シシリーの黒い霧

劇場公開日:

解説

シシリー島に古くからある秘密結社マフィアの中心人物サルバトーレ・ジュリアーノの暗殺事件をセミ・ドキュメンタリータッチで描いた社会劇。脚本はスーゾ・チェッキ・ダミーコ、エンツォ・プロヴェンツァーレ、それに「挑戦」の監督フランチェスコ・ロージが執筆、ロージが演出した。撮影は「夜」のジャンニ・ディ・ヴェナンツォ、音楽は「十七歳よさようなら」のピエロ・ピッチオーニが担当。出演者はサルヴォ・ランドーネとフランク・ウォルフのほかは現住民たちが参加している。六二年度ベルリン映画祭監督賞、銀リボン最優秀監督賞、同黒白撮影賞、音楽賞を受賞。

1961年製作/イタリア
原題または英題:Salvatore Giuliano
配給:東和
劇場公開日:1963年9月5日

ストーリー

1950年7月5日。シシリー島(シチリア島)のある民家の中庭でサルバトーレ・ジュリアーノという三十歳の男の、射殺死体が発見された。話は五年前にさかのぼる。当時シシリー島には独立運動が渦まき、独立義勇軍がマフィアや地主勢力と結んで、ファシスト政府と戦っていた。義勇軍は匪賊サルバトーレ・ジュリアーノ一味を味方にし、独立達成の時は彼らを特赦することを約束していた。が、連合軍上陸と同時にイタリア解放委員会第一次政府は、義勇軍を弾圧した。そして五年後の今、中庭ではジュリアーノの検死がつづく。彼は誰に殺されたのか。再び話は1946年。政府軍はシシリー独立義勇軍を攻撃した。だがジュリアーノは最後まで戦った。そしてシシリーには自治が認められた。しかしジュリアーノ一味は匪賊とみなされ、特赦されなかった。そして現在、ジュリアーノの母は息子の死体にとりすがって泣く。「彼を誰が殺したか!」と。再び1949年。第一回シシリー自治政府の選挙は人民連合派の勝利に帰した。共産党はメーデーを祝う。その時、ジュリアーノ一味が集会を銃撃した。そして今。ジュリアーノの死をめぐる裁判では彼の片腕ピショッタ(フランク・ウォルフ)が出廷し、奇々怪々な当時の情勢が明るみに出る。誰が彼にメーデーを襲撃させたか。そして誰が、彼を殺したのか。話はもう一度1950年に。マフィアは憲兵隊と組んでジュリアーノ一味を追いつめた。そして憲兵隊はかくれ家を襲いジュリアーノを殺した。死体は中庭に引出された。そして現在。法廷で終身刑をいい渡されたピショッタは無実を叫ぶ。だが、ジュリアーノ殺しは一体、何のために、誰の手引きでなされたのか。十年後の1960年に、当時を知るマフィア一味の一人が群衆の中で殺された。そして未だに、ジュリアーノ殺しの真相は解っていない。

全文を読む(ネタバレを含む場合あり)

スタッフ・キャスト

全てのスタッフ・キャストを見る

受賞歴

詳細情報を表示

関連ニュース

関連ニュースをもっと読む

映画レビュー

4.0シチリアの複雑さを鋭く描くネオレアリズモ

2020年4月17日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

フランチェスコ・ロージ監督の出世作。物語は、1950年のサルバトーレ・ジュリアーノという若い男が射殺死体で発見されることから始まる。彼は第二次世界大戦末期からシシリー島の山に潜んで略奪や殺人を犯していた山賊のボスであった。この山賊グループとシチリア独立義勇軍、そしてマフィアと警察の政治的カオスをドキュメンタリータッチで硬質に描いた作品。20代半ばにヴィスコンティの「揺れる大地」で助監督を務めたロージ監督は、ネオレアリズモの継承として、現地シチリアの素人の人達を民衆描写で採用している。ラストはジュリアーノを裏切ったと思われるピショッタの法廷シーンが映画的な盛り上がりを見せ、戦争に翻弄された人間の痛ましさ、社会の在り方をクローズアップして終わる。

マイケル・チミノ監督の「シシリアン」1987年 もサルバトーレ・ジュリアーノを主人公にしたアメリカ映画で、原作者は「ゴットファーザー」のマリオ・プーゾ。ヴィトー・コルレオーネとジュリアーノは実際に交友があったという。ただし、ロージ監督は、ジュリアーノを英雄視していないし、物語の主要人物でも主人公ではない。敢えて彼の言動を明確に描写せず、当時の再現ドキュメントの客観性で対象を見つめ、シチリアの複雑さを映像に刻む。

ヴィスコンティの「山猫」で描かれたイタリア統一まで、イタリアはいくつかの小国に分裂していたから、70年後の混乱にシチリアの独立運動があったことは必然なのかも知れない。シチリア人の先祖が北欧のバイキングぐらいの知識の拙生には、想像できない統治政治の問題が多いのだろう。多くのイタリア映画を観て、日本と共通する四季の気候風土や家族愛の強い人柄など親しみを持つのだが、政治腐敗を描く映画も多い。この家族愛が歪んだ利己主義になると、マフィアが生まれる怖さを秘めている。

コメントする (0件)
共感した! 0件)
Gustav

4.0シチリアの戦後

2018年9月23日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

怖い

連合軍により解放されたイタリア、シチリアではこれを機に独立闘争が始まり、義勇軍や山賊が入り乱れることに。
かなりの自治権が認められ、独立運動は終結、山賊は誘拐ビジネスに転換する。
実権を握ったのは権力者というよりマフィアと地主で、邪魔者は消せ、が日常化していく。
シチリアは怖い。

コメントする (0件)
共感した! 0件)
いやよセブン

4.0亡命監督がシビアに見る「 山賊の終わり方」

2018年9月20日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル
ネタバレ! クリックして本文を読む
コメントする 1件)
共感した! 0件)
jarinkochie

2.0超難解。意味不明。ときどきドンパチが始まるが、何が何のために戦って...

2018年3月10日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

超難解。意味不明。ときどきドンパチが始まるが、何が何のために戦っているのかさっぱり分からず。主人公であろうジュリアーノって奴がどいつなのかもまるで分からず。
イタリアの歴史について事前知識が必要不可欠。
年代も行ったり来たりしてもはや笑えてくるくらい訳ワカメ(笑)
皆さんの感想も概ねそんな感じで、自分だけじゃないとそこだけ安心した。

コメントする (0件)
共感した! 1件)
はむひろみ