トータリー・ファックト・アップ
劇場公開日:1996年5月25日
解説
ポスト・エイズ時代のアメリカ社会に生きる10代の同性愛者たちの、等身大の姿を描く、疑似ドキュメンタリー・タッチのクィアー青春映画。監督は新しい世代のゲイ・フィルムおよびインディペンデント映画の旗手と目される「リビング・エンド」のグレッグ・アラキで、脚本・撮影・編集も担当。製作はアラキの作品を手掛け続けているアンドレア・スパーリング。主人公である六人の少年少女を演ずるのは、いずれもアラキが街でスカウトしてきた同性愛者たちで、劇中の役柄も実生活にかなり近づけて設定されているという。映画は15の断片から構成され、16ミリ・フィルム撮影による劇部分と、その中でビデオ作家という設定の少年が撮ったという形でビデオ映像、特に6人それぞれのインタビューが挿入され、そのインタビューが役柄としてのそれなのか、それとも演じている本人としての言葉なのかは、意図的にあいまいにされている。ちなみにアンディ役のジェームズ・デュヴァルはこの後アラキの次作「ドゥーム・ジェネレーション」と『No Where』にも主演。共演はアラン・ボインス、「リビング・エンド」のクレイグ・ギルモアほか。
1993年製作/アメリカ
原題または英題:Totaly F***ed Up
配給:スタンス・カンパニー
劇場公開日:1996年5月25日
ストーリー
ロンゼルスに暮らす10代のゲイのアンディ(ジェームズ・デュヴァル)は本当に愛する相手が見つけられないでおり、自分はバイセクシャルかもしれないと言うときもある。「テレビや映画には映されない現実を撮る」といってビデオ作家を目指すスティーヴン(ギルバート・ルナ)はデリック(ランス・メイ)と恋仲だが、一途に自分を恋するデリックとの関係になにか物足りないものを感じている。パトリシア(ジェニー・ジル)は自分の子供を生んで恋人のミシェル(スーザン・ベイシッド)と一緒に育てたいと思うが、男とセックスすることは我慢ならない。トミー(ロコ・ベリック)は自分が世間のゲイのステレオタイプに当てはまらないと思っており、また親には自分のことを明かせないでいる。ステファニーの誕生日に、男の子たちは素人人工受精のため自分たちの精液を提供する。<ここから物語の始まり>アンディは大学生イアン(アラン・ボインス)と出会い、初めて本気で恋をする。スティーヴンはバイト先のビデオ店で誘ってきた男(クレイグ・ギルモア)と寝てしまった。デリックを愛してはいるが、浮気の相手のセックスはあまりにも快感だ。罪の意識から彼はビデオの告白テープを作るが、デリックにそれを見られてしまう。トミーは両親にホモであることがばれて家を追い出され、デリックの家に居候する。デリックが同性愛嫌悪の暴漢に襲われ、スティーヴンに電話で助けを求めてきた。幸い怪我は軽くて済むが、しかし彼はスティーヴンに会うことを拒否する。アンディは襲撃事件に動揺してイアンに会いたくなるが、彼の部屋にいくと、実は別の男と寝ていると告白される。トミーは家で療養するデリックの面倒を見ながら、独り暮らしをする部屋を探しはじめる。アンディは次第に孤独に追い詰められていく。ある日アンディは仲間たちに電話しようとするが、ちょうどスティーヴンとデリックの仲の件でみんなが電話中で、電話が繋がらない。彼は衝動的に様々な洗剤や薬品をグラスについで一気に飲み干した。ふらふらして庭に出た彼は、プールに飛び込んで息絶える。