波止場(1954)
劇場公開日 1954年6月22日
解説
「欲望という名の電車」のエリア・カザン監督とマーロン・ブランドが再タッグを組み、1955年・第27回アカデミー賞で作品賞・監督賞・主演男優賞など8部門に輝いた社会派ドラマ。元ボクサーの青年テリーは、現在はギャングのジョニーが支配するニューヨークの波止場で働いている。ある日、テリーと兄チャーリーはジョニーに命じられ、殺人事件に関わってしまう。やがて被害者の妹イディと知り合ったテリーは、兄の死の真相を追求しようとする彼女に心惹かれていく。イディに感化され、自らの信念に基づいて生きることに目覚めるテリーだったが……。後に「北北西に進路を取れ」などに出演するエバ・マリー・セイントがイディを演じ、映画初出演にしてアカデミー助演女優賞を受賞した。
1954年製作/108分/アメリカ
原題:On the Waterfront
配給:コロムビア映画会社
スタッフ・キャスト
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『欲望という名の電車(1947)』に続き、ホモソーシャルの残酷さと愚かしさを映画の表現語彙で巧みに描き出した怪作。
主人公テリーは「元プロボクサー」という暴力表象と「ハト飼い」という反暴力表象の間を彷徨する迷い人。しかしイディという女性やバリー神父との交感を通じて少しずつマッチョイズムの空虚さを自覚していく。
テリーは波止場仕事の不法占拠者でありホモソーシャルの牙城でもあるギャング集団に反旗を翻す。もちろん暴力を振るうのではなく、正式な法廷でギャングたちに不利になるような証言を行った。
しかしこのことによって彼は波止場の仕事仲間の男たちからハブられてしまう。「法廷で証言なんてお前女々しくてダセーな」といった感じ。人員点呼でテリーだけが名前を呼んでもらえないシーンはいかにもホモソーシャル特有の湿っぽい悪意が感じられた。
このあとテリーはギャングに最終決戦を挑むことになるのだが、彼はギャングからの攻撃に応戦する形で結局暴力を振るってしまう。思えば反暴力の表象であるハトをギャングたちに皆殺しにされてしまった時点で、彼は否応なく暴力の側に引き下がらざるを得なかったのだろう。拳を振るいながらも苦虫を噛み潰したような表情のテリーが不憫でならなかった。
ギャングとの決闘の末、テリーはノックアウトさせられてしまう。しかしそれを見ていた仕事仲間たちはテリーの勇気に鼓舞され、ギャングへの反感を強めていく。ホモソーシャルの暴力性を知らしめるためには結局のところ暴力に頼らざるを得ない、という皮肉なジレンマだ。
物語はテリーとその仕事仲間たちがギャングの制止を振り切って波止場のガレージの中に消えていくところで幕を閉じるが、神父が言うように「本当の戦いはこれから」なのだと思うと手放しには喜べない。『欲望という名の電車』よりはいくぶんか希望のある終わり方だったが…
2022年1月13日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD
ー 年代的に、マーロン・ブランドと言えば、「ゴッド・ファーザー」であり、「地獄の黙示録」である。
で、今作。
若いが、決してハンサムではないマーロン・ブランドが元ボクサーとして、賭け試合にわざと負けた事を屈託としつつ、波止場を仕切るギャング、ジョニーに兄を通じて間接的に協力している様が前半は描かれる。
だが、彼が間接的に殺してしまったジョーイの妹、イディと出会う事で、彼の荒んだ心は、徐々に浄化されていく・・。-
◆感想
・まずは、若き日のマーロン・ブランドを観れた事で満足である。
決して美男では無い彼が、元ボクサーのテリーを演じる姿。
そして、徐々にギャング、ジョニーに支配されていた、波止場に流れる
”見ざる、言わざる、聞かず”
の風潮に風穴を開けて行く姿。
・ジョニーの報復は凄惨を極めるが、テリーは屈せずに、恋心を抱くイディへの想いもあり、過去を清算しようと、奮闘する姿。
<現在、観賞するとストーリーは粗いが、軸は全くブレておらず、鑑賞側には響くものを持った作品である。
少しづつエリア・カザン監督作品を観て行こうと思った映画でもある。>
2020年4月18日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル
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若かりし頃のマーロン・ブランド、今風のイケメンではない。ゴッドファーザーのドンがどうしても印象が強い。ストーリーは単純明快。少し間延びする。ゴロツキの悪が暴力でなく、証言して悪を追い詰めるが、ラストは自分なりのリベンジの仕方で、波止場に職を求めて乗り込んでいく。周囲も冷ややかな目で、組織にやられても助けないが、神父やヒロインに煽られ、遂に動く。もっと華々しく、悪をやっつけてほしいと思った。
2019年1月1日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD
過去の名作は映画の基本がしっかりしている。力強い脚本と芝居、絵の強さ。たぶん「ロッキー」とかに影響を与えてるんだろうなぁ。
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