夜をみつめて
劇場公開日:1974年4月13日
解説
ロンドンの高級住宅街を舞台に、過去に深い傷を負った女が主人公のサスペンス。製作はマーティン・ポール、監督は「ある愛のすべて」のブライアン・G・ハットン、ブロードウエイでヒットしたルシール・フレッチャーの原作戯曲をトニー・ウィリアムソンが脚色化。撮影はビリー・ウィリアムス、音楽はジョン・キャメロンが各々担当。出演はエリザベス・テイラー、ローレンス・ハーヴェイ、ビリー・ホワイトロー、ロバート・ラング、トニー・ブリットン、ビル・ディーン、マイケル・ダンバーズ・ウォーカー、ロザリオ・セラーノなど。
1973年製作/イギリス
原題または英題:Night Watch
配給:日本ヘラルド映画
劇場公開日:1974年4月13日
ストーリー
夜半の嵐が窓をふるわせ、激しく叩きつける風雨のなかで稲妻が閃く夜、エレン(E・テーラー)は亡夫の夢を見てしまった。現在の夫ジョン(R・ハーベイ)とは再婚だったが、優しかった。忙しい彼に代って話し相手になってくれる友人のサラ(B・ホワイトロー)が同居しており、エレンにとっては何不自由ない暮しといえた。けれど、最初の夫カールのいまわしい記憶が忘れられたわけではなかった。あのとき、カールは出張だといって出かけた。だが、それが愛人との旅行だったのを知ったのは、カールの事故の知らせが届いてからだった。二人は車を飛ばしながら戯れ合ううち、運転をあやまって立木に激突したのだという。遺体確認にいったとき、相手の女は笑いを浮かべたまま死んでいた。まるでエレンを嘲笑するかのように。その裏切り者のカールの夢から醒めたエレンは、じっと闇の中で身を凝らしていた。そのとき、雷鳴と共に閃いた蒼白い光のなかに、向いの邸の窓が浮かび上がった。エレンは思わず悲鳴をあげる。「ジョン、向いの邸で咽喉を切られた男が死んでいる!」。警察が駆けつける。しかし、死体など見つかりはしなかった。ウォーカー警部(B・ディーン)はエレンの幻覚だとして切りあげていった。その夜のエレンの異常さはそのまま尾を引き、神経過敏となって焦々するばかりだった。そして、再度邸の中に妖しい光を発見して、警察が駆けつける。彼らは一人の男を捕えてきた。隣人のアプルビイ(R・ヤング)だった。エレンは今や食事も喉を通らなくなっていた。カールの記憶がまといつき、あの女の死の笑いがつきまとった。ジョンは医者にかかることを勧めたが、エレンは拒んだ。「私は病気じゃない、誰かが私を狂わせようとしているのだ……」。落ちつきのないエレンの傍で、ジョンとサラは親し気に話しこんでいた。やがて、精神医のトニー(T・ブリットン)がやってきて、ここを離れて静養することを勧めた。エレンはトニーの言葉に従わざるをえなかった。彼女が療養所に出発する日、宵から雨が降り出した。ジョンとサラは準備に大わらわだったが、それは喜々としているようにも見えた。ジョンは、仕事のことでサインが必要になるかもしれないと、エレンのサインを求めた。彼女は書類に眼を通したが、その中に、向いの邸を買ったディプコという会社の名前があるのを見逃がさなかった。サラが薬を持ってきた。だが、それはいつもと違って既に溶かされている。エレンの頭の中で、めまぐるしく思考が回転する。すべてが分った。そうだったのか--「二人は愛人同士だったのね。二人して私を狂わせようとしたのね」。エレンは隣の邸に駆け出した。ジョンがそのあとを追う。サラも二人のあとを追い、部屋にかけつけた。雷鳴がひときわ高く轟き、一瞬、蒼白い光が闇を裂く。サラは悲鳴をあげた。異様な雰囲気の部屋には、喉を斬り裂かれたジョンの死体がころがっており、すさまじい形相のエレンが立っていた。彼女は完全に狂っていたのだ。魔の手がやがて、サラの喉もとに……。翌朝、何事もなかったように、エレンは、ジョンとサラが用意した旅行カバンを携えて旅立った。
スタッフ・キャスト
- 監督
- ブライアン・G・ハットン
- 脚色
- トニー・ウィリアムソン
- 原作戯曲
- ルシル・フレッチャー
- 製作
- マーティン・ポール
- 撮影
- ビリー・ウィリアムズ
- 音楽
- ジョン・キャメロン
- 字幕監修
- 岡枝慎二