旅愁(1950)

解説

イタリイを舞台にした恋愛メロドラマ1950年作品で、製作は「欲望の砂漠」のハル・B・ウォリス、監督は「ジェニーの肖像」のウィリアム・ディーターレ。フリッツ・ロッターの原作より「別働隊」のロバート・ソーレンが脚色、撮影は「囁きの木陰」のチャールズ・ラング・ジュニア、欧州ロケの撮影は「殺人幻想曲」のヴィクター・ミルナー、作曲は「テキサス決死隊(1949)」のヴィクター・ヤングの担当。主演は「白昼の決闘」のジョセフ・コットンと「レベッカ」のジョーン・フォンテーンの初顔合せで、「女だけの都」「宝石館」などのフランソワーズ・ロゼエ(アメリカ映画初出演)、「モナリザの微笑」のジェシカ・タンディ、「頭上の敵機」のロバート・アーサー、ジミー・リンドンらが助演。なお、主題歌「セプテンバー・ソング」は10年前のブロードウェイ・ショウのヒット・ソングで、故ウォルター・ヒューストンの吹き込み。

1950年製作/104分/アメリカ
原題または英題:September Affair

あらすじ

イタリイから米国へ向かう旅客機に、若いピアニスト、マニナ・スチュアート(ジョーン・フォンテーン)と紐育の技師デイヴィッド・ローレンス(ジョセフ・コットン)が乗り合わせた。マニナはコンサートの契約で、デイヴィッドは妻キャサリン(ジェシカ・タンディ)と離婚するために帰るところだった。だが機が故障を起こしてナポリに不時着した。マニナとデイヴィッドは昼食をとりに町へ出、帰ってみると機は出発してしまっていた。2人は数日間ポンペイとキャプリ島に旅行することにした。キャプリ滞在中、2人の友情は恋に発展していった。そして2人はあの旅客機が墜落し乗客は2人を含めすべて死んだと報告されたことを知った。デイヴィッドとマニナの新しい生活がこのときから始まった。マニナのピアノ教師であり親友であるマリヤ・サルヴァティニ(フランソワーズ・ロゼエ)1人だけがこの2人の恋に忠告をするのだった。その頃デイヴィッドの妻が息子と一緒にイタリイに来て真相を知った。キャザリンはまだ夫を愛してはいたが、夫の新しい幸福をそのままに、アメリカへ帰った。デイヴィッドは、この生活を幸福と思いながらも、いつしか無意識のうちに仕事に憧れ、息子を思ってやまなかった。やがてデイヴィッドとマニナも渡米し、マニナの演奏会は大成功だった。だが彼女は今の生活が真実のものでないことに気づき、南米への演奏旅行に1人旅立っていくのだった。

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スタッフ・キャスト

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受賞歴

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映画レビュー

4.0劇中二度ほど歌われる印象的な歌は単なるナンパの歌では無かったのです

2025年3月29日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:VOD

旅愁
1950年米国映画、白黒作品
原題は「9月の出来事」

ヒロインは、ジョーン・フォンテイン
出演時33歳
ヒッチコックのレベッカは23歳、断崖の時は24歳でした
まさに人生の真夏は過ぎて秋にさしかかろうとしています
しかしまだまだ美しい!
むしろ落ち着きが加わり大人の女性としての美しさが増しています

相手役はジョゼフ・コットン
出演時45歳
市民ケーンやガス燈、第三の男などに出演してきたシブいオジサマ

お話は直球ド真ん中のメロドラマです

ヒロインはイタリアにピアノ留学中の米国人、ピアニストとして人生の夏を捧げてあともう少しで成功を掴もうしているのだけれど、人生の夏をそれに捧げ尽くしてしまいやっぱり寂しい
男は、技師とはいうものの後から分かりますが実は大会社のオーナー社長で、かなりの金持ち、何年も仕事づくめで仕事にも家庭にも疲れ果てた男で妻とは離婚協議が難航中
この二人が、米国へ向かう途中とイタリア旅行中にひょんなことから偶然知り合って深い仲になります
そして遊び過ぎて乗り遅れた帰国便が実は墜落していて世間から二人は飛行機事故で死んだ事になっていることに数日後に気がつきます
そうなれば、もう愛は盲目です
風光明媚なナポリの高台に二人の邸宅を買い、生きている事を知られぬように二人の愛溢れる生活を始めてしまいます

でもそんな生活は長くは続かず、男の妻と立派に成人した息子がそこに現れます
終盤ナポリを去る二人の男女の邸宅にさよならをいいに来る近所の子供たちの身長がそう変わらない所を見ると結局二人の生活は1年も無かったようです

夫が生きている事を知ってなじるどころか、神に感謝する妻の健気さ、愛の深さに心を打たれます
怒る息子も父の顔を見ると全てを許してしまっています
劇中二度ほど歌われる印象的な歌は単なるナンパの歌では無かったのです

その歌詞は「♪9月11月~」でした
男の家庭は11月の晩秋だったのです
人生の大きな実りがなっていたのです
神に感謝するほかありません

女の人生の季節ははまだ9月になったばかり、1年ぐらいの過ちは
何とでも取り返せます
むしろ早く終わりが来て良かったのです
彼女には11月の晩秋になっても収穫する実りは何もないのですから
それに彼女は気がついているからこそ二人の生活で幸せ一杯のはずなのにイライラすることがあったのです
ラストシーンはきれいなお別れです
これ以上ズルズル引きずっては美しい思い出にすらなりません
新天地での彼女の大成功と幸せを掴むことを私も祈りました

美しいイタリアの風景がタップリあります
ローマからはじまり、ナポリ、カプリのなど観光して来たような気になる楽しさも満喫できます
白黒作品なのが本当に惜しいです
本作品の5年後の1955年にデヴィッド・リーン監督がワイドカラーで撮った旅情という作品があります
本作は旅愁なのでよく混同されがちです
原題もSumer time で舞台はイタリアベネチア、本作を凄く意識した作品だと思います
内容も少しだけにているような全然似てないようなです
是非、こちらもご覧なさって下さい
本作にグッと来た方にお薦めします

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あき240

4.0ナポリ、ポンペイ、カプリ、ベスビオ火山。観光地の映像だけでもカラーだったらなぁと思う。

2021年8月28日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

 帰国を早めたのは離婚したかったからか、そうでなかったのかを確かめるためにイタリアまでやってくる妻と息子。マニーナの写真を見て、父が生きていると確信する息子。あれほどまで離婚拒否していた妻キャサリンも潔くあきらめる。その二人の潔さと優しさが心に染み入るように訴えてくる。マニーナのコンサートを真剣に聞き入る息子デビッドもいい。

 すべては人生の休暇だった。キャサリンだって捨て身技を使って優しさを表現できたし、離婚劇だったはずなのに、なんだか優しい人だらけ・・・それでも音楽がいいし、心理描写が豊かなので結構好きな映画だ。

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kossy

3.0旅先の恋は儚くおわる

2020年5月10日
PCから投稿
鑑賞方法:TV地上波

独特な物憂い映像美とジョーン・フォンテインのしっとりとした美しさ以外特徴のない映画。煮え切らない男と女の恋の結末も、「カサブランカ」の類似を試みたけれど、スッキリしていないので印象に残らない。ウイリアム・ディターレの演出より脚本自体の出来が悪い。ヨーロッパロケが目的の観光映画と勘繰ってしまう。

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Gustav