山河遥かなり

劇場公開日:

解説

スイス、チューリッヒのプレゼンス・フィルムがMGMに提供した1947年作品で、製作は「ジープの4人」のラザール・ベクスラー。事実に基づいてリヒアルト・シュヴァイツァ(ジープの4人)とダフィット・ヴェヒスラァが脚本を書き下ろし(48年アカデミー賞)、「地上より永遠に」のフレッド・ジンネマンが監督した。撮影のエミル・ベルナ、作曲のロバート・ブランは「ジープの4人」と同じスタフ。出演者は「地上より永遠に」のモンゴメリー・クリフト、舞台出のアリーン・マクマホン、「北の狼」のウェンデル・コーリー、メトロポリタン・オペラのスタア、ヤルミラ・ノヴォトナ、この映画のために発見されたチェコの少年イファン・ヤンドル(48年・アカデミー特別賞)、メァリイ・パットンらである。

1949年製作/アメリカ
原題または英題:The Search
配給:MGM映画会社
劇場公開日:1954年6月4日

ストーリー

第2次大戦直後、アメリカ占領下のドイツ。この地の国連救済所にナチの収容所から救い出された一群の子供たちが送られて来た。かれらの中に何を聞かれてもドイツ語で「知らない」と答えるだけの少年がいた。彼はカレル・マリク(イファン・ヤンドル)といい、チェッコの幸福な家庭に育った。だがナチ占領下に家族は離散し、カレルも母のハンナ(ヤルミラ・ノヴォトナ)から無理やりに引きはなされた。カレルはその悲しみに心はうつろとなり、ついに喋ることも忘れてしまったのだ。特に休養を要するカレルらは、赤十字の病院車で特別収容所へ送られることになった。だがかれらは病院車に乗れば毒ガスで殺されるというナチ時代の経験で、恐怖にかられ途中脱走を計った。カレルはラオウルという少年と河に逃れ、ラオウルは溺死したが、カレルは帽子を流しただけで無事身をかくした。その頃、カレルの母ハンナは愛児をたずねてあてどもない旅を7ヶ月もつづけていた。夫も娘もナチに殺され、のこされた希望はカレルだけであった。一方、ひとり放浪するカレルは、アメリカ兵ラルフ・スティーヴンスン(モンゴメリー・クリフト)に拾われた。初めカレルは激しく抵抗したが、ラルフの温い世話で次第になついていった。愛児を探しあぐんだハンナは国連救済所を訪れ、そこの世話係マレイ夫人(アリーン・マクマホン)から河で発見されたというカレンの帽子を見せられ、気を失って倒れてしまった。カレルは次第に正常さをとり戻しラルフが根気よく英語を教えたので簡単な会話もできるようになった。そこへラルフと同居している兵隊フィッシャーの妻子が米国からやって来た。カレルはフィッシャー一家のむつまじい様子を見て、自分にも母がいたことを想い出し、一途におもいつめて母を探しに家をとび出した。だが翌日、探しに出たラルフはカレルを見つけ、母親は死んだのだといいふくめ、米国へ一緒に連れ帰る約束をした。ハンナはマレイ夫人たちの親切な介抱で元気をとり戻し、そこの子供たちの世話をしていたが、殆どのぞみがないと知りつつも再び愛児を探す旅に上らずにはいられなかった。ハンナが停車場へ向ったすぐ後に、カレルがラルフに伴われて救済所へやって来た。ラルフは明日帰国するので、カレルに渡米許可がおりるまで預ってもらうためだった。マレイ夫人はカレルを見て、ハンナの愛児であることを知り、停車場へ駆けつけた。列車は丁度出発した後だったが、大ぜい降り立った子供たちの列の中にハンナの姿があった。ハンナは悲惨な子供たちの姿を見て救済所に止まる決心をしたのだ。カレルが母親と無事再会できたことはいうまでもない。

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受賞歴

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映画レビュー

2.0名匠フレッド・ジンネマン監督、後年の名作の域にはまだまだだったか…

2022年7月25日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

何故か急に
フレッド・ジンネマンが恋しくなり、
未見のものも含めて5作品をまとめて
レンタル等をして鑑賞することにした。
ネット情報では
この映画は監督の6作目のようだが、
評価の高い部類だったので
彼の初期の頃の監督作品として観てみた。

私が良く解らないのは、何故
米兵がこの子に強い想い入れを持つのか、
戦後に占領地の子供を養子にして
米国本国に連れ帰ったとの話を
聞かないこともないが、
私にはなかなか理解が及ばない。
ある意味、彼に、
米国が世界の警察国家たるはしりとしての
象徴的意味合いを持たせたのだろうか。

後々「地上より永遠に」「わが命つきるとも」
「ジャッカルの日」等の
名作を見せてくれたジンネマン監督、
ラストで母が列車に乗らない結果、
子に会える設定の再会シーンには
涙を誘われたものの、
子供の心の癒しと母親の子供探しの
それぞれのエピソードの
お互いの絡み構成にはたどたどしさも感じ、
まだまだ発展途上の演出との印象だった。

最近はこの手の映画を観ると
ウクライナのことが思い出されるが、
この作品冒頭の戦災孤児の移送シーンには、
ウクライナでも同じ状況が
生み出されているのではと想像してしまい、
プーチンの犯罪がいかに重いものかを
改めて感じさせられる。

尚、近年、
モンゴメリー・クリフト出演作品としては、
「赤い河」「陽のあたる場所」「私は告白する」
「終着駅」と観てきており、
彼は“悩める男”を演じることの
多いイメージなのだが、45歳で早世した。
高齢期の“悩める男”を、
どう演じてくれたかと想像すると
残念な想いだ。

この後、
クリフトが再度出演した「地上より永遠に」
も含め、製作年順に「ジュリア」までの
ジンネマン監督4作品を観る予定。
彼の演出力アップを認識出来るような
鑑賞になったら嬉しいのだが。

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KENZO一級建築士事務所

4.0ハリウッドだから仕方ないが。

2022年5月2日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル、VOD

偽善と言われようか、親子の絆を描いた良い映画だと思う。諦めずに生き抜く事が大事だと僕は思う。ハリウッドだから仕方ないが、終わり方はやはり、大団円でないと駄目。
モンゴメリー・クリフトって僕と誕生日が一緒だと親父が教えてくれた。我が親父のコレクションから。初めて見た。

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マサシ

4.0分かっていても泣かされる上手い演出

2021年11月27日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

ラスト、母と息子には何も伝えずに再開シーンを演出する連合国救済機関責任者アリーン・マクマホンの姿が心憎い。ハッピーエンドはわかっていても泣かされる上手い演出で、強く感動させられた。

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共感した! 2件)
Kazu Ann

3.5ジンネマン監督の正義感と焦燥感

2020年5月4日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

ナチスの迫害を受け戦争孤児となった少年とアメリカ兵の物語で、大戦後のドイツの混迷を証明する映画。ジンネマン監督が祖国ドイツの悲惨な姿を記録映画のように描いたリアリズム。大人たちの善意の行動が理解されず、怯え慄く子供たちの実態が痛々しい。ジンネマン監督の表現者としての正義感と焦燥感が交差して感じられる、実質的な処女作にあたるもの。堅実で生真面目な映画監督でした。また、モンゴメリー・クリフトの初々しい演技が記録されています。アメリカの男優では数少ない、繊細で翳のある個性派俳優でした。
同時にアメリカ映画のヒューマニズムをプロパガンダする硬さがあるのも事実で、映画としての評価は好みに左右されそうです。

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Gustav