P.S.アイラヴユー : 映画評論・批評
2008年10月14日更新
2008年10月18日より有楽座ほかにてロードショー
寓話的ラブストーリーを彩る極上サウンドが愉しい!
「恋人たちの予感」「ゴースト/ニューヨークの幻」の頃なら、ヒット間違いなしの要素でいっぱいのニューヨーク・ストーリーだ。監督は「マディソン郡の橋」の脚本家リチャード・ラグラベネーズで、感涙の仕掛けがあざといまでにうまいのである。
開巻劈頭、アイルランド系の夫が病気で死に、彼の葬式からラブストーリーは始まる。死んだ夫が、妻(ヒラリー・スワンク)の“その後”を予期して、「P.S. I love you」で終わるラブレターを送り、第2の人生に向けて励ますというファンタジーなのだ。その夫を演じるのはジェラルド・バトラー。何度も回想シーンの中に笑顔で登場するもんだからまったく悲愴感がない。彼がカラオケで歌うのは「ザ・コミットメンツ」(ダブリンが舞台)にも登場した「ムスタング・サリー」。このように2人のラブストーリーは、ゴキゲンな音楽で彩られる。キャメロン・クロウ監督の妻ナンシー・ウィルソンがジャズボーカルを数曲(「Hat Fukka Sand」など)披露しており、クロウ映画のような爽快感もある。世の中にいつも冷めている友人のバーテンダー役をハリー・コニック・Jr.がいい味を出して演じている(残念ながら歌は歌わないが)。
主人公の母親役はキャシー・ベイツで、オスカー女優スワンクを小娘扱いにするほどの名演を披露。「独身?」「ゲイ?」「仕事は?」と訊いて男を品定めする親友役のリサ・クドローらの楽しい演技があって、前向きなハッピーエンドでしめくくられる。特に、極上サウンドは病みつきになる愉しさだ。
(サトウムツオ)