ジュリア

劇場公開日:

解説

アメリカ演劇界の女流劇作家として知られるリリアン・ヘルマンが74年に出した回顧録(「ジュリア」パシフィカ刊)の映画化で、ヘルマンに絶大な影響を与えた女性ジュリアとの美しい友情とハードボイルド作家ダシェル・ハメットとの愛が描かれる。製作指揮をジュリアン・デロード、製作はリチャード・ロス、監督は「ジャッカルの日」のフレッド・ジンネマン、脚色を「ボビー・ディアフィールド」のアルビン・サージェント、撮影は「華麗なるギャツビー」のダグラス・スローカム、編集はウォルター・マーチ、音楽はジョルジュ・ドルリューが各々担当。出演はジェーン・フォンダ、ヴァネッサ・レッドグレーヴ、ジェースン・ロバーズ、マクシミリアン・シェル、ハル・ホルブルックなど。

1977年製作/118分/アメリカ
原題または英題:Julia
配給:20世紀フォックス
劇場公開日:1978年6月17日

ストーリー

アメリカの有名な劇作家リリアン・ヘルマン(ジェーン・フォンダ)が処女作「子供たちの時間」を書いていた34年ごろ、彼女は推理小説家のダシェル・ハメット(ジェイソン・ロバーズ)と同棲していた。仕事がはかどらず、癇癪を起こすことが多いリリアンをダシェルは絶えず励ましていた。この頃、リリアンは懐しい幼友だちのジュリア(ヴァネッサ・レッドグレーヴ)を思い出していた。ジュリアは、金持ちの上流家庭に生まれた美しい娘であったが、身内の人たちを嫌い、特に金持ちの祖父母を嫌っていた。早くから文学や詩に親しんでいたジュリアは、引っ込みがちなリリアンをリードし、年頃になった2人は互いに将来に対する希望などを話し合うようになり、友情と愛情は深まっていった。オックスフォード大学に入ったジュリアは、その後ウィーンへ行き、フロイトから教えを受けることになったが、ここで反ナチの地下運動に関係することになる。風のたよりにジュリアの動静を知っていたリリアンは、仕事がはかばかしくないまま、ダシェルの勧めでパリに行き、そこで劇を書き上げようとした。パリに着いたリリアンは、ウィーンで起こった暴動で200名の人が殺されたという新聞記事を読みウィーンに行く。ジュリアは入院し、全身が包帯で巻かれており、ベッドに横たわったまま口をきかなかった。リリアンは、ジュリアが何で手術をしたのかも解らずに、パリに戻ることになった。35年、アメリカに帰ったリリアンは、ダシェルの勧めで劇を書き、それが大ヒットする。37年、モスコーの演劇フェスティバルに招かれたリリアンは、途中パリでヨハン(マクシミリアン・シェル)という若い男に、ベルリンにいるジュリアに5万ドルの金を届けることを頼まれ、不安を感じながらも引き受けた。フランスからドイツへ行く列車の旅はひどく不安なものだったが、途中乗り合わせた2人の女などジュリアの仲間の支援をうけながら無事にベルリンのジュリアのもとに着く。再会したジュリアは義足をつけ、松葉杖に頼る身となっており、手術をした時の事を知る。5万ドルの金は無事にジュリアの手に渡るが、そこで意外なことをジュリアから聞かされる。ジュリアには女児がおり、フランスの田舎のパン屋に預けてあるという。そして、いずれ義足を作るためにニューヨークへ帰るが、その時子供も連れていき、以後リリアンに育ててもらいたいと言うのだった。しかしジュリアはニューヨークに行くことなしにナチに殺され、リリアンは子供を引き取りにアルサスのパン屋まで行くが、反応はむなしく、子供は見つからなかった。その後、ニューヨークのジュリアの祖父母の邸を訪ねても、むなしく終わった。ジュリアを失い、子供を見つけることもできなくて悲しむリリアンを、ダシェルはそっと慰めようとしたが、彼女のジュリアの身内を憎む心はついまでも消えなかった。

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スタッフ・キャスト

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受賞歴

第35回 ゴールデングローブ賞(1978年)

受賞

最優秀主演女優賞(ドラマ) ジェーン・フォンダ
最優秀助演女優賞 バネッサ・レッドグレーブ

ノミネート

最優秀作品賞(ドラマ)  
最優秀助演男優賞 ジェイソン・ロバーズ
最優秀助演男優賞 マクシミリアン・シェル
最優秀監督賞 フレッド・ジンネマン
最優秀脚本賞 アルビン・サージェント
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映画レビュー

4.0仙台東宝で鑑賞

2024年5月26日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

マクシミリアル・シェルが目玉焼きを食べるシーンが美味そうに見えた。

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ムーラン

4.5再鑑賞を誘う魅力が…

2022年8月1日
スマートフォンから投稿

キネマ旬報ではビスコンティの「家族の肖像」についで第2位と、
ジンネマン監督作品としては
最高位にランクされた。

ジンネマン監督はこの作品を通じて
何を伝えたかったのか。
ジュリアは殺され、
彼女の子供は見つからず、
彼女の実家からも見捨てられ、
そしてリリアン自身、ダシールを失い、
一人孤独感漂うボート上での
魚釣りのシーンで終える。
リリアンの人生、全てにおいて
寂寥感に苛まれ続けたかのような
描写の作品だ。

人生は、
友人を失う等、数々の喪失がつきまとい、
それでも人生は続く、と語っているのか、
私にとって、まだまだこの作品への理解が
進んでいない思いがある。

この作品、ジェーン・フォンダが
主役として出ずっぱりだが、
登場時間のさほど長くない
ヴネッサ・レッドグレーヴの
存在感が有り過ぎ、
フォンダの成長譚を置き去りにした
感じもあり、
正に“邦題”通りの
レッドグレーヴ/ジュリアのための映画
のようにさえ感じさせられてしまうほどだ。

さて、メリル・ストリープは後年、
やはりナチスによる被害者役を
演じることになる「ソフィーの選択」で
アカデミー主演女優賞を受賞する。
「ジュリア」の原作に
主役二人の同性愛的要素が高いのか
私には不明だが、
彼女と彼女の家族にまつわるシーンが、
この映画として
必ずしも必要だったとは思えなかった。

いくつかの納得のいかないシーンこそ
あったが、
しかし、ジンネマン監督作品として
「ジャッカルの日」と並ぶ
サスペンス映画の傑作と思うと共に、
なんとも言えない緊迫感に溢れ、
スタッフの平和への希求も感じながら、
己の人生に係わった人々を
自分の心にどう留め置くか等、
早世した親友に想いを寄せさせる
この「ジュリア」には、
「ジャッカル…」以上に
再鑑賞を誘う魅力がある。

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共感した! 5件)
KENZO一級建築士事務所

4.0女性の友情を美しくまとめた”女性映画”の決定版にして、ジンネマン監督の熟練の演出美が最良

2020年4月18日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

ベトナム戦争が混迷の末終わりを遂げてアメリカの威信が失墜した同時期に、自立した女性が主人公のアメリカ映画が顕在化した1970年代後半の、所謂”女性映画”を代表する傑作。フレッド・ジンネマン監督は、代表作「山河遥かなり」「真昼の決闘」「地上より永遠に」「尼僧物語」「わが命つきるとも」「ジャッカルの日」で分かるように、シーンやシークエンスの意図が明確な骨格の確りした映画文体が特徴の堅実で正攻法の演出をする、一種の完璧主義者の芸術家だった。その良質の特徴は、この作品でも完成度高く表現されていて、ジンネマン監督の最高傑作と云えると思う。それは、女性同士の友情を描いて、その美しさが他に類を見ないからであり、主人公リリアン・ヘルマンの回想録を脚色したアルビン・サージェントのドラマ構成が見事な盛り上がりを創造しているからだ。その最もたるものが、ジュリアの政治運動資金をリリアンがベルリンで手渡すシークエンスで、その前のサスペンスの緊張感が生む余韻が素晴らしい効果を生んでいる。堅実さと「ジャッカルの日」で見せたサスペンス技巧が溶け合う、ジンネマン監督の熟練の演出美が素晴らしい。また、リリアンのジェーン・ホンダとジュリアのバネッサ・レッドグレープの演技力と、それを支える名脇役ジェースン・ロバーツとマクシミリアン・シェルの滋味も特筆すべきもの。「裸足のイサドラ」と並ぶレッドグレープの名演が個人的には好感度高いが、4人すべてが上質の演技で重厚なアンサンブルのカルテットを奏でる。フォンダとシェルが惜しくもアカデミー賞を逸して勿体ないと思えるほどに感心せずにはいられなかった。これは、映画と演劇に長けた人ほど楽しむべき作品だと思う。
ならば何故もっと評価しないのか。上記の賛辞とは別に、完璧なものが持つ、他方からの不満が生まれる贅沢な注文であり、我儘な要求が発生する創造の辛さがある。つまり、第二次世界大戦の背景が美しいシーンとして再現され、女性同士の美しい友情と男女の慈しむ愛情が並行して巧みに描かれた良さとは別に、リアリズムのもつ感覚的な味わいがジンネマン監督の映像作りから除外されたことへの不満だ。または、優れた人間をヒロイックに描く理想主義の作為に抱く人間味臭い反感かも知れない。芸術には破綻が必要とする、個人的信条も少なからずある。これは優れた作品に付きまとう答えのない追求であり、だからこそ面白いのではあるが。
    1978年  10月26日  ギンレイホール

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Gustav

4.0ファシズム

2019年3月28日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

 アメリカ女流劇作家のリリアン・ヘルマンの回顧録。時代はファシズムが横行している第二次世界大戦前夜だ。リリーとジュリアは2人とも裕福な家庭で育てられていたが、ジュリアはウィーンへ渡ってから労働者の運動に参加するようになった。なかなか会えない。久しぶりに再会したのはジュリアがデモの弾圧によって重傷を負ったとき。しばらくは執筆活動に専念していたが、リリーの戯曲が評価され、またもやヨーロッパへ。

 ヨハンという男に声をかけられジュリアの金を活動家に渡してほしいと危険な任務を頼まれてしまう。ここから列車で移動するリリーが凄い。金の受け渡し方法は一切伝えられず、まるで伝言ゲームのように運搬は進む。同じコンパートメントで同席だった女性も仲間だったし、きょろきょろしながら恐怖と不安におののく姿。しかし任務を果たさないとジュリアに会えない。そんな切なさが伝わってくる。

 ジュリアが義足だったことにも驚いてしまうが、彼女の凛々しさはリリーを励ましてくれるような。ジェーン・フォンダの心をそのまま共有できるかのような錯覚に陥るのです。戦争の描写はないけど、彼女たちがユダヤ人だったこともあって恐怖感も増す。ジュリアの死が伝えられ、ロンドンへ渡っても彼女の存在ごと抹殺されたミステリアスな状況。託されたリリーと名付けられた娘も見当たらないし、大切な思い出すら葬り去られた感覚に・・・

 夫にも先立たれ、残りの人生を孤独なまま過ごさなければならないリリアン・ヘルマンを想像すると、じわじわと悲しみが伝わってくる・・・そんな映画だ。

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kossy