手錠のままの脱獄

劇場公開日:

解説

ハリウッドの異色製作者であり「見知らぬ人でなく」「誇りと情熱」と監督にものりだしたスタンリー・クレイマーが、製作・監督した3本目の作品。白人と黒人という人種問題をとりあげ、互いに鎖で結ばれあった脱走囚人2人をそれぞれ、白人・黒人に設定するという抽象的な問題提出をもった作品構成である。脚本はネーサン・C・ダグラスとハロルド・ヤコブ共作のオリジナル。撮影はサム・リーヴィット。音楽はアーネスト・ゴールドだが、背景音楽は一切使われておらず、ラジオのジャズと主演の「暴力教室」のシドニー・ポワチエが歌う民謡“ロング・ゴーン”が出てくるのみ。80%を占める戸外撮影は南カリフォルニアで、悪天候を選んで行なわれた。作品のテンポを上げるためストレート・カット一本槍という編集方法がとられている。出演者は他に「ヴァイキング」のトニイ・カーティス、唯一の女性カーラ・ウィリアムス、セオドア・バイケル、ロン・チャニー等。ポワティエはこの作品でベルリン映画祭男優賞を受賞した。

1958年製作/アメリカ
原題または英題:The Defiant Ones
配給:松竹=ユナイテッド・アーチスツ
劇場公開日:1958年10月11日

ストーリー

豪雨のハイウェイで1台の囚人護送車がハンドルを切り損ない崖から転落した。死者はなかったが白人のジャクソン(トニー・カーティス)と黒人のカレン(シドニー・ポワチエ)の2囚人が脱走した。2人は互いに手首と手首を4フィートの鎖でつながれていたが、心は双方とも相手に対する人種的偏見と憎悪で固まっていた。時をおかずギボンス警部の率いる武装警官隊とルー・ガンスを隊長とする民間人徴集隊が協同で捜索をはじめた。獰猛なドーベルマン2頭を含む警察犬も動員され雨中の山狩りがはじまる。指揮官には治安官のミュラーが当たった。2人の囚人は増水した谷河を渡り、崩れ易い陶土採掘坑に身をひそめ、沼地で食用ガエルをとり、必死の逃走をつづけた。鎖で繋がれた2人は心ならずも協力しなければならなかったが、互いの憎悪はつのる一方だった。食物を求めて、夜更けにある集落の店に2人は忍び入ったが、誤って足を滑らしたジャクスンは手錠で手首を切り、カレンも共に床に転落して、物音により村人たちに捕らえられた。男たちは2人にリンチを加えようとしたが、危うく、長い獄中生活をしたらしい手錠のあとのある大男サムに救われた。なおもあてのない道を進む2人の不安と焦りは爆発して、なぐり合いとなった。この時、2人の鼻先に22口径のライフルがつきつけられた。何とそれは10歳位の男の子だった。カレンは銃を奪うと子供の家に向かった。母親は2人に食物を与え、タガネと金槌を出して鎖を切った。ジャクソンは手首の傷から発熱して倒れた。半年前から夫に捨てられ、2人で暮らしてきたという女は、翌朝、熱の下がったジャクソンに連れて逃げてくれと頼んだ。そして、北に逃げたいというカレンに沼地を抜ける近道を教えた。しかし、カレンが発った後、それが流砂に埋まる死の道だと知ったジャクソンは、女を振り切って憎みきっている筈の黒人のあとを追って行き、カレンを助けた。しかしその時少年の撃ったライフルの弾丸がジャクソンの胸を貫いていた。追手は銃声で迫ってき、警察犬の吠え声がする。鉄道線路にたどりついて2人は、通過する列車にとびついた。しかし、先にはい上がってのばしたカレンの手をジャクソンが掴みながらも、力つきた2人は車外に転落した。捜索隊が追いついた時、虫の息ながら微笑みするジャクソンを膝に、黒人のカレンは静かに民謡を口ずさんでいた。

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スタッフ・キャスト

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受賞歴

第16回 ゴールデングローブ賞(1959年)

受賞

最優秀作品賞(ドラマ)  

ノミネート

最優秀主演男優賞(ドラマ) トニー・カーティス
最優秀主演男優賞(ドラマ) シドニー・ポワチエ
最優秀助演女優賞 カーラ・ウィリアムズ
最優秀監督賞 スタンリー・クレイマー
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映画レビュー

2.0「招かれざる客」の域にはまだ遠い、クレーマー監督の発展途上的作品か…

2023年2月17日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

昨年再鑑賞して改めて感銘を受けた
「招かれざる客」にテーマ的に繋がる作品
では、との意味合いで初めて鑑賞したが、
その期待に応えてもらう結果には
ならなかった。

そもそもが、はじめから白人と黒人が
人種的に反目しあっている感じが僅かだし、
当時の白人にありがちな
上から目線的に黒人に接したり、
黒人にもその観点で反発しているようにも
見えないから、
“見えない手錠”に進化するまでの
次第に友情が芽生えるとの徐々に感が
解説のようには感じられず、
「招かれざる客」的テーマ性が弱いままの
展開に戸惑ってしまった。

理性的な対応を徹底する保安官の存在が
救いではあったが、
最後に訪れた家の母子が
最初から彼らに恐怖を感じない描写や、
子供を捨ててまで白人脱獄囚と一緒になろう
とする母親像の設定が御都合的に感じる。
また、白人脱獄囚のその母親への
「寂しさ・むなしさを涙で埋めるのではなく、
夢で」との科白も唐突感が拭えない。

キネマ旬報第13位と評価された作品だが、
結果的に、
「招かれざる客」の域にはまだ遠い、
クレーマー監督の発展途上的作品
のように思えた。

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KENZO一級建築士事務所

3.0通常取扱犯罪人間ドラマ

2022年1月27日
PCから投稿

まあ普通です。そこそこ面白いけど圧倒的な感動とかあるわけでもないです。
迷い込んだ家の奥さんと恋仲になるのが不自然ですね。
最後も、もう少し男の友情を感動的に演出できなかったかな?

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越後屋