影の軍隊

劇場公開日:

解説

独軍占領下のフランスで、第二次大戦中、悲劇的な抵抗運動に命をかけたレジスタンス闘士たちのエピソードをつづった作品。製作はジャック・ドルフマン。ジョゼフ・ケッセルの原作を、「ギャング」のジャン・ピエール・メルヴィルが脚色し、自ら監督した。撮影はピエール・ロム、美術はテオバール・ムーリッス、音楽はエリック・ド・マルサンがそれぞれ担当。出演は「ベラクルスの男」のリノ・ヴァンチュラ、「ギャング」のポール・ムーリッス、ほかに、シモーヌ・シニョレ、ジャン・ピエール・カッセル、クリスチャン・バルビエ、ポール・クローシェ、クロード・マン、アラン・リボールなど。

1969年製作/140分/フランス
原題または英題:L'Armee des Ombres
配給:東和
劇場公開日:1970年5月30日

ストーリー

フィリップ・ジェルビエ(L・バンチュラ)は、ある日、独軍に逮捕され、キャンプに入れられてしまった。そして数ヵ月後、突然、ゲシュタポ本部へ連行されることになった。だが、一瞬のすきをみて、そこを脱出した彼は、その後、抵抗運動に身を投じることとなった。そうしたある日、彼はマルセイユに行き、フェリックス(P・クローシェ)、ル・ビゾン(C・バルビエ)、ルマスク(C・マン)等と一緒に裏切り者の同志ドゥナ(A・リボール)の処刑に立ちあった。その後に、彼は、ジャン・フランソワ(J・P・カッセル)に会った。ジャンの仕事は、名高いパリの女闘士マチルド(S・シニョレ)に、通信機をとどけることだった。彼はそのついでに、学者である兄のリュック・ジャルディ(F・ムーリッス)を訪ねたが、芸術家肌の兄を心よくは思わなかった。一方、新任務のためリヨンに潜入したジェルビエのところへやって来たのは、意外にもジャンの兄のジャルディだった。やがて無事、その任務を果したジェルビエのところへフェリックス逮捕さる、の報が伝えられた。さっそく、救出作戦を展開したが、ジャンの犠牲も空しく、失敗に終ってしまった。ジェルビエが再び逮捕されたのは、それから間もなくであった。独軍の残虐な処刑に、もはや最後と思っていた彼を救ったのは、知略にすぐれたマチルドであった。それからしばらくたった頃、隠れ家で休養をとっていたジェルビエを、ジャルディが訪ねて来た。彼の来訪の目的はマチルドの逮捕されたことを告げるためと、口を割りそうな彼女を、射殺するということだった。現在、仮出所中の彼女も、それを望んでいる、と彼は伝えた。ある日、エトワール広場を一人歩く彼女に、弾丸をあびせたのは、彼女を尊敬するジャルディ、ジェルビエ、ル・ビゾン、ルマスク等仲間たちだった。しかし、遅かれ早かれ、彼等の上にも、同じような運命が待ち受けているのだった。

全文を読む(ネタバレを含む場合あり)

スタッフ・キャスト

全てのスタッフ・キャストを見る

関連ニュース

関連ニュースをもっと読む

映画レビュー

4.550年が経過した今なお、リアルな凄みに震えっぱなしの渾身の一作

2019年9月26日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

メルヴィル作品の中でも、最もリアリステイックな視線が貫かれ、地響きするほどの凄みに震える一作だ。「サムライ」や「仁義」などで知られるメルヴィルは、ナチス占領時代、この映画と全く同じ立場でレジスタンス活動に身を投じていたという。彼は自らの体験を決してそのまま描くような真似はしない。それゆえストーリーは全くの別物ではあるが、そうであってもあらゆる細部に、彼自身が実際に見たり、触れたりした記憶が直接的ではない形で刻印されているのは確かだ。

あからさまな感情を挟まず、ストイックに淡々と重ねていく描写が特徴的だ。それゆえ登場人物の「行動」が個性を規定する要となる。あのメガネ姿の中年男に自ずと魅了され、それにも増して、組織を束ねる小太りのおばちゃんの、あの力強い統率力に惚れ惚れしてしまうのも、きっと「行動」のなせるワザだ。公開から50周年が経つが、古臭さなど微塵も感じない、心底しびれる作品であった。

コメントする (0件)
共感した! 0件)
牛津厚信

『仁義』の監督でしたか。納得。

2022年10月25日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル
ネタバレ! クリックして本文を読む
コメントする (0件)
共感した! 0件)
マサシ

5.0なんという虚無感、無慈悲さだろう それが映像に反映されている

2020年10月15日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

激渋!しびれました
メルヴィル監督最高!

ドイツに占領されたフランス
冒頭、主人公がフランス警察に車で連行されている
しかしどうも様子が変だ
警官がトゲトゲしくない
当たりが柔らかいのだ
着いたところはレジスタンス専用監禁施設

なんという皮肉
ドイツ軍に対して抵抗運動を行っている愛国的なフランス人を、当のフランスの警察が逮捕して、ちょと前までドイツ兵捕虜を入れていた元捕虜収容所に連行しているのだ

フランスは副首相だったペタン元帥が、ドイツに降伏したからこうなったのだ
元帥はフランス中部の町ヴィシーに新首都を置いたことから「ヴィシー政権」と呼ばれ、ナチスドイツの間接統治に協力しているのだ
主人公フィリップがドイツ軍司令部が接収しているホテルマジェスティックから脱出して逃げ込んだ散髪屋に掲示してあったのはそのペタン元帥を非難するビラだ
ビラには「ペタン元帥の公約と実態」と書かれている
フランスを救う為にドイツ軍に降伏し協力する
平和を公約しても、フランス人の自由と人権は蔑ろにされているのだ

主人公はドイツと戦っているだけでは無い
そのヴィシー政権とも戦っているのだ
フランス人が、ナチスドイツの為に同じフランス人を逮捕する
フランス人同士で敵対し、殺し合うのだ

だから警官達は、仕事であり命令なのだから、レジスタンスを捜査し逮捕する
従わなければ首にされるか、逮捕される側になるからだ
しかし彼らもまたフランス人であるから、逮捕したレジスタンスを邪険には扱いたくないのだ

しかし、彼を動かす命令は警察幹部から下されるのだが、本当の命令の出先はドイツ軍なのだ

フランス人がフランス人と敵対する
自分や家族を守る為には、同じフランス人を売る人間もでる
ペタン元帥はパリや市民を守る為に降伏してナチスドイツに協力しているのだ
一般人がそうなったところで当然だ

しかしそれでよいのか?
自由の国フランスが、全体主義のナチスドイツに屈伏したままで良いのか
有り得ない!
その代表が前国防次官のドゴール将軍で、ロンドンに逃れて自由フランスと呼ぶ亡命政権を建てレジスタンスを指揮しているのだ
劇中、皿型ヘルメットを被ったフランス兵が歩哨にたっている建物には、自由フランスのしるしである複十字のロレーヌ十字の紋章が掲げられている
それがフランスの亡命政府なのだ

ロンドンのとある邸宅でルクに勲章を授けたのは、そのドゴール将軍だ
1971年の映画「ジャッカルの日」で暗殺対象になる後のフランス大統領だ
日本の天皇陛下のように、元首を写すのは畏れ多いのか顔はあまり写されないし、台詞もない

主人公達は、そのドゴールの配下として、ドイツ占領下のフランスで戦っているのだ
それが影の軍隊だ

敵はナチスドイツの占領軍だ
しかしその手先であるフランス警察や、フランス人自身も敵なのだ
味方も多くいるだろうが、いつ裏切るかも知れないのだ
レジスタンス仲間であっても、いつ逮捕され拷問を受けて口を割るかも知れない
裏切ったなら、例え仲間であっても殺さなければならない
同じフランス人であっても、仲間であっても敵に協力したなら敵なのだ
殺さなければならないのだ
それがむしろ情けなのだ
裏切り者として生きていくことの悲惨を思えば

なんという虚無感、無慈悲さだろう
それが映像に反映されている
彩度がおとされて青みがかった画面は、常に寒々としている

登場人物達は怒鳴らない、大声も上げない
取り乱した一人だけだ
普通の声ですら話さない
ぼそぼそと言葉を選んで少しだけ小声でしか話さない
暴力のシーンは行為そのものは写されない
結果のみ映像でしめされるだけ
笑いもない
抑制され、そぎ落とされたミニマムな映画だ
それが美しい

主人公は中年男
官庁の幹部に相応しい男、大企業の重役のような見た目
ヒロインはアラフィフの中年女、しかも小太りの見た目は普通のオバサン

この二人が中心となって物語は展開される
淡々とこけ脅かしはない
しかしスリリングでサスペンスなのだ

強烈に惹きつけられてしまった
北野武監督は明らかにメルヴィル監督の影響を受けていることが本作では特に強く感じる

マチルダ役のシモーヌ・シニョレは48歳
ご存知1952年マルセル・カルネ監督の名作「嘆きのテレーズ」のヒロインで主演したのは31歳の時
さすがに歳に勝てないものの、全盛期の超がつく美貌と肢体の面影は、なんとなくいい女オーラを発していてしっかり残っています
イブ・モンタンの奥様です

フィリップが救出された時、その手を最初は片手で、そして両手で握るシーン
彼を見つめる眼差し
すぐに放される手
胸が震えるような大人のラブシーンでした
色恋を超えた世界なのです

超名作です!

コメントする (0件)
共感した! 0件)
あき240

4.0レジスタン運動に生死を賭けた人たちの記録

2020年5月23日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル
ネタバレ! クリックして本文を読む
コメントする (0件)
共感した! 0件)
Gustav