地下水道

劇場公開日:

解説

第二次大戦下のポーランドにおける対独ゲリラ戦の一挿話を描いた一篇。イェジー・ステファン・スタウィニュスキーの原作『下水渠』をスタウィンスキ自ら脚色、三十一歳の若手アンジェイ・ワイダが監督した。撮影はイェジー・リップマン、音楽はヤン・クレンズ。主演はタデウシュ・ヤンチャル、テレサ・イゼウスカ、ヴィンチェスワフ・グリンスキー、そのほかポーランド国立映画アカデミーの学生たち。一九五七年度カンヌ国際映画祭・審査員特別賞、一九五七年度モスクワ世界青年平和友好映画祭青年監督賞をそれぞれ受賞。

1956年製作/ポーランド
原題:Kanal
配給:NCC=日活
劇場公開日:1958年1月10日

ストーリー

一九四四年九月末、爆撃と戦火で廃墟化したワルシャワの街。過去数年つづけられてきたパルチザン部隊による地下運動も悲惨な最終段階に達した。ザドラの率いるパルチザン中隊もドイツ軍に囲まれ、もはや死を待つばかり。そこで彼らは地下水道を通り市の中央部に出て再び活動をつづけることにした。夜になって隊員は地下水道に入った。中は広いが汚水が五十センチから一メートル半にも達している地下水道は暗黒と悪臭の無気味な世界である。隊員はやがて離ればなれになり、ある者は発狂し、またある者は耐え切れずマンホールから表に出てはドイツ軍に発見され射殺された。地下水道へ入る日、負傷したコラブ(タデウシュ・ヤンチャル)と、彼を助けて道案内してきたデイジー(テレサ・イゼウスカ)の二人も、やっと出口を見つけたと思ったのも、そこは河へ注ぐ通路と知って、落胆の余りその場に坐りこんでしまった。そのころ、先を行くザドラと二人の隊員は遂に目的の出口を見つけた。が出口には頑丈な鉄柵が張られ、爆薬が仕かけられていた。一人の隊員の犠牲で爆薬が破裂、出口は開かれた。ザドラと残った一人の従兵は地上へ出た。がこのときザドラは他の隊員がついてこないのを不審に思い、従兵に尋ねた。従兵はザドラが隊員を連れてくるようにとの命に背き、彼らは後から来ると嘘を言い、自分だけが助かりたいばかりにザドラについてきたのだ。これを知ったザドラは従兵を射殺。そして彼はこの安全な出ロまで地下水道をさまよう隊員を導くため再びマンホールに身をひそませた。

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映画レビュー

3.5追い詰められていく恐怖。

2023年11月18日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

映像文化ライブラリーでの「ワルシャワ蜂起 メモリアル上映会 Warsaw Uprising memorial 」で鑑賞した。
上映前に、ヨアンナ・サドフスカ氏(ワルシャワ蜂起博物館学芸員)による15分程度の紹介挨拶があった。
「アンジェイ・ワイダ監督によるとこの映画は「半英雄的」とのこと。
ソ連の影響の中、共産体制のもとでチェックを受け許可を得て撮影が始まった。
後半のシーンの地下の下水道はセットで撮影された。まだ当時の状況を知る多くの人が生きている中で、勇ましく戦うシーンを期待した人が多かったが、この映画はそうではなかった。
しかし、第10回カンヌ国際映画祭審査員特別賞受賞(1957年5月)で評価が変わった。」

ドイツ軍に追い詰められ兵士たちは、地下水道で移動することを余儀なくされる。どこに行けばいいのか。暗闇の中で不安と恐怖が襲う。中でも女性が兵士とともに移動するが力強いのである。たんだんと精神的に追い詰められる絶望的な中で、エンディングに向かう。ポスターの写真はエンディングの中のシーンの一つ。

この映画は、ワルシャワ蜂起の歴史的、政治的な流れをある程度調べて見たほうがいいと思う。この映画ではそのような説明はほとんどないのだから。また、派手な戦争シーンもほとんどない。

日本でも戦後多くの戦争映画が製作されたが、兵士の戦いの悲惨さを描く映画も多かったように思う。

<映像文化ライブラリーの解説>
ポーランドの巨匠アンジェイ・ワイダ監督のデビュー作『世代』と、続く『灰とダイヤモンド』と共に抵抗三部作と呼ばれている1作。ドイツ占領下のワルシャワを舞台に、ドイツ軍に追いつめられ、地下水道をさまようレジスタンスたちの姿を描く。暗くて狭い地下水道を虚しく彷徨う人々が恐怖と不安に追いやられていく様は胸が掴まれる。悲惨な運命の末路は、ポーランド映画史上、強烈なエンディングとなっている。

2023/11/17 広島市映像文化ライブラリーにて。

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M.Joe

4.5ソ連の支配批判を世界に届け続けてきたワイダ映画の原点のような作品に…

2023年11月6日
スマートフォンから投稿

少し前、ワイダ監督の「カティンの森」と
「灰とダイヤモンド」を観たあと、
抵抗三部作のひとつのこの作品を
図書館で見つけ、ワイダ関連で再鑑賞した。

絶望的な描写が続いた。
救いようのない地獄絵図とは
このことだろうか。

全編救いのないような展開だが、
私は画面から目を離せなかった。
後でセットだと知る作品の半分以上を占める
地下水道の場面での
ポーランド兵士の死への彷徨は、
リアリティーに溢れ、
あたかも私を同時代の目撃者に
誘うような見事な演出だった。

このドイツ軍に対する蜂起に
勝とうが負けようが、
ポーランドがソ連の支配下に入る運命だった
と考えると、
ポーランド国民に同情を禁じ得ないが、
ワイダ監督は
ソ連の検閲を巧妙にかわしながら、
「灰とダイヤモンド」から「大理石の男」
「鉄の男」等々の作品で、
巧妙にソ連の支配批判を
世界に届け続けてきたことには
頭の下がる思いだ。

私にとっては、抵抗三部作の「世代」を観る
機会は失われてはいるものの、
大国に蹂躙され続けてきた
郷土への想いをヒシヒシと感じられる
ワイダ映画の原点のような作品に思えた。

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KENZO一級建築士事務所

4.5アンジェイ・ワイダ監督「抵抗三部作」の第2作目

2022年12月11日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

アンジェイ・ワイダ監督「抵抗3部作」の第2作目。
1944年9月、ドイツ軍に包囲されて逃げ場が無くなったポーランド兵たちが、地下水道を通って包囲網の外へ出ようとするのだが……という姿を描いた映画。

ポーランド兵たちは、地下水道が迷路のように複雑で方向感覚が分からなくなる。また、暗闇が絶望に満ちている。
発狂する者、絶望に耐え切れずに地下水道からマンホールで地上に出てドイツ兵に射殺される者、自殺する者など……容赦なく描かれる悲劇。

そんな人々の中で、唯一、土地勘のある(地下水道を知っている)女性デイジー(テレサ・イゼウスカ)は負傷兵ヤツェック(タデウシュ・ヤンチェル)を愛しており、彼を連れていくと、絶望の中に光が見えた。これは「希望の光」に見えたが、実は「絶望の光」だった……というあたりはアンジェイ・ワイダ監督の手腕が光る。

また、地下水道の中で人物を捉えた場面では、「影を使った演出」も見事であり、アンジェイ・ワイダ監督による傑作のひとつ。

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たいちぃ

3.5ソビエトワルシャワ蜂起

2018年6月13日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

怖い

ドイツに支配されるポーランド軍。
地上の銃撃戦も怖いが、中盤過ぎから地下水道に入ってから物理的な閉鎖感も含めて緊迫した絶望感が増していく。
ひとのうめき声、幻覚、笑い声、下水汚物、有毒ガス、見てるこっちが吐き気をもよおすほどきついシーン。
人々も極限の状態でおかしくなる。オカリナ吹いて去り行く音楽家、裏切って爆弾を爆発させる。
出口の檻から対岸に二人が見たものは…“仲間を見殺しにするスターリン軍”
ラストは地上に出て部下を殺し再びマンホールを下りる中隊長、で幕。

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mimiccu
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