高校教師(1972)

劇場公開日:

解説

北イタリアの小さな海辺の町を舞台に、暗い過去を持つ教師と妻、生徒の愛の葛藤を描く。監督は「国境は燃えている」のヴァレリオ・ズルリーニ、脚本はズルリーニとエンリコ・メディオーリ、撮影はダリオ・ディ・パルマ、音楽はマリオ・ナシンベーネが各々担当。出演はアラン・ドロン、ソニア・ペトロヴァ、レア・マッサリ、ジャンカルロ・ジャンニーニ、レナート・サルヴァトーリ、アリダ・ヴァリ、アダルベルト・マリア・メルリ、サルヴォ・ランドーネ、ニコレッタ・リッツイなど。

1972年製作/132分/イタリア
原題:La Prima Notte di Quiete
配給:東和
劇場公開日:1973年10月6日

ストーリー

ダニエレ・ドミニチ(A・ドロン)は妻モニカ(L・マッサリ)を共ない、北イタリア、アドリア海ぞいにある小さな町リミニに、高校の臨時教師として赴任してきた。彼が、町での初めての夜、姿を現わしたのはバクチ場だった。田舎者まるだしのマルチェロ(R・サルバトーリ)や、皮肉屋スパイダー(G・ジャンニーニ)を相手に彼は馴れた手つきでカードをめくった。夜もふけた頃、家に帰ったダニエレはモニカが電話で話しているのを聞いた。その声は男がいる事を匂わせるが彼にはとがめる気力もない。十年前、モニカを夫の手から奪い取ったのは愛の情熱だったのだろうか。ダニエレの授業は生徒たちを戸惑わせ、その放任ぶりに校長(S・ランドネ)は非難の眼を向けたが、彼は平然と受け流していた。その教室の中に冷やかな視線があった。清らかに澄んだ瞳に不似合な、成熟した女を感じさせる娘バニーナ・アバーティ(S・ペトロヴァ)の視線は、ダニエレを突き放しながらも妖しくからんでくる。出席簿には二年間の休学が記されてあった。理由を尋ねる彼に、バニーナに代ってクラスの全員が嘲けりの薄笑いをさらした時、ダニエレは後めたいものを感じた。彼は、バニーナが学校の帰りに、迎えにきた男の真紅のスポーツカーに乗り込むのを目撃した。翌日、ダニエレは、バニーナを助手席に誘って郊外へでかけた。そして昨日のスポーツカーの男ジュラルド(A・M・メルリ)の事を尋ねずにはいられなかった。彼とは結婚しない、愛してもいないとバニーナはいう。どこか投げやりな口調の中に、ダニエレはこの美しい娘の不幸をのそき見たような気がした。町へ戻った時は夜になっていた。二人は激しい口ずけを交したが、バニーナは、家の前に止まった真紅のスポーツカーを見るなり、別れも告げずに去って行った。その夜遅くダニエレはマルチェロとでかけたナイトクラブで彼女にもう一度会った。ジェラルドに抱かれて踊るバニーナは、ヒタと見つめる彼の視線の中で、悲しみにふるえているようだった。翌日、欠席したバニーナの家を訪ねたダニエレは、憎しみをむきだしにした母(A・バリ)から罵声を浴びせられて、何もかもが判ったような気がした。娘を喰い物にして生きてきた母にとって、ダニエレのような男の出現はさぞ眼障りなことだろう。スパイダーに誘われて怪しげなパーティに出席したダニエレは、彼から苦い過去を呼び戻されて困惑した。「静けさのはじめての夜」それは、十六歳で自殺したいとこのリビアに、ダニエレが捧げた詩集だった。スパイダーはこれを読んでいたのだ。横なぐりの雨が激しく降るその夜、バニーナが現われた。二人は、暗く傷ついた過去を捨てて、幸せに身をゆだねていた。あばら屋に身を横たえてただ相手を求め合った。朝がきて、激しくドアを叩く音で静寂が破られた。ドアの前にはジェラルドが、マルチェロやスパイダーを連れて立っていた。ジェラルドは気が狂ったように口ぎたなくバニーナを罵倒する。ダニエレはジェラルドを殴りつけ、バニーナを抱いた。過去などもうどうでもいい。彼には新しく始まった愛だけが大切だった。妻のモニカは、身の回りの品を持ってでて行こうとする夫にすがりついた。“行かないで、お願い。もうこの年になって愛してくれる男はいないわ。あなたが行ってしまったら死ぬより他ない……”。その言葉で、彼の脳裏にリビアとの辛かった愛が思い浮かぶ。彼の心は激しく揺れたが、憎しみさえ感じているモニカを棄てる事はできなかった。そんな彼に突然死が訪れる。モニカの許に戻ろうとしたダニエレの車は激突して火の桂と化した……。数日後、ダニエレの葬儀はドミニチ大佐の息子にふさわしく、広大な邸宅の中で、しめやかにとりおこなわれた。

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