「筋書は同じでも…」荒野の用心棒 すっかんさんの映画レビュー(感想・評価)
筋書は同じでも…
〇作品全体
黒澤明監督作『用心棒』を参考…というかほぼパクったようなストーリーだけど、画面から受ける印象は相当違う。それは画面からあふれ出る「ギラつき」が大きな役割を担っているからだと感じた。
『用心棒』は黒澤明の名前が既に売れたころの作品で、物語としても時代劇としても、腰の座ったような映像の面白さがある。一方でアクションはド派手、というケレン味もあって、そのコントラストが印象に残る作品だ。
一方で本作。主人公・名無しの男の性格は腰が据わっているけれど、西部開拓時代という北米の黎明期といえる時代で、名無しの男が訪れる街全体から「これから」のギラつきを感じるのが魅力だ。銃撃戦も常にド派手で、名無しの男が捕まってからの急展開するストーリーを含めて、そのギラつき感はあふれ続けている。
そして特に「ギラつき」を感じるのは、登場人物たちの瞳のアップショットだ。クリントイーストウッド演じる名無しの男の鋭い瞳、そして対立する二つの勢力が相手を睨むときの眼光。風によって舞う砂埃や日差しを受けて小麦色に光る肌と汗。『用心棒』とも違う画面からの熱気が、既視感のあるストーリーがあっても強く惹きつける力となっていた。
『用心棒』に限らずリメイク作品は大量に作られているけど、新鮮に感じられるのは単に俳優や特殊効果の目新しさだけではない。画面から溢れる作り手の熱量にも注目したいところだ。
〇カメラワークとか
・画面が暗いシーンが多い。途中まで見づらいなあと思ってたけど、女を助け出した名無しの男が敵に見つからないように早駆けするシーンとかは、その暗さが見つからない理由になってるなと思ったりした。捕まった後に逃げ出すシーンとかもそう。
・ラストの決闘はこだわりをたくさん感じるシーンだった。煙からの登場やそれぞれの表情を短く映していくときの緊張感。5人を撃ったあと、名無しの男が持つ銃の銃身だけが見え画面外へ捌けていくカメラワークも素晴らしい。剣術でいう「残心」みたいな静けさ。
〇その他
・リメイク作品に別の熱量があれば良いけど、大体ないよなあと思ったりした。
・劇伴が良い。冒頭の有名な曲もそうだし、それ以外も。
・爆発とか炎とかの容赦なさがすごい。これちゃんとコントロールできてるの…みたいな迫力がある。画面が暗くて全体像が見えないからってのもあるかもしれないけど。