戦争のはらわたのレビュー・感想・評価
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昔も今も変わらぬ衝撃・・・戦争の狂気を渾身の映像で描き出す怪作
サム・ペキンパーにとって初の戦争映画。まさに彼にしか成しえない火薬の量で、冒頭から爆破に次ぐ爆破。最初は地響きや小刻みな編集を体全体に感じながら映画的なカタストロフィを味わっていたとしても、それらは徐々に限度を超えた異様さ、そして恐怖となって観客の心をじわじわと締め付けていく。徐々に近づいてくる砲撃は死神が扉を叩く音のよう。ここは地獄だ。しかばねばかり。そして出口がない。
そんな中、ジェームズ・コバーン演じる老兵はどんな状況でも冷静沈着。部下の信頼も厚い。かといって皆を救う英雄ではない。ナチス・ドイツ側の視点で戦場を描くという異色ぶりもさることながら、ペキンパーはもちろん正義や悪を超えた論点で、精神的、肉体的に追い詰められていく「戦場の普遍」を紡いでいるのが特徴的だ。上官にさえ毅然と物申すコバーンの姿は、ある意味、ペキンパーが手がけてきた「最後の西部劇」を地でいく存在なのかもしれない。
トラウマ級戦争映画
あの男の敗北を喜ぶな 諸君
社会が立ち直り
平和になっても
彼を悩ませたメス犬が
また発情してるぞ
---ブルトルト・ブレヒト---
最初は英語とアメリカ人にしか見えない俳優陣に違和感を覚えていたのだが、途中から全く違和感がなくなる不思議な映画。戦争なんて敵・味方がどうあろうと関係ない。戦争なんて所詮は人殺しなんだ。前半の凄まじい戦闘内容や病院で傷ついた兵士たちのグロテスクなシーンが反戦映画として確立している。
ロシア少年兵を助けたり、ゲイのようなキスシーン。そして、女性だらけのロシア兵など奇妙な部分もあったり、土まみれと塹壕の中の暗い映像のおかげで人物関係やストーリー自体も把握しにくい。また、敵の姿も中々見えてこないと感じたあたりからこの映画の本質が見えてくるのです。戦争中毒、狂気、裏切り、復讐と、戦争のマイナスなテーマがいっぱい詰まっている、とにかく強烈な映画だ。
【2004年12月金沢映画祭(だったと思う)にて鑑賞】
なんという素晴らしい邦題だろう! 本作のテーマを見事なまでにえぐっている
何故ドイツ軍を描くのか?
英国、西ドイツ合作映画だとしても
何故米国人監督なのか?
英国人でもなく、米国人監督が撮るのか?
どうしてサム・ペキンパーが担当するのか?
どうしてこれほどまでにむき出しの戦争の現実を執拗に描こうとしているのか?
何故戦争のプロの下士官兵とプロセイン貴族の将校との対置構造なのか?
何故ホモセクシャリズムが重奏音のように通低しているのか
なぜに美少年が冒頭とラストシーンに登場するのか?
何故ソ連女性兵士のシーンはあるのか?
何故男性器を噛みちぎられるのか?
何故主人公は美しい看護婦との家庭を取らず、なぜ原隊に復帰するのか?
あの地獄の東部戦線に戻ってしまうのか?
映像にはすべて意味があるのだと思う
戦争の悲惨、凄惨な実相を執拗に描くことで反戦メッセージにする?
そうではない
そんなものはペキンパー監督の頭にはこれっぽっちもない
思い浮かぶのは「相対的」という言葉だ
戦争の圧倒的な暴力によって、文明の皮膚がすべて剥ぎ取られた時に、どのような世界があるのか
それが本作のテーマなのだと思う
宗教、歴史、思想、性的な規範、正邪の概念
そんなものはすべて崩壊した世界
人間が頼る絶対的な基準が無くなった世界
すべて相対的化した世界
つまり生き残びるためならなんでもして良い世界
それを表現しようとしているのだ
それはドイツ軍だからではない
英軍でも米軍でも起こりうることなのだ
戦争中の日本軍にも起こった
将来、自衛隊にも起こりうることだ
だから米国人の監督が、ドイツ軍の物語を、英国人の主演で、英語の台詞で撮るのだ
戦争による文明の崩壊は普遍的にどこの国に於ても起こりうる
それを示そうとしているのだと思う
戦争のはらわた
なんという素晴らしい邦題だろう!
本作のテーマを見事なまでにえぐっている
まあ、こういう奴らっているよね
鉄十字勲章を家族に見せたい、使えない、間抜け貴族の大尉シュトランスキー
こういう男、職場には必ず一人はいます。
一方、シュタイナーは、ブラント大佐に「彼は激戦地にいる。そこを探せ」と言われるほど頼りになる伍長。
シュタイナーみたいなのも職場にはいるもんです。たいてい部下に好かれてます。
ブラント大佐を補佐するキーゼル大尉は、新任シュトランスキーに「シュタイナーって誰?」と訊かれてこう答えます。
「まあ、君とはそりが合わんだろう。しかし、あの手合いが居なくなったらお終いだ」
上司に媚びる気はない。名誉にも興味ない。戦争も軍隊組織も嫌い。でも、与えられた任務はきっちり果たすシュタイナー。
皆に慕われるマイヤー少尉。白兵戦で戦死する直前にシュタイナーに忠告する。
「やつら(シュトランスキー)は普段は上品だが、敗走しはじめたら気を付けろ。本性がむき出しになるぞ」
戦争映画なんだけど、「毎日の職場にこんな奴らいるよね」と思ってしまう映画でした。
いや、記録映像で見せるオープニングとエンディングは衝撃的。観る人に「これは戦争の映画ですよ」と腹をくくらせます。
ドイツ映画ということを知らないと混乱するかも
男達の生きざまに胸を打たれる堂々たる名作カルト
第2次大戦下で苦戦するドイツ軍。シュトランスキー大尉は黒十字章を獲得する野望に燃えて激戦のロシア戦線に自ら志願して着任。そこには百戦錬磨の小隊を率いるシュタイナー伍長がいた。名誉欲に駆られるシュトランスキーに対してシュタイナーは上官に対しても物怖じせず部下からの信頼も厚い叩き上げ。二人は事あるごとに対立するがシュタイナーが重傷を負って戦線を離脱、そしてある戦闘をきっかけにシュトランスキーは策略を講じるが・・・。
戦争カルト映画と呼ばれるだけあって能天気な童謡をバックに凄惨な戦場が映し出されるオープニングは確かに強烈にシュールですが、そこで油断しているとすぐにジェームズ・コバーンが演じるシュタイナーのカッコよさにすぐにボディブローを食らいます。そもそもドイツ軍の苦戦を描いていること自体が当時でも相当異色だったと思いますが、ドイツ軍≒ナチというような単純構図を排して、様々な思想を持つ者たちがそれぞれの正義と名誉に命を懸けていることをこれでもかとエモーショナルに描写、もう15分経ったくらいから泣けて泣けてしょうがないし、シュタイナーが怒りを爆発させるクライマックスでは魂が震えます。
こんな名作を知らずによくもまあ生きてきたなと恥ずかしくなりましたが、それこそ星の数の映画がこの名作の影響下にあることが手に取るように解りました。『機動戦士ガンダム』も正にそれですし、そう考えると真の名作とはそれを観ていない人間にすら深い感銘を与えるものなのだと知りました。ちなみにこれデジタルリマスター版なので塵ひとつ映り込まない流麗な映像が圧倒的に美しかったです。
独特の編集、リズム
続きが見たい
ご都合主義があまりない戦争映画
やめときゃよかった…
随分前に観てるのだけど、そうか、英語しゃべるドイツ軍の映画だったか...
デジタルリマスターか だが 残念ながら スクリーンが小さく 音はリ...
しびれた
鉄十字章
言葉で言い表せない!
公開ってマジか?劇場で?マジマジマジ…?
いつだったかな、テレビの洋画劇場でみてものすごく衝撃をうけた。
軽くトラウマになっている
最後が凄惨すぎてさ。すごい映画みちゃったよと
いまでも戦争映画ベストを聞かれたら五本の指にはいる。
やっぱしコバーンがカッコいいけど小隊の連中みんないい。
あと、憎まれ役の大佐だっけ?やたらと勲章にこだわる男。昔はただ嫌いだったが、なんか哀れとも感じるようになった。
ペキンパー監督といえばハードボイルドアクションで有名だが、この映画から静かに伝わってくる戦争のやりきれなさ
反戦の怒りみたいなものが全体から感じ取れてやっぱり傑作だぜえ
しかし、公開かあ。劇場公開だとしても東京とかの一部だろなあ。どうしよ、ぶっちゃけスクリーンでみてはみたい。ぶっちゃけなくてもみてみたい
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