神山監督といえば、実にこれまでの25監督作品の半分が反戦映画というだけに、また反戦映画を見せつけられるかというイヤな思いはありました。
邦画で、独立系映画製作にも関わったことがあります。独立系の作品は、往々にして、労組や様々な支援団体から資金集めするだけにどうしても、平和や難病、介護などお題目を立てて、映画製作という商売のために、安っぽい正義感を振りかざすところが、好きになれませんでした。
けれどもこの作品の出足は、旧制高等の応援団や寮生活でのバンカラぶりを、迫力ある男ぷりで描いて、楽しめます。褌一丁で踊り回るの姿に、骨っぽいオトコをお求めの「×女子」傾向の方でしたら、案外いけるかもしれません。
だいたい野球部が試合に負けたぐらいで、旧制第七生は、旧熊本県庁跡の建物を占拠し、それを熊本の旧制第五生が「包囲」してしまったそうですからね(実話です)。しかも熊本城の陸軍が説得に出兵しても、隼人魂で「籠城」を解かなかったというから、あっぱれです。現代の管理社会に対しても、こんな気骨ある若者がいたら、世の中もっと楽しくなるでしょう。
なかでも、緒方直人が演ずる応援団長が仲間の侵したいたずらの罪をかぶって警察に出頭するシーンはホロリとさせましたね。
ただ物語は、中盤お決まりの出兵・戦場シーンとなり、その後の大半を、現代の「百周年記念試合」が実現していくさまをだらだらと描いていきます。
それは、旧制高等同窓会に集まったおじいちゃんが過去を懐かしんで語り合っているところを延々と聞かされているようで苦痛でした。
現代の「百周年記念試合」へ映画のモチベーションを上げていくためには、もっとおじいちゃんたちが何でこの記念試合に思いを熱くするのか、遺恨となった当時の憎々しさをもっと表現すべきであったと思います。
ラストで、戦場で死んだチームメイトが突然「百周年記念試合」の試合でプレーに参加しますが、それは幻影なのか、幽霊なのかハッキリしません。この点も大林宣彦作品のように、霊的な復活という視点で描けば、面白かったかもしれません。
このようにバンカラ映画なのか、反戦映画なのか、地元タイアップショットもたっぷり入った鹿児島・熊本PR映画なのか、はたまた七高同窓生による懐古趣味の作品なのか、、あれこれ詰め込んでいて、絞り込めていないと思います。
但し、熊本県と何より鹿児島県出身の方でしたら、郷土を熱く語れる作品として、必見でしょうね。