幸せの1ページ : 映画評論・批評
2008年9月2日更新
2008年9月6日より丸の内ピカデリー2ほかにてロードショー
子供の物語ではあるが、大人だからこそ楽しめる物語でもある
原作の児童小説のイメージを大切にした、かわいらしくてマジカルな世界観に冒頭から引き込まれる。監督2人は夫婦で、妻は「ビバリーヒルズ高校白書」や「L.A.ロー」、夫は「素晴らしき日々」といった、共に人気テレビシリーズで活躍してきた脚本家。それだけにツボを押さえたうまい構成でテンポ良く見せ、まったく飽きさせない。ジョディ・フォスターの珍しいコメディエンヌぶりも見もので、引きこもりの小説家を単に面白く演じるのではなく、生真面目さゆえのおかしさ、優しさをにじませて、役柄に説得力を生み出している。
ただし、少女を助けに旅立った小説家と、SOSを送った少女がついに出会った後のコミュニケーションがあまり描かれていなかった点だけは残念。都会の快適な部屋で暮らす小説家と大自然の中で暮らす少女は生活こそ正反対だが、実のところ対人恐怖症で引きこもっている小説家と、無人島で父親と2人だけの生活をしてきた少女は同じような立場と言える。孤独な闘いの中の勇気と、他人を受け入れる勇気の両方があって初めて、少女は成長するのではないか。前半の冒険と同じ位、2人が補い合いわかりあっていく過程にも重点を置いてほしかった。
子供の物語ではあるが、大人の世界にも通じる大切なことがさりげない言葉やエピソードの中に隠されており、大人だからこそわかる、大人だからこそ楽しめる物語でもある。
(木村満里子)