ヴァンダの部屋

劇場公開日:

ヴァンダの部屋

解説

ポルトガルの移民街に住む一人の女性の部屋を中心に、再開発のために取り壊されようとしているスラム街に暮らす人々の日常を赤裸々に捉えた衝撃のドキュメンタリー。監督は日本初紹介となる、ポルトガル期待の映像作家ペドロ・コスタ。自ら2年間に渡って一緒に暮らす中で捉えた過酷にして絶望的な状況を、無駄な動きを排した絵画のような美しい映像で綴っていく。

2000年製作/180分/ポルトガル・ドイツ・フランス合作
原題または英題:No Quarto da Vanda
配給:シネマトリックス=シネヌーヴォ
劇場公開日:2004年3月13日

あらすじ

1997年、映画監督ペドロ・コスタは、リスボンにあるスラム街を舞台に、ある家族の運命を描いた劇映画「骨」をつくる。その出演者だったヴァンダ・ドゥアルテに「この映画は、ここで終わるはずがない」と言われたコスタ。その後、再び彼はスラム街に戻り、続編とも言うべきこ作品を手掛ける。この街に暮らす一人の女性、ヴァンダの日常を、デジタルカメラで、また少人数のスタッフで2年間追った。リスボンの市中にある取り壊されつつある街、フォンタイーニャス。アフリカからの移民が多く暮らす街だ。街中にブルドーザーやショベルカーの工事の音が響き渡っている。その中の、わずか3メートル四方の小さな部屋にヴァンダは住んでいる。その近所に暮らすヴァンダの妹・ジータと母。ヴァンダの姉は、何かの罪で刑務所にいるようだ。ヴァンダたちと一緒に暮らす赤ん坊は、おそらく、その姉の子供だろう。近くに住み、引っ越そうとしているパンゴという黒人の青年。パンゴと同居する友人パウロと時々訪れるルッソ。彼らは何をするでもなく、麻薬を吸引することにいそしんでいる。麻薬の影響なのか、ヴァンダはときおり激しく咳こむ。彼女の仕事は、野菜を売って歩くことのようだ。しかし、本当に商売をする気があるのかさえ、わからない。あいかわらず、街のあちこちでは、工事が続いている。街が消えつつある。彼らは、何を目的に、何をしたいのか?妹や母とのいつものような喧嘩。「いたいだけいていいよ」とヴァンダは、パンゴに言うのだった

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映画レビュー

3.5隔絶ぶりを強調するものとしての「フレーム外」

2025年2月3日
iPhoneアプリから投稿

解体の進むスラム街を捉え続けるカメラ。そこに住まう人々のどん詰まりの日々だけが淡々と映し出される。狭い部屋、狭い路地に固定されたフレームは最後まで決して動かない。空や海や地平線といった視線の逃走経路は予め閉じられている。

動かないフレームの代わりに、本作では音響効果に技巧が凝らされている。四方3メートル程度のヴァンダの部屋には外部(フレーム外)からの音が絶えず鳴り響いている。解体工事の音、住人たちの会話、子供の泣き声。

こうした音の演出は映画の空間的豊穣を謳い上げると同時に、ヴァンダらスラム街の住人たちの隔絶ぶりをことさらに強調する。

素晴らしい照明効果についても言及する必要があるだろう。暗い部屋の中に閉じ篭もる人々に時折降り注ぐ光の不気味な柔らかさ。さながらレンブラントの絵画のような迫真性があった。

暗室のショットから屋外のショットに繋がる際の唐突な画面輝度の変化は自動車でトンネルの外に出たときのような幻惑を生じさせる。ヴァンダたちが暗く狭い部屋に引きこもり続ける理由をこうした輝度の落差によって裏付ける演出力には舌を巻いた。

ただ、やはり尺が長すぎるんじゃないかと思う。私自身に堪え性がないからといえばそれまでだが、180分という長尺に必然性を感じることは残念ながらできなかった。

あと咳をし続ける人ってどうしてこんなに苛立たしく感じてしまうんだろう?

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因果

~奪われていく空間と心~

2019年2月8日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

悲しい

知的

難しい

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映画人

4.5スゴイ

2014年11月11日
iPhoneアプリから投稿

知的

寝られる

「こんな映画、他にないから観たほうがいいよ」と薦められて、鑑賞。

固定カメラか切り替わる度に、「あぁスゴイ」とうっとりする映像の連続。
極上の写真集か、バロック期の画集をめくるような喜びがあった。

セリフ(言葉)に頼るな。
想像ばかりする暇があるなら、今ちょっとだけ考えられることだけを考えとけ。
…と、頭でっかちになりがちな自分の思考に喝を入れられる。

カメラに一度も視線を合わせくれないヴァンダ。
家屋を壊す重機の音。
やけに可愛い子どもたち。
それらに慣れた頃、映画は唐突に終わった。

確かにこんな映画は観たことない。

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Raspberry

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