ブルースは好きです
といっても「三大キング」と呼ばれる、B・B・キング、アルバート・キング、フレディ・キングと、あとはハウリン・ウルフぐらいしか知りません
ブルースの音源もそれほど持ってもいません
クラプトンがいたクリームという本作にも登場する有名ブルースロックバンドが好きで、そこからさかのぼってブルースをかじっただけの素人です
だから本作で取り上げられたブランド・ウィリー・ジョンソン、スキップ・ジェイムズ、J.B.ルノアー、クロウ・ジェーンはその名前を聞いたことがある程度です
しかし本作を観て有意義な時間を過ごすことが出来ました
沢山の良質なブルースを聴くことができましたし、なによりその知らなかったブルースの巨人のことを学べたからです
それ以上に2022年の今こそ観るべき映画を観たという実感を味わっています
本作は2003年の映画です
けれども2021年の昨年、サマーオブソウル、アメージンググレイス、リスペクトを観て感激した人は今こそ本作を観るべきだと思います
過去が発掘され現代に蘇って正しく評価されて輝く映画です
本作はドキュメンタリー映画です
でも1920年代、1930年代の映像なんてあるわけありません
だから再現ドラマをその部分はあてています
あたかも当時密着取材映像があったかの体裁で、感度の悪いフィルムで、コマ速度も当時の記録映像のようにして、セリフは無声映画のように文字画面を挿入されます
後半は1960年代のブルースの再発見と、黒人公民権運動との連動が、今度は本物の記録映像で語られます
冒頭、宇宙から観た青い地球から始まります
そしてゴールドディスクのようなレコードが宇宙探査機に取り付けられ、宇宙ロケットが発射されるシーンが続きます
本作のナレーションのとおり1977年に打ち上げされた木星探査機ボイジャー1号、2号のことです
この宇宙カプセルは木星や土星探査のあと太陽系を飛び出して遥かな恒星間宇宙にいくことになっていました
それで万一宇宙人がこの探査機を見つけたときの為に、地球の事を教えようと文字と図形が描かれた金属版と共に、地球の様々な音や音楽を録音したレコードがこのボイジャー探査機に搭載されたのです
その音源の中に本作に登場するブルースも録音されていたのです
ボイジャー探査機は2012年に遂に太陽系を飛び出して、今年は45年も経った今も恒星間宇宙を飛行中です
時折恒星間宇宙の観測データを地球に送って来て小さな科学ニュースになったりしています
本作の本編の途中に時折、終盤にはそのボイジャーが、宇宙空間を飛行しているシーンが挿入されます
神に届け!
地球の様々な音を宇宙人に聴かそうなんて話は関係ない
天の高い所におわす神に、ブルースの歌声が届きますように
誰か教えてくれ
答えられるなら
人の魂とは何のか
監督のそんな願いがこめられたものなのだと思います
二人は途方もない遺産を残した
二人の曲は彼らより長生きして
人生の尊さを称え
どん底にある人間を天国まで引き上げてくれる
だが、それがブルースだ
この終盤のナレーションは、ヴィム・ヴェンダース監督と製作のスコセッシからのメッセージです
偉大なブルースは、このボイジャー探査機にのって、もしかしたら人類よりも長生きして数万年後には天国に届くのかも知れません
なのに半世紀以上前の状況に、2022年の状況は後戻りしつあるように思えるのです
こんなことでよいのでしょうか?
ボイジャー探査機はどんどん天国に向かって飛行しているのに、地上の私達は後戻りしているのです