■作品全体に漂う、アメリカ南部のミシシッピの田舎町の気怠い雰囲気。その町の夜に発見された、町に工場を建設しようとしていた男の死体。
偶々居合わせたが故に、最初は殺人犯と間違われる黒人殺人課刑事のヴァージル・ティッブス(シドニー・ポワチエ)。
黒人蔑視思想の強い、小さな町の小さな警察署長ビル・ギレスピー(ロッド・スタイガー)が、黒人のヴァージル・ティッブスに捜査を委ねる時の、何とも言えない複雑な顔。
彼の自尊心が許さないが、黒人殺人課刑事に捜査を委ねざるを得ない葛藤。
そして、事件の真相がヴァージル・ティッブスの鋭い推理により明らかになる過程の見事なストーリー展開に、引き込まれる。
<今作は、偶々居合わせた黒人殺人課刑事と、田舎町の冴えない警察署長との相克する人間関係の変遷を殺人事件捜査と共に描いた逸品である。
ヴァージル・ティッブスが漸く町を離れるために、列車に乗る時に見送りに来た警察署長ロッド・スタイガー演じるビル・ギレスピーが、初めて彼に笑顔を向けて”元気でな。”と告げ背を向け去る姿と、その後姿を笑顔で見るシドニー・ポワチエ演じるヴァージル・ティッブスの表情が、激渋な余韻を残す作品でもある。>