アリス・イン・ワンダーランド : インタビュー
ティム・バートン監督とジョニー・デップが7度目のタッグを組んだ「アリス・イン・ワンダーランド」は、ルイス・キャロルの不朽の名作「不思議の国のアリス」「鏡の国のアリス」をベースにした新たなファンタジーアドベンチャーだ。再び地下世界を訪れた19歳のアリス(ミア・ワシコウスカ)が、住人たちが皆どこかおかしな世界で、ただひとりアリスを信じ続けるマッドハッター(デップ)らと力をあわせ、地下世界を解放する救世主として戦い、成長していく。まずは、本作でまたも個性的な役どころに挑んだデップのインタビューをお届けする。(取材・文:清藤秀人)
ジョニー・デップ インタビュー
「僕は“ボックスオフィス・ポイズン(コケるヤツ)”と呼ばれてたんだ」
――ジョニー、ティム・バートンとのコラボは7回目になりますが、今回マッドハッターという役をオファーされたときの気持ちは?
「もし彼がアリス役をオファーして来たとしても、イエスと言っていたかもね(笑)。ティムが望むなら、どんな役だってやるさ」
――マッドハッターはあなたが演じたことで原作の何倍も強烈な印象を残します。役作りの過程を教えてください。
「僕はいつも役柄の背景を徹底的に調査してから撮影に備える質(たち)でね。ルイス・キャロルの原作を読んでいたら、ハッターがつぶやく言葉の中に興味深いものを発見したんだよ。それは『僕はMで始まるものを調査している』という、何だかちょっと暗号みたいな内容だったんだけど、結局、原作のどこにもそれに対する答えは書いてない。で、早速帽子職人について調べてみたところ、彼らの多くは帽子を貼付けるときに使う水銀(Mercury)のせいで深刻な中毒に陥るという事実を突き止めたんだ。だから、ハッターのいつも目をバチバチさせて落ち着きのない奇妙な行動は水銀のせい、というのが僕流の結論だったわけさ」
――だから“マッド”ハッターなんですね。
「そう。でも、彼はただ単にハイパーで狂った男なんじゃなくて、他のパーソナリティも持っている。僕はそれらすべての側面を極端なレベルで探索してみたかったんだ。ある時はノーテンキでクレイジーかと思えば、1秒後には怒りに燃える男にひょう変したり、あるいは、悲劇の主人公に変わったりという風に。ただ、気紛れに変化して見せているわけじゃないんだ。僕なりに適切な瞬間をとらえてスイッチを切り替えているんだよ」
――その種の役作りにおけるディープな部分に関しても、ティムに相談するんですか?
「相談はしないさ。僕はただ、ティムをがっかりさせたくない一心で、これまでにやったことのない何か、つまり常に新しく刺激的なアプローチを考案して、ティムに選択の余地を与えるようにしているだけさ。彼に恥をかかせることは絶対にしたくないからね」
――結局、ティム・バートンに尽くして来たことが、あなたの成功のレシピなんですね?
「そうかも知れない。20年前、ティムが『シザーハンズ』で僕を使ってくれたのは奇跡としか言いようがないよ。でもあの後、ティムが僕を主役に起用しようとすると必ずスタジオからクレームが付いたもんさ。何しろ『バイレーツ・オブ・カリビアン』以前の僕は“ボックスオフィス・ポイズン(コケるヤツ)”と呼ばれてたんだから。僕とティムは何があろうと20年前のままだけどね。言葉を交わさなくても横目でやりたいことが分かっているという。さすがに、最近は子育てのことで猛烈に議論し合うようになったけど(笑)」