が嘘くさいのか、セットがあからさまに作り物だし、湯川と石神の挑戦的な別れ際のスローモーション撮影も演出過剰ではったりにしかなっていない。

 推理モノとしてのトリックの全貌がわかったときはさすがに唸らされたけど、そこに至る推理過程は観客を置いてけぼり。
 もう少しヒントなり、ミスリードなりを用意してくれないと傍観するしかない。別の言い方をすると、真相は予想できなかったにもかかわらず“やられた感”は乏しいのだ。

 また、脚本の詰めの甘さからか石神にあまり天才らしさを垣間見れられないのも物足りなさを感じた。
 トリックそのものは天才らしい周到なものだったけど、前提となる石神という孤独な天才キャラクターを描き切れていない。
 机上で難問を解くとかではなく、もっと日常的なところで凡人との違いを見せつけなければいけないんじゃないの?

 役者に目を転じると、堤真一の役柄をわきまえた抑えた演技はよかった。実質的な主役は彼。
 松雪泰子と金澤美穂ちゃん親子もいい。松雪泰子はいい女優さんになったなあ。
 福山雅治も悪くないんだけど、堤真一らと対峙するとやはり格の違いを感じてしまう。
 柴咲コウはたくさん映画に出てる割に演技の幅が少ないなあってのが正直なところ。でも今回は案内役ということでそれはあまり気にならない。ただ、唯一の見せ場といえる福山雅治に真相を問い詰めるシーンが演出のまずさもあって台無しなのが惜しまれる。

 総じて最近あまりない本格的な推理モノとして悪くはないんだけど、素直に褒める気になれない歯がゆい作品。

かみぃ