「ボンドに必要なのは、復讐か、自由か」007 慰めの報酬 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
ボンドに必要なのは、復讐か、自由か
シリーズ22作目。2008年の作品。
愛した女性ヴェスパーを操り死に至らしめたミスター・ホワイトを追うボンド。
シリーズ初の前作からの直接の続編。前作のラストシーンから幕を開ける。
いきなり迫力のカーチェイス!
捕まえMの元に連行し尋問しようとするが、仲間内に裏切り者が…!
ホワイトは逃走。ボンドは裏切り者を追うも、殺してしまう…。
裏切り者が遺した僅かな手掛かりから一人の男が浮上し、バハマへ。
その男の滞在ホテルで格闘となり、またしても殺してしまう…。
ボンドはカミーユという女と出会う。彼女は家族をなぶり殺した元独裁者の将軍への復讐に燃えていた。
さらに、表の顔は慈善団体のCEOであるフランス人実業家。裏の顔は天然資源利権を得ようとする男、グリーン。
陰謀阻止と復讐の果ての狭間へ、ボンドは立ち向かっていく…。
新生ダニエル・ボンド2作目。
新しい試み、異例尽くしで任務を始めたが、それは本作も然りで、前述した通り前作からの直接の続編。のみならず、ダニエル・ボンドは全作が繋がっている事が後々に判明する。
前作のル・シッフル、今回のグリーン、次作のシルヴァ。彼らは単体の敵ではなく、実は巨大犯罪組織の…。
ちと後付け設定かもしれないが、彼らも“ナンバー”で呼ばれていた…と想像するとニヤリとする。
シリーズでも最も激しいアクション!アクション!アクション!の連続。
開幕のカーチェイスに始まり、バイク・チェイス、ボート・チェイス、飛行機戦。
合間合間にも銃撃戦や肉弾戦。
怒涛のアクションに手に汗握る!
アクションが激しいという事は、それだけボンドに危機が訪れるという事。
が、敵を捕まえ、情報を引き出すのも任務。
幾ら殺しのライセンスを持ち、対する為に止むなくとは言え、すぐ敵を殺してしまうボンドの行動が問題視されてしまう。
いやそれどころか、危険視。
ある人物の死の罪すら着せられ、CIAやMI6からも追われる身に。
しかし、それでもボンドは我が信念で、グリーンを追う…!
先輩ボンドたちと同じく、ダニエル・クレイグも2作目ですっかり板に付いた。
激しいアクションの連続でタフさ、復讐というシリアスな演技、協力者はいるが孤独感…このスパイにアウトローな魅力を加えている。
ボンドガールは、2人。
本作の抜擢で有名に。浅黒い肌が初々しいオルガ・キュリレンコ。彼女もまた激しいアクションと復讐心を熱演。
ボンドのお目付け役のジェマ・アータートン。彼女はシリーズの名シーンを“色違い”で再現。
2人共ボンドガールでありながら、カミーユとはベッドシーンはナシ、ジェマ演じるフィールズとはあの後ベッドインはするだろうけどその直前までで直接的な描写もナシ。恋愛関係にもならない。
つまり、ボンドはそれほどヴェスパーを…。
敵のグリーンはこれまで対してきたようなパワーで圧し、インパクトで圧し、脅威的な相手という感じではない。
が、フランスの演技派マチュー・アマルリックが曲者感充分、ねちっこく演じる。
ジェフリー・ライト、ジャンカルロ・ジャンニーニは前作からの続投。前作でボンドを裏切ったマティスの今回の役回りは…?
英国政府やCIAからの指示と、独断で動くボンドの板挟み状態のM。悩まされながらも彼女が信頼したのは…、言うまでもない。
私の部下よ。
良質ドラマを手掛けてきたマーク・フォースターは、本作でアクション映画初監督。
その手腕を充分に…残念ながら活かしきれなかった。
前作に比べると、圧倒的にドラマ性に乏しい。
ドラマを見ようとしても、展開が早く、じっくり見る余裕が無い。
アクション推し。ならばピアース・ボンド『トゥモロー・ネバー・ダイ』もアクション推しだったが、あちらはユーモアあってエンタメ要素たっぷりだった。
シリーズ最短の尺(106分)にアクションを詰め込み、それ以外の魅力は削ぎ落とされてしまったようだ。
スタッフ面でのトピックスは、音楽のデヴィッド・アーノルド。
『トゥモロー・ネバー・ダイ』から5作連続担当してきたが、本作で降板。
ピアース時代はあのテーマ曲を存分に使い、ダニエル時代は忍ばせながら用い、エメリッヒ作品より名仕事であった。
グリーンの陰謀を阻止。グリーンは背後に、巨大組織の存在を…。
復讐を果たしたカミーユ。
ボンドの復讐は…?
ラスト、ある人物に辿り着き、彼が下したのは…?
ボンドに必要なのは、復讐か、自由か。
これにて007レビューは全作任務完了!
と言うのも、『スカイフォール』『スペクター』は劇場公開時に書いていたので。
この2作はまたゆっくり見て、さあ、ダニエル・ボンド最後の任務=『ノー・タイム・トゥ・ダイ』に挑むぞ!