「負け戦の法則」ワルキューレ マスター@だんだんさんの映画レビュー(感想・評価)
負け戦の法則
組織の中にあって、その中心人物を抹殺することがいかに難しいことか、だからこそ生まれる緊迫感がある。改ざんした命令書にヒトラーのサインをさせるシーンはなかなかに緊張する。
だが、全体としては史実を重視するあまり、映画の面白みに欠けてしまっている。もっと違った視点で描写できたはずだし、架空の人物を配置してもよかったろう。
トム・クルーズって役者は、トムであることを押さえ込むよりも、トムトムしていたほうがいい。茶目っ気のあるキラキラした瞳でミッションをこなす方がイキイキとしている。もっとも、そうしたトム像から脱皮したかったのだろうが、そうであれば尚のこと、トムが身動きできないほどに設定を緊迫したものにする必要があった。悪くはないが、どうも消化不良である。
この映画を観ていて、週刊文春に連載の「一刀斎夢録」(浅田次郎作)が頭をよぎった。主人公の斎藤一の言葉である。
「勝ち戦には意外がない。思うた通り、策の通り、命令通りにことが運んでいく。しかし負け戦というのは、周囲に思いがけぬことが次々と起こるものだ。」
真珠湾攻撃では想定した米軍主力艦隊が停泊していなかった。斎藤一の言を借りれば、日本は端から負け戦だったのだ。
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