劇場公開日 2008年3月15日

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「分かりやすい作品なのだが、分からないことが多いことも分かった鑑賞に…」ノーカントリー KENZO一級建築士事務所さんの映画レビュー(感想・評価)

3.0分かりやすい作品なのだが、分からないことが多いことも分かった鑑賞に…

2024年3月5日
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以前、鑑賞したことのある作品だが、
その残虐な内容の意味性を理解出来なかった
記憶だけがある中で、
アメリカ文学と映画の関係について
触れた書籍を読んだことから、
栄えあるアカデミー作品賞受賞と
キネマ旬報ベストテン第1位選出の
この作品を再鑑賞した。

コーエン兄弟の作品としては、
これまで「ブラッド・シンプル」
「バードン・フィンク」「ファーゴ」等を
観てきていたが、
総じて残虐な事件を背景とした作品が
多かった印象で、
以前の鑑賞では、この作品が
その極め付きのような印象を受けていた。

さて、シガーの雇い人とウェルズの
ビルの階数についての会話は、
単なる“13”の数字の扱いに留まらず、
トランプタワーの階数問題を皮肉った
ようにも思えた今回の鑑賞は、

冒頭の保安官は何の容疑でシガーを逮捕した
のだろうか?

事件現場で、シガーは何故、
雇い人の関係者らしき2人を殺す?

保安官が現場に来た時は
麻薬はなかったので、
シガーが持ち去ったのだと思うが、
その後の経緯には全く触れていないのは?

シガーが、モーテルでモスの部屋と勘違い
して殺害した3人組の部屋は、
モーテルの受付の女性の話では
空いていたのでは?

そもそも、
シガーは何故、いちいち人を殺すのか。
社会の暴力性を象徴する役割のキャラクター
だとしても、
そんなに殺す事ばかりやっていたら
すぐに組織や警察に追われることになり、
本来は必要な殺しのためにはマイナスばかり
ではないのかとのリアリティ逸失感が?

ウェルズはどうして簡単にモスの入院先が
分かったのか?

モスを殺しに行ったはずのウェルズは
どうしてこうも無防備なのか?

心象風景を一番詳細に描いたモスは、
負傷者に水を与えるために危険な場所に戻る
選択をする人情味のある、
ある意味、この作品の主人公とも言える人物
なのにも、何故、その死の瞬間を
あっさりと処理しているのか?

銃を持たない主義の保安官が
再び携帯することにしたことは、
この作品の重大な要素だろうが、
何故、その心の変化を詳細に描かないのか?

保安官が現場を訪れた時に
シガーが潜んでいたようなのだが、
簡単に殺しまくるシガーは
何故、この時だけは殺人を行使しないのか?

総じて昔は良かった、かのような
保安官の言葉を通しての作品の全体像だか、
果たして無法なウエスタンの時代が
懐かしむほど良かった時代とは思えないが?

等々、分かりやすい作品ではあるのだが、
枚挙にいとまがない程、
分からないことが多いことも分かった鑑賞と
なってしまった。

また、この作品でも、
何故か宮崎駿の製作手法が思い出された。
彼の場合、美しい場面が先にあって、
その絵に合わせてストーリーを繋いでいく
と言われているが、

この作品の場合は、
空気圧縮銃の使用や
コインの裏表エピソードのように、
シガーの数多くの特異な殺害設定が
先にあって、その後にストーリーを
繫いだかのような印象もある。

この作品、
演出も編集も優れていると思うのだが、
分からないことだらけで、
また、そのストーリーを繋ぐのが
殺人というネガティブな要素であることが
想い入れし難いものにしてしまった。

尚、私の一番好きなコーエン兄弟の作品は、
「ミラーズ・クロッシング」だ。
こちらの方は
“詩的”な暴力描写の作品だったので。

KENZO一級建築士事務所
kossyさんのコメント
2024年3月11日

KENZOさん、コメントありがとうございます!
自分で読み返してみて、どうしてこんな面白いこと書けたのか不思議でなりませんw

kossy
NOBUさんのコメント
2024年3月5日

今晩は
 この作品はシガーを演じたハビエル・バルデムの人間性がないマッシュルーム頭の男の存在感に尽きる作品だと思います。
 今作の原作を書いたベストセラー作家のコーマック・マッカーシーの”人間性の根底は極悪にある”と言うメッセージを見事に表した作品だと思います。
 コーマック・マッカーシー原作の「悪の法則」も極悪なる作品です。ハッキリ言って、凄いです。ペネロペ・クルスが生きたまま斬首されています。では。(私は変態でしょうか?ハイ、変態です。)

NOBU