「人が真に生きるとは?」生きる(1952) しゅうへいさんの映画レビュー(感想・評価)
人が真に生きるとは?
DVDで2回目の鑑賞。
原案(イワン・イリイチの死)は未読。
これまで堅実に仕事をこなして来たが、「何も成していない人生だったのでは?」と気づいた時、苦悩する真面目気質の主人公・渡辺氏の姿はあまりにも悲惨で、これまでやったことの無い夜遊びに手を出すなど、その迷走に心が痛みました。
息子夫婦にあらぬ疑いを掛けられて冷たい態度を取られるところも絶望を加速させていくようでした。
男手ひとつで育て上げた息子にそんなことを言われるだなんて、想像もしていなかったことでしょう。
悲嘆に暮れる中で出会った同僚の事務員・とよとの交流を通して、「何か出来ることがあるはずだ」と成すべきことを見出し、カフェを飛び出して行く場面が印象的でした。
階段を降りる渡辺氏に「ハッピーバースデー」が重なり、彼の新たな誕生を象徴する演出に唸りました。
人生の終わりに生き甲斐を見つけた渡辺氏のエネルギッシュに活動する姿に涙を禁じ得ませんでした。一切の忖度をせず活動した結果、公園整備は完成の運びとなりました。
その新公園のブランコで彼は生涯を閉じることに。
葬儀の席で同僚や上役の面々が渡辺氏の情熱的な活動ぶりを回想。ある者たちはいたたまれなくなって退席し、ある者たちはその働きを見習おうと心に誓っていました。
ですが翌日にはこれまで通りの「公務員」の姿が。
ひとりは怒りに立ち上がるも、雰囲気に呑み込まれてしまう始末。世の中そんなもんなのだろうかと、かなり世知辛さの残るエンディングに考えさせられました。
[余談]
お役所仕事への批判は納得出来るところが多く、実態は半世紀以上経っても変わらないのかと呆れるばかり。「真の公僕とはなんぞや?」。公務員のみなさんは渡辺氏を見習って!
※修正(2024/06/15)