デッドマン・ウォーキング

劇場公開日:

解説

死刑囚とカトリックの修道女の心の交流を綴ったシリアス・ドラマ。実際に何人もの死刑囚に精神アドヴァイザーとして付き添った、シスター・ヘレン・プレイジョーン本人と、彼女の同名著書(邦訳・徳間文庫)に感銘を受けた、「依頼人」の演技派女優スーザン・サランドンがヒロインをつとめ、彼女の伴侶で「ショーシャンクの空に」などの個性派俳優ティム・ロビンスが「ボブ・ロバーツ」についで監督・脚本を手がけ、夫婦共同で映画化。サランドンは通算5度目のノミネートだった本作で、アカデミー主演女優賞をみごと受賞した。対する死刑囚には「カリートの道」のショーン・ペンが扮した。製作はロビンスと、「クロッカーズ」のジョン・キリク、「ナイト・オン・ザ・プラネット」のラッド・シモンズ、エグゼクティヴ・プロデューサーは「ボブ・ロバーツ」「未来は今」のティム・ビーヴァンとエリック・フェルナーのコンビ。撮影は「ショーシャンクの空に」のロジャー・ディーキンス。音楽はロビンスの実弟で、「ボブ・ロバーツ」のデイヴィッド・ロビンスがスコアを担当。主題歌は「フィラデルフィア」でアカデミーとグラミーの両賞を受賞したブルース・スプリングスティーンの書き下ろし、『デッドマン・ウォーキン』。劇中のエディ・ヴェダー&ヌスラット・ファティ・アリ・ハーン(2曲)、ジョニー・キャッシュ(1曲)の挿入曲も印象的。美術は「エド・ウッド」のリチャード・フーヴァー、編集は「リアリティ・バイツ」のリサ・ゼノ・チャージンで、二人は「ボブ・ロバーツ」にも参加。衣裳は「ギルバート・グレイプ」のルネ・アーリック・カルファス。共演は「ミセス・ダウト」のロバート・プロスキー、「クール・ランニング」のレイモンド・J・バリー、「フルメタル・ジャケット」「セブン」のR・リー・アーメイほか。

1995年製作/122分/アメリカ
原題または英題:Deadman Walking
配給:日本ヘラルド映画配給(アスミック=日本ヘラルド映画=テレビ東京提供)
劇場公開日:1996年8月3日

ストーリー

ルイジアナ州ニュー・オーリンズ。セント・トマスの希望の家で働くシスター・ヘレン(スーザン・サランドン)は死刑囚、マシュー・ポンスレット(ショーン・ペン)から何度か手紙を受け取る。マシューは相棒と二人でカップルを惨殺し、州立刑務所に収監されていた。死刑囚と会うのは初めての経験だったが、ヘレンはマシューの求めに応じ刑務所を訪れ、彼と面会する。傲慢で冷酷そうなマシューは印象こそ悪かったが、共犯者が無期懲役なのに、不利な証拠が重なって彼だけ死刑が確定したという事実に彼女は疑問を持つ。しばらく後、マシューから死刑執行の日が決まったという焦りの電話を受けて、ヘレンは特赦審問会請求のため弁護士ヒルトン・バーバー(ロバート・プロスキー)に協力を依頼。ヒルトンの説得により、彼らはマシューの母親(ロバータ・マックスウェル)を審問会で証言させ、万座の同情を得ようとしたが、努力も空しく嘆願は却下。残る手段は知事への直談判だけとなり、ヘレンは彼の精神アドヴァイザーとなることを承諾。ところが彼女はそこで、居合わせた被害者の遺族から非難を受ける。ショックを受けたヘレンは、殺されたカップルの青年ウォルターの父親デラクロワ氏(レイモンド・J・バリー)、娘ホープ・パーシーの両親(R・リー・アーメイ、シリア・ウェストン)を相次いで訪問。愛する家族を惨殺され、怒りと悲しみをあらわにする彼らを前に、彼女には言葉がない。そんな執行の日が近づく中、ヘレンはマシューの精神アドヴァイザーとして、彼と毎日数時間をすごし、彼の心に少しでも近づこうと努力を続ける。マシューは人種差別発言や犯行否認を相変わらず繰り返し、ヘレンを憤慨させたりしたが、そんな彼も家族には思いやりをみせ、ヘレンには心を開きはじめていた。死刑当日。刑の執行の午前0時まで、知事への嘆願の返事を待ち続ける二人。結局、上訴審は却下。死にゆくマシューに勇気を与えられんことを……と、ヘレンは神にひとり祈る。最後の面会。マシューはヘレンからあずかった聖書に名前と日付を入れ、彼女に渡す。マシューはヘレンに、犯行の事実を告白した。「ウォルターを撃って殺したのは自分だ。レイプは自分もしたが、ホープを刺したのは相棒だ。今は二人の死に責任を感じる。昨夜は二人のために祈った」と。午前0時数分前。マシューは迫りくる死の恐怖のためかすすり泣いた。そしてついにその時が。ヘレンは護送されるマシューの肩に手をかけ、最後まで付き添う。処刑台に縛られたマシューの最後の言葉は、処刑に立ちあった被害者の遺族への謝罪だった。マシューの葬儀。彼はヘレンらの教会の墓地に葬られた。

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スタッフ・キャスト

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受賞歴

第68回 アカデミー賞(1996年)

受賞

主演女優賞 スーザン・サランドン

ノミネート

監督賞 ティム・ロビンス
主演男優賞 ショーン・ペン
主題歌賞

第53回 ゴールデングローブ賞(1996年)

ノミネート

最優秀主演男優賞(ドラマ) ショーン・ペン
最優秀主演女優賞(ドラマ) スーザン・サランドン
最優秀脚本賞 ティム・ロビンス
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映画レビュー

4.0死とは何か

2024年10月2日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

死刑囚の死刑執行、それは、我が国でも日常としてある。

が、当事者(死刑囚、遺族含めて)はごく少数で、その心情に

思いを馳せることは、通常ほぼないが、こういう映画を見るたびに

考えさせられる。

人の人生って、死って、明確には答えられない。一人一人みんな違うから。

自分はどちらかと言えば死刑廃止論者ではないが、死刑が抑止になるとも

思えない。改心とは、償いとは、明確な答えはない。

私ごとだが、80代の父が最近、亡くなったが、認知症で話すこともできず、

面会に行っても、呼吸が苦しそうな時もあった。

それは誰にも伝えられない苦しみって。想像するだけでも怖い。

実際の死刑執行の方が、むしろ楽に死ねるなと思った。

ショーンペンは、演技はうまい、本物に見える。

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藤崎敬太

5.0問いかけてくるもの

2024年10月2日
iPhoneアプリから投稿

胸に深く突き刺さる傑作。私は、涙なしにはこの作品を観ることはできない。折に触れみている。
95年制作。

合法的殺人、死刑。非合法殺人との対比。
死刑制度の是非を真正面から問いかける。
目には目を、歯には歯を。古代エジプト、メソポタミア文明時代、バビロニアを統治したハンムラビ王が制定したとされる、ハンムラビ法典にその言葉が記されている。罪刑法定主義の原点とされている。

物語はシスターと死刑囚の対話、心的交流を軸に残虐な犯罪で殺される命と、死刑という制度で殺される命。死、ということだけをとれば、それは殺人と変わらず合法か非合法か、という違いがあるだけではないだろうか、と静かに問いかけているように私は捉えている。

殺人を犯した死刑囚マシューと、その精神的支柱になろうとするシスターヘレン。
マシューの育ってきた環境、無惨、残虐に殺された若い命、彼らの遺族との対比。残酷な犯罪の描写もフラッシュバックで描写されている。
どんな残虐な犯罪を犯し人命を奪った人間にとっても死刑は制度的合法殺人であり、ならば命をもってそれは償いになるのか。
被害者家族は、それで心に安寧を得ることができるのか。

しかし、私が上記のように述べてきたのも結局、安全地帯からの言葉であり、自分の家族や大切な人達が殺された、となれば冷静でいられるはずがない。
犯人にも同じ思いを、と感じるに違いない。
まさに目は目を、歯には歯を、の精神状態におちいるだろう。
いつ自らが加害者、被害者になるかだってわからない…。

監督名優ティムロビンス
シスター演じるはスーザンサランドン、この演技でアカデミー受賞。死刑囚マシューのショーンペン。この人の演技にはいつも圧倒される。2人の圧巻の演技。
撮影監督ロジャーディーキンス。ショーシャンクの空に、でも壁、ガラスに隔てられた2つの世界、刑務所の壮大な空撮など圧巻の撮影で魅せる。
今作も隔てられた向こうとこちらの世界、ガラスに隔てられた壁、俳優のアップ、ロング、心情を捉えるなど見事な撮影。

現在、先進国で死刑制度がある国は日本と数少ない国々らしい。
アメリカは連邦国家であり、州ごとに法律も違うという。

物語終盤、死刑囚マシューは死を受け入れ遺族に謝罪の言葉を述べ、死んでいく。
シスターヘレンの粘り強い対話の精神で、死を前にして罪を受け入れる。
多くの洋画と同様、今作にもキリスト教の概念、聖書の言葉が多く出てくる、心の支えともなる信仰とは何か、も訴えている。

ラストは心を揺さぶられ、とても冷静にはみていられなくなる。涙が滲む、

現代日本でも、残酷な犯罪があり、人命を奪う人間と無念にも奪われてしまう人がいる。

死刑制度があったとしても、果たしてそれが犯罪抑止につながっているのだろうか。

センシティブなテーマだが、音楽が良い。
ラストに流れるブルーススプリングスティンの歌も静かな余韻を残す。
デッドマンウォーキング、死刑囚が行くぞ、という意味らしい。

多くの方にみていただきたい作品です。
私には無責任ではあるが、正しい答えはわからない。

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たま

4.0遺族の敵になるしんどい仕事

2024年10月2日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

スーザンサランドン扮するシスターヘレンブレイジェーンは、手紙を寄こしたショーンペン扮する死刑囚のマシューポンスレットに会いに行った。マシューは殺していないと言った。

凶悪犯に対してメンテする必要は無いと思うが、やはりシスターという立場もあって請われたら話し相手も応じるのだろう。死刑囚も最後は救いを求めるんだろうね。被害者遺族の話を聞いてもシスターたるもの死刑囚を救おうとするんだろうね。当然遺族の敵になるわね。しんどい仕事だ。

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重

4.5死刑論

2023年10月25日
iPhoneアプリから投稿

主演二人の迫真の演技に魅了される。
死刑論について考えさせられる秀作。

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TZW