「悪者をやっつけたはいいが、感謝よりも恨み節が聞こえそう」マン・オブ・スティール マスター@だんだんさんの映画レビュー(感想・評価)
悪者をやっつけたはいいが、感謝よりも恨み節が聞こえそう
これまで何作と制作されてきたスーパーマンを完全リブート。「ダークナイト」のクリストファー・ノーラン製作、「300 スリーハンドレッド」のザック・スナイダー監督の起用で期待されたスーパーマン誕生秘話。
さて中身だが、ザック・スナイダーがこれまで見せてきた独特の映像表現は封印、ひとつひとつを深くじっくり描きながらも全体のテンポが落ちないクリストファー・ノーランの色が濃い。
とくにクラーク・ケントと育ての親との情愛がしっかり描かれる。
異端の力に悩めるクラークだが、しつこく絡んでくる相手にはとんでもない千倍返しをしてみたり、ヘンリー・カビルが歴代のスーパーマンとは一味違う人間臭さを醸しだしている。
養父のケビン・コスナーと養母のダイアン・レインは、どちらもいぶし銀の渋さで作品を引き締める。
執拗にクリプトンの再興を狙うゾッド将軍の強さは半端でない。カル=エル(スーパーマン)とゾッドの戦いに、気の強い女性記者ロイスと、ゾッドの美貌の副官・ファオラを絡ませて、どのキャラクターも申し分ない。
単純に英雄を持ち上げた、陽気でアメリカンなヒーローものと切り口がこうも変わってしまうと、さすがにジョン・ウイリアムズが作ったテーマでは脳天気すぎる。全篇、ハンス・ジマーの書き下ろしスコアが鳴り響く。一部、同氏の「ローン・レンジャー」と被るところがあるが、新たなスーパーマンの雰囲気をよく捉えている。
ここまでは期待通り、いやそれ以上のデキなのだが、なぜあそこまでワケもなく街を壊す。あの壊しようは、壊し屋・マイケル・ベイも真っ青だ。スーパーマンがゾッドに投げ飛ばされるたびに、ビルの柱という柱を打ち砕き、高層ビルが倒壊していく。これでは、スーパーマンがゾッドを打ち負かしても心の底から喜べない。地球にとってクリプトン人そのものが迷惑な来訪者だ。
ビルを突き破るほどのダメージを繰り返し受けても立ち上がるスーパーマンが、路面に叩きつけられただけで突っ伏す矛盾もいただけない。
いただけないといえば、ラストで将軍が部下の女性兵士に「Captain」と呼びかけ、字幕もそのまま「キャプテン」となっていたが、あそこはきっちり階級の「大尉」と訳すべきだろう。
難癖はつけたが十分に楽しめる映画であることに変わりはない。あの「ダークナイト」シリーズも飛躍したのは2作目だ。次作に大いに期待したい。でも、あんな不死身のスーパーマンにバットマンがしゃしゃり出て、いったい何をさせてもらえるのかな?
kuwaさん、コメントありがとうございました。
字幕版と吹替え版では訳者が違うのかもしれませんね。
こういう発見もまた楽しいです。
情報ありがとうございました。
>いただけないといえば、ラストで将軍が部下の女性兵士に「Captain」と呼びかけ、字幕もそのまま「キャプテン」となっていたが、あそこはきっちり階級の「大尉」と訳すべきだろう。
この部分、吹き替え版だと「大尉」って言ってました。