「この映画を見てつまらないと感じた人は」ノーカントリー たまねぎ なきおさんの映画レビュー(感想・評価)
この映画を見てつまらないと感じた人は
この映画は基本BGMは無く SE(効果音)も適音で
スタートから淡々と物語が進み 終わります。
ただそれだけです。
映画を見てつまらなかったと感じた人。
この映画には親切な説明が一つもありません。
しかし、映画が訴えかけたいメッセージはふんだんに盛り込まれています。
いくつのヒントを見つけられるかで
この映画の奥行きが決まるタイプの映画でしょう。
そういうのは苦手だという方は
メインの登場人物3人の【性格】と【セリフ】そして【結末】を
追ってみてください。きっと何か見つかるはずです。
時に登場人物の周辺人物が核心をついていたりする場合もありますが、そういうのを一つでも見つけられればきっとより楽しめるでしょう。
◆また、ひとつだけネタバレですが
保安官が終盤で犯人がいるであろうモーテルに踏み込みます。
犯人はドアの後ろに隠れてやり過ごします。
保安官は犯人と入れ違いになり引退を決意します。
これ、ボーっと見ていると保安官が引退したのは
「モーテルで犯人を見つけられなかったから」だと見てしまいますが、ちゃんと見ると若干違います。
保安官はモーテルに踏み込んだ時と出る時のドアの開き具合の違いに気づいています。すぐそこに犯人がいたのだと。
そこで初めて決定的な自分の老い(変わってしまった自分)を自覚し、追っている犯人が手に余るほどの脅威だと悟ってしまうんです。
それは「昔の時代は良かった」「ここは昔と変わってしまった」という口癖だった保安官が【変わっていってしまったのは自分だったのだ】と痛烈に気づかせる場面でもあります。
上記のような小さな描写を見逃してしまえば
この映画を見ても何も考えさせられる事もなく終わってしまいます。
余談ですが、この映画は生粋のアメリカ人(特に国境沿い)で無ければ本当の意味で共感や【気づき】が出来ないタイプの映画だと思います。それでもこの映画はやはり傑作です。
先程観終わり、終始の不穏な空気、緊張感のままそこに何かあるのかもしれないということを感じながら終わりました。
それがこのレビューを読んで言語化の手掛かりになりました。
ここまで映画を余すところなく味わえれば、これまで観てきた映画も別モノのように楽しめるかもしれませんね。
素晴らしいレビュー!