劇場公開日 2009年5月15日

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「犯人は何がしたかったのか?」天使と悪魔 とみいじょんさんの映画レビュー(感想・評価)

2.5犯人は何がしたかったのか?

2022年5月4日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

悲しい

興奮

知的

題名と予告に騙された私が悪いのだろう。
 手塚作品のような展開を期待していた。天使であり、悪魔であり、そんな存在が、人格の中で、人々の中で、世の中で、人類の歴史の中で、もっと問われるのかと思った。

バチカンのある報道はこの映画を「無害なエンターテイメント」と評したらしい。
 結局、この映画で行われた凶行は、宗教は関係なく、一個人の咎として責任は一個人の帰せられている。この映画の脚本・演出ならそうなるだろう。

『ダビンチコード』映画鑑賞済み。
今作の原作未読。
 原作では、もっと丁寧に、一人一人の心のありようが綴られているんだろう、たぶん。
 もっと、科学の意義、宗教の意義、その敵対と融合が綴られているんだろう、たぶん。

でも、この映画ではそこまでは踏み込んでいない。
あくまで、サスペンス・アクション。そうみればそれなりに楽しめる。
 と言っても、映画の時間的な制約のためだろうが、『ダビンチコード』と同じく、展開・謎解きが速すぎて…。手がかりが次々に示されるのでご都合主義?にも見えてくる。
 突っ込みどころも満載。
 事件の動機ももっともらしく設定されているが、鑑賞してしばらくたつと、最初の殺人を犯人が犯す理由は鮮明に覚えているけれど、他の殺人の意味づけも覚えているけれど、なぜあの人を犠牲者としたんだっけ?とうろ覚え…。勢いと役者の熱演に納得させられたような気にはなるけれど、よくわからない…。
 結末を知ってから鑑賞しなおすと、ミスリード?人間だもの、完璧じゃないってこと?
 あれ?
 それでも、ドキドキハラハラさせてくれるのはさすが。

ユアンさんの、ああいう物腰・言い方をする役って私的には初めてで新鮮。

神・科学への”信仰”って、何なのだろう。
その”信仰”のためなら犠牲は厭わない?殉教?『沈黙』が頭をよぎる。
”聖戦”?異端(=相容れないもの)は抹殺すればよい?
自分を慈しみ育んでくれたものさえ、”信仰”の前には切り捨てるのか…。

”英雄”の最期が、意外に残る。

そして

つい一面だけをみて、”英雄”を作って祭り上げてしまう私たち。
守ってくれるものへの依存。
それこそ”信仰”心の正体にも見える。
怖い。

それらの様を”天使と悪魔”として、原作は描き出しているのだろうか?うう~深い…。
でも、映画は、役者の力で匂わせてはいるものの、そのテーマをじっくりとは描かず、あくまでエンターテインメント。
 バチカンとの兼ね合いの中で狙ってやったのか?
 映画としての経済的なものを考えて長尺な原作をまとめたら、こうなったのか?
ある意味成功したのだろうが、私的には、勿体ないと思ってしまう。

<追記>
コンクラーベに日本人名が出てきてびっくり。

<追記2>
欧米の、爆弾に対する認識に唖然…
 ”反物質”による爆発。街一つ簡単に消滅させられると言っていたような…記憶違いか?
 処理の仕方はある意味、この話の見どころの一つなので、ネタバレになるからあまり詳しくはかけないが…。
 原子爆弾を受けた国として、その後も苦しむ方々を知っている身としては、
 水爆実験の被害を知っている身としては、
 ”反物質”がどのような物質かは知らねども、
 単なる破壊力の強さだけが威力なのか?
 原子爆弾や水爆のような被害は引き起こさないのかと、心配してしまう。
結局、欧米の認識ってこの程度なんだよな。

とみいじょん