友だちのうちはどこ?
劇場公開日 2021年10月16日
解説
友だちの大切なノートを間違えて持ち帰ってしまった少年が、ノートを返すため友だちの家を探し歩く姿を生き生きと活写し、アッバス・キアロスタミ監督の名を世界に知らしめたイラン映画。イラン北部にあるコケール村の小学校。モハマッドは宿題をノートではなく紙に書いてきたため先生からきつく叱られ、「今度同じことをしたら退学だ」と告げられる。しかし隣の席に座る親友アハマッドが、間違ってモハマッドのノートを自宅に持ち帰ってしまう。ノートがないとモハマッドが退学になると焦ったアハマッドは、ノートを返すため、遠い隣村に住む彼の家を探し回るが、なかなか見つけることができず……。特集企画「そしてキアロスタミはつづく」(2021年10月16日~、東京・ユーロスペースほか)にてデジタルリマスター版を上映。
1987年製作/83分/イラン
原題:Where Is the Friend's House?
配給:ユーロスペース
日本初公開:1993年10月23日
オフィシャルサイト スタッフ・キャスト
全てのスタッフ・キャストを見る
2021年11月30日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD
1987年製作のイラン映画で、日本で初公開されたのは1993年。当時、全盛の都内ミニシアターで初めて見た時の衝撃が甦る。それまでハリウッドや香港などの娯楽作やアクション作品を数多く見てきて映画好きを自負していたが、「友だちのうちはどこ?」には、自分の中の「映画」というものの概念が覆された。
フィクションの物語映画でありながら、その作品世界は真実のようで、それまでの映画で味わったことのない映画表現の領域に入り込んだような感覚に陥り、特にラストシーンの感動でしばらく立ち上がれなかったのを覚えている。アッバス・キアロスタミ監督は、職業俳優を使わず、撮影地の村の住人や子どもたち、実際の家や学校を使用して撮影し、フィクションとドキュメンタリーの間の絶妙なバランスを保つスタイルを確立した作家だが、「友だちのうちはどこ?」はそんなスタイルを象徴する傑作である。
この映画は、あなたのその後の人生観や映画の見方を変えてしまうかもしれないほど、映画的な力を持っている。そして、世界には異なる文化や習慣を持った民族がいて、映画表現も国によって異なるという、未知の領域を教示してくれるに違いない。しかし、この映画で描かれているのは普遍的なもの。国や人種、文化が異なっても共感できるテーマであることが、今なお世界中で愛されている所以なのだろう。
2022年5月7日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:映画館
ネタバレ! クリックして本文を読む
イラン人監督アッバス・キアロスタミによる1987年の作品。トラベラーと同じく少年を主役としながら、トラベラーとは打って変わって、コチラは、とっても良い子の物語り。
これも、明確に傑作と言えます。凄く良いですもん。
アハマッドの放課後数時間の出来事を、83分の短尺に収めますが、ポイントとなる「教師の叱責」「母親との折衝」「祖父からの命令」「老人との徘徊」、更には「アハマッド自身による家探し」は、リアルタイムな時間感覚でジックリと描写します。この自然体な場面の造り込みが効果的です。物語りに引き摺り込まれてしまいますもん。
それと。
画が抜群に良いです。絵画的。時に、遠近の対比を一つの画面に捉え。時に、明暗を対比させながら人物を移動させ。目当てのムハマッドを見つけたかと見せ掛けながら、少年の顔を隠し続ける演出も取り混ぜ。
日仏の影響を強く感じる、映画の手法。悪知恵とも言えなくは無い少年の機転に、止めが親切ながら役立たずだった老人がくれた花だと言う。
気の利いた、非英語圏の短編小説の様な映画は、キアロスタミが後にパルムドールを取る事を予感させるに十分な、密度のある小品でした。
邦画界の若手には、爪の垢を煎じて飲め、って言いたくなりますが。偉そうに言うと。
そんくらい。
良かった。とっても。
これって微笑ましく観る映画なのだろうか。
まともな大人が全然出てこない。ある意味すごい。
子どもたちはみんな困ったような顔をしている。
彼らは初々しくて素敵なのに、こんな大人たちに囲まれて育ったらたぶんあまり良い大人にはならない。
って、わたしたちにも言えることですね。
文句も言わず当惑しながら走り回るアハマッドに胸が痛んだ。
2021年12月25日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD
8歳の小学生が、同級生の家の詳しい場所を知らないまま隣村まで宿題ノートを返しに行くが、いろいろな老人たちに妨害されてしまう話。
ちょびっと良い話とイライラする話とびくびくする話とハラハラする話とノスタルジーが混ぜ合わさって味わいのある映画に仕上がっていると思います。
ただ、すごく面白い映画かというと、そうではない。
今週の気づいた事:子供の頃たしかに大人は怖かった。
すべての映画レビューを見る(全29件)