たたり(1963)

劇場公開日:1963年8月25日

解説

「ウエスト・サイド物語」のロバート・ワイズが制作並びに監督にあたったスリラー、もしくは恐怖映画である。原作はシャーリー・ジャックソン女史のベスト・セラー小説「丘の家の怪」で「私は死にたくない」などワイズ作品に協力したネルソン・ギディングが脚色した。撮影はデイヴィス・ボウルトン、音楽はハンフリー・シアール、特殊効果は「バグダッドの盗賊」のトム・ハワード。出演者はブロードウェイの舞台女優で、「エデンの東」やTVで活躍しているジュリー・ハリス、「チャップマン報告」のクレア・ブルーム、「戦雲」のリチャード・ジョンソン、「渚のデイト」のラス・タンブリンなど。

1963年製作/アメリカ
原題または英題:The Haunting
配給:MGM
劇場公開日:1963年8月25日

あらすじ

ニューイングランドの人里離れた寂しい地区に、大きな館がぽつんと立っていた。人々は「丘の家」と呼んでいるが、誰も住みつかないほどのいまわしい噂があり、持ち主の寡婦サナーソン夫人も、館に住む気持ちなど全くなかった。それほど、呪われた不吉な家だった。こんな家に借り手がついて夫人を驚愕させた。人類学教授ジョン・マークウェイ博士(リチャード・ジョンソン)で奇怪な幽霊屋敷こそ、心霊研究格好の場所と考えた。博士はこの心霊調査のため、10歳の時、不思議な経験を持ったというエレナー(ジュリー・ハリス)と、超感覚的な優れた感受力に恵まれた、セオドーラ(クレア・ブルーム)の30前後の女性2人を助手として選んだ。グループがこの建物で顔を合わせた最初の夜、女たちを超自然的現象の恐怖が脅かした。だがエレナーはその恐怖の中にも拒むことのできない魅力にとらわれた。翌日博士の夫人グレースが突然やって来た。その夜、この家の霊の巣食う所と目される育児質に1人で寝たが、夜半異様な胸騒ぎにエレナーが駆けつけると、夫人の姿がなく大騒ぎになった。博士をはじめエレナー、セオドーラ、ルークたちは館から庭と夫人を探し回った。行方は分からない。そのうち、この家に巣食う霊はエレナーにいよいよ迫ってきた。危険を感じた博士はエレナーをここから出すことにした。が、エレナーは孤独な家に帰りたくなかった。博士に無理矢理出された彼女は車を運転して庭を猛スピードで走り回った。そしてその前方に彼女は一瞬、夫人の姿を見た。急ブレーキ。車は横転、エレナーは死んだ。霊はついにエレナーを犠牲にしたのか・・。謎はついに解けることなく終わった。

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スタッフ・キャスト

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受賞歴

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映画レビュー

3.5 たたり

2026年1月24日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

何かが居る!・・・と言う雰囲気だけで、これ程見るものを凍り付かせる映画が他にあるだろうか?
確かにクドイ程の効果音が鳴り響いたり、クライマックスのシーンでは、ドアノブが回ったり、ドア自体がグニャグニャと変形したりはするものの、全ては登場人物たちの幻覚、錯覚の域を逸脱しない。
このオドロオドロシイ雰囲気はただごとではない。さすがはロバート・ワイズ!本当はミュージカル映画の巨匠なのでは無く、こちら側の人であるということを自ら見事に証明してみせた、とても野心的な映画だった。
「市民ケーン ('41)」の編集者としてスタートし、「The Curse of the Cat People ('44)」、「The Body Snatcher ('45)」等の低予算RKOホラーで鍛え上げた職人芸の集大成とも呼ぶのが相応しい作品だ。
映画は丘の上に聳え立つ幽霊屋敷を俯瞰で捉えたショットに始まる。続いて数分間の映像とナレーションのみで語られる屋敷にまつわる忌まわしい過去と惨劇の数々。現れては、謎の死を遂げて消えてゆくこの屋敷の住人たちの姿が、走馬灯のように映し出されていく。この生きているかのようなゴシック様式の屋敷が、まず「市民ケーン」のザナドゥを想起させるが、その後に続く上記シーンそのものが、「市民ケーン」の冒頭数分間のシーンを再生しているかのように酷似していることには本当に驚かされる。
見事なモノクロ撮影と、畳み掛けるような編集の妙味で、否が応でも惹きつけられるのだ。
時は現代に移る。超常現象の研究家マークウェイ博士(リチャード・ジョンソン)が調査すべく、この屋敷に乗り込もうとする。
超感覚を持った女性2人と男性1人を屋敷に招待し、計4人の調査団と言った趣だ。
十数年間と言う長期に渡る実の母親の看病により、自らの青春時代を棒にし、ほんの数ヶ月前にその母を失ったエレナー(ジュリー・ハリス)が、この映画のヒロインである。
幼少期から超感覚を持つ繊細な精神を持った女性であり、助けられなかった母親の死に関しても、自らの責任を感じている深く傷付いた女性だ。
エレナーには姉が1人おり、姉夫婦の家に間借りしていたが、冷たくあしらわれて住む家が無く、とうとう姉の車を拝借して、家を飛び出してしまった。住む家も何の財産も無いエレナーにとっては、マークウェイ博士から届いた招待状だけが唯一の頼りであり、この幽霊屋敷を目指す以外、行くべき場所が無かったのだ。
エレナーのモノローグで語られるこの移動シーンは、「サイコ ('60)」を想起させる。
そうこうしている内に、ニューイングランドの郊外の問題の住所に辿り着くが、巨大な門をくぐり抜けて、延々と車を走らせて屋敷に向かう辺りは、「レベッカ ('40)」だ。考えごとをしながら運転しているヒロインの表情が突然驚きに代わり、リアクション・ショットでヒロインの視点から捉えられる仰角の屋敷のショットは、前記ザナドゥと言うべきか、ベイツ・モーテルの裏手にある母屋か、或いはレベッカの大邸宅か?それはもうゴシックロマン全開の世界なのだが、単なるゴシック・ロマンの雰囲気とも異なったやはり怪奇なムード、家自体が生きているように感じられるのだ。流れる調べも、どことなくジェームズ・バーナード的であり、ハマー・ホラーの影響も受けているようだ。
同じく超感覚を持つものの、もっと現実的に生きている女性セオドーラ(クレア・ブルーム)、ドライで現実的な若者(ラス・タンブリン)、マークウェイ博士の計4人による屋敷での生活が始まる。
エレナーはセオドーラと表面的には息が合い、すぐ打ち解けるものの、あまりにも繊細であるが故に、ちょっとしたことから言い争いが絶えない。この2人の女性を中心とした不安定な生活シーンが更なる恐怖を煽る。やがて時間が経つにつれて、エレナーは次第にマークウェイ博士に自らの気持ちが引き寄せられていることを自覚するようになる。そして彼と結ばれることだけが彼女の夢であり、自らがこの世で生きていける唯一つの存在理由となっていた。
ところが或る日、超常現象などには、何の興味も持たない別世界の住人であるマークウェイ博士の妻(ロイス・マクスウェル)が、夫の住所を探し当て、或る夜、屋敷に泊まり込んでしまう。しかも最も忌まわしい過去を持った部屋に。
マークウェイに妻が居ることを初めて知ってしまったエレナーは、絶望感に襲われる。それまで辛うじて保っていた精神状態の均衡がついに一気に崩壊してしまったのだ。そしてそれこそが、長い間、この呪われた屋敷が、一番の目当てであるエレナーに望んでいたものだった。
過去の惨劇の歴史を塗り変える程、怖ろしい夜が始まった。しかし、それは屋敷の呪いによるものなのか?或いは人間たちの情念が生み出したものなのか?・・・
「たたり」は、従来のホラー映画、怪奇映画のジャンルを逸脱した不安定な1960年代を象徴する優れた異常精神映画(?)の系譜に収めるべき、極めて重要な作品だった。

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ナオイリ