激突!

劇場公開日:1973年1月13日

解説・あらすじ

「地球最後の男オメガマン」などで知られるSF作家リチャード・マシスンの短編小説を当時25歳のスティーブン・スピルバーグがTV用に監督したサスペンス・アクション。知人から借金を取り立てるためにカリフォルニアのハイウェイを南下していたデビッドは、途中で1台の大型タンクローリーを追い抜く。すると、そのタンクローリーがデビッドに嫌がらせを始める……。日本やヨーロッパでは90分に再編集され劇場公開された。

1971年製作/90分/G/アメリカ
原題または英題:Duel
劇場公開日:1973年1月13日

スタッフ・キャスト

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映画レビュー

3.5 スピルバーグの持ち味「執着」は既にここから。

2025年8月2日
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すっかん

4.5 【94.4】激突! 映画レビュー

2025年11月16日
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鑑賞方法:VOD

本作の完成度は、その構造的なミニマリズムと、そこから導かれる極限の緊張感に集約される。リチャード・マシスンによるシンプル極まりない脚本は、中年男デヴィッド・マンがハイウェイで遭遇する、正体不明のタンクローリーとの死闘を、まるで寓話のように描き出す。情報過多な現代映画とは対極に位置し、登場人物の背景や動機の説明を極力排することで、観客は主人公と同じく、不条理な状況に放り込まれる。この**「説明しないことの美学」こそが、本作を時代を超越した古典たらしめている。追跡劇というプリミティブなテーマを扱いながらも、カメラワーク、モンタージュ、音響設計の全てが、観客の生理的な恐怖を煽るよう緻密に計算されている。特に、主人公の乗るプリムス・ヴァリアントと、悪魔的な形相のピータビルトのタンクローリーとの対比は、弱者と不可視の暴力、あるいは文明と野性の対立といった、深い哲学的示唆を含んでおり、その完成度は極めて高い。テレビ映画としての低予算と短い撮影期間という制約の中で、スピルバーグは、「ヒッチコック的なサスペンスの錬金術」**を体得し、後の大作主義の萌芽を予感させる、純度の高い映画体験を創造し得た。
監督・演出・編集
当時24歳であったスピルバーグの演出手腕は、この作品ですでに完成の域に達している。彼のカメラは、単なる記録者ではなく、追いつめられる主人公デヴィッド・マンの心理を代弁する。タンクローリーをローアングルで捉えることで、その巨大さと威圧感を強調し、あるいはマンの視点に寄り添い、パラノイア的な恐怖を共有させる。特に、編集(フランク・P・ケラー)との相乗効果により生まれる**「見せ場」の連続性は、観客を息つく暇もなく物語へと引きずり込む。カットの緩急、長回しとクローズアップの使い分けは、若き監督が持つ天性のリズム感を証明している。タンクローリーの運転手を見せないという選択は、恐怖の源泉を「人間」ではなく「機械/概念」**へと昇華させ、普遍的な恐怖を喚起する演出上の卓見である。
キャスティング・役者の演技
• デニス・ウィーバー(役柄:デヴィッド・マン):
本作の**「主演」であり、ほぼ全編にわたり画面を支配する彼の演技は、作品の成否を決定づける重要な要素であった。ウィーバーが演じるデヴィッド・マンは、ごく平凡な中年のセールスマンであり、その「非英雄性」が、突如として降りかかる理不尽な暴力に対する観客の共感を高める。彼は、最初はおどおどとした「小市民」的な反応から、徐々に追い詰められ、ついには生存本能に突き動かされる「闘士」**へと変貌していく過程を、表情や息遣い、そして車内の独り言という形で、緊迫感をもって表現しきっている。特に、カフェでの周囲の客に対する不信感を募らせるシーンや、故障した車の中で絶望に打ちひしがれる姿は、極限状態における人間の心理を深く抉り出している。この繊細かつ切迫した演技が、現実味を伴う不条理な恐怖として、観客に強く訴えかける原動力となっている。
• ジャクリーン・スコット(役柄:デヴィッドの妻):
彼女の出番は物語の冒頭、デヴィッドが電話で妻と口論するシーンのみだが、その**「声の出演」**がデヴィッドの精神的な不安定さを暗示する。スコットが演じる妻の、ややヒステリックで感情的な声は、デヴィッドが抱える日常のストレスを象徴しており、彼を孤独な闘いへと駆り立てる背景を間接的に示唆している。短い登場時間ながら、デヴィッド・マンというキャラクターに奥行きを与える重要な助演である。
• エディ・ファイアーストーン(役柄:カフェの店主):
ハイウェイ沿いのカフェの店主を演じたファイアーストーンは、平凡な日常の中に潜む**「無関心」や「傍観者」の態度を体現している。デヴィッドが必死にタンクローリーの運転手を見つけようと焦燥するのに対し、彼はあくまでマイペースで、状況の異様さを理解しようとしない。この「温度差」**が、デヴィッドの孤立感を際立たせ、サスペンスを増幅させる効果を生んでいる。
• ルー・フリッゼル(役柄:スクールバスの運転手):
スクールバスの運転手役として登場するフリッゼルは、デヴィッドの目の前で、故障したバスを押してもらうという、一時的な**「擬似的な協力者」となる。しかし、彼の行動はあくまで自己中心的であり、デヴィッドの危機を救うものではない。このキャラクターは、デヴィッドが頼るべき「社会の無力さ」**を象徴的に示しており、助演としての役割を鮮やかに果たしている。
• キャリー・ロフティン(役柄:トレーラーの運転手):
彼はクレジットの最後、あるいはクレジット外での出演となることが多いが、本作において最も重要な**「助演」である。ロフティンは、「顔を見せない悪役」であるタンクローリーの運転手を演じた。その存在は、足元と腕のみで示され、徹底して匿名性が保たれている。これにより、タンクローリーは単なる乗り物ではなく、「殺意を具現化した怪物」**として機能する。ロフティンの見えない演技は、恐怖の抽象度を高め、作品のテーマ性を深めるという、批評的な成功を収めている。
脚本・ストーリー
リチャード・マシスンによる脚本は、その**「一貫した単純性」において特筆に値する。サンバイザーに挟まれた紙切れに書かれた、単なる追い抜きから始まる物語は、理不尽な追跡劇へとエスカレートし、最終的に命を懸けた決闘へと帰結する。セリフを極力抑え、「視覚的なアクションとリアクション」**によって物語を推進させる手法は、映画というメディアの本質を突いている。特に、主人公の心理描写と外部の脅威との相互作用を、巧妙な構成で描き出すことで、単純なストーリーラインに深い緊張感と象徴性をもたらしている。
映像・美術衣装
ロケ地であるカリフォルニアの乾燥した荒野とハイウェイの映像は、**「孤独と隔絶の感覚」を強調する美術的な役割を果たしている。デヴィッドの乗る、やや古びた赤のプリムス・ヴァリアントと、錆と埃にまみれた巨大なタンクローリーの対比は、美術衣装の範疇を超えた「視覚的なテーマ」として機能している。特筆すべきは、タンクローリーに施された「無数のナンバープレート」や、「異形の装飾」であり、これは運転手の正体不明性と、過去の犠牲者の怨念を暗示する「移動するオブジェ・ダール(芸術作品)」**の様相を呈している。デヴィッドの着ている地味なスーツもまた、平凡な日常からの逸脱と、環境とのミスマッチを強調している。
音楽
ビリー・ゴールデンバーグによる音楽は、本作のサスペンスを支える重要な柱である。主題歌は存在しないが、彼のスコアは、主に**「パーカッションと低音弦楽器」を駆使した、ミニマルで不協和音を多用したアプローチが特徴である。この音楽は、タンクローリーのエンジン音やエアブレーキ音と巧みに融合し、機械的な威圧感と、デヴィッドの心臓の鼓動をシンクロさせる。特に、追跡が激化するシーンでの不規則なリズムと、終盤の「断崖絶壁でのクライマックス」を彩る「非情なトーン」**は、観客の不安を極限まで高めることに成功している。
受賞・ノミネートの事実
『激突!』は、元々テレビ映画として製作されたが、そのクオリティの高さから劇場公開され、国際的な評価を獲得した。主要な映画祭での受賞歴としては、1973年度のアボリアッツ・ファンタスティック映画祭において、見事にグランプリを受賞している。これは、本作が単なるジャンル映画としてではなく、**「映画芸術として普遍的な価値」**を持つことを証明する事実である。
総評
『激突!』は、若きスピルバーグ監督が、極めて少ない要素で最大の効果を引き出す**「映画的錬金術」を完成させた、初期キャリアの金字塔である。恐怖の源泉を「抽象化」し、アメリカの広大な風景を舞台に「文明と野性の孤独な戦い」を描いた本作は、その緊迫感と普遍的なテーマ性において、時代を超えて語り継がれるべき傑作である。スピルバーグの「演出の原点」**が凝縮された、非情で純粋なサスペンス映画の最高峰として、揺るぎない地位を占める作品と言えるだろう。

作品[Duel]
主演
評価対象: デニス・ウィーバー
適用評価点: A9
助演
評価対象: ジャクリーン・スコット、エディ・ファイアーストーン、ルー・フリッゼル、キャリー・ロフティン
適用評価点: B8
脚本・ストーリー
評価対象: リチャード・マシスン
適用評価点: S10
撮影・映像
評価対象: ジョージ・スタインレン、ジャック・A・マータ
適用評価点: A9
美術・衣装
評価対象: ロバート・S・スミス
適用評価点: A9
音楽
評価対象: ビリー・ゴールデンバーグ
適用評価点: A9
編集(減点)
評価対象: フランク・P・ケラー
適用評価点: -0
監督(最終評価)
評価対象: スティーヴン・スピルバーグ
総合スコア:[94.38]

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honey

3.0 久しぶりに観たけど

2025年11月4日
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デビュー作でこの時代に煽り運転にフォーカスしてるの中々興味深いなと思った。
映画自体はどうしてもカーチェイス的なシーン多くて刺さらない人には刺さらないだろうね

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わおう

3.0 バカでかトラックがすごいスピードで追いかけてきたらそりゃ怖い😱

2025年10月10日
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鑑賞方法:VOD

怖い

興奮

ドキドキ

スピルバーグ監督が25歳の時に撮った映画と聞いて興味がわいてしまいました!

バカでかトラックがすごいスピードで追いかけてきたらそりゃ怖い😱

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ジュディス

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