ウイラードのレビュー・感想・評価
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ネズミの可愛さと気持ち悪さが堪能できる!
そんなもん堪能したいかは別として、それを堪能できる映画です。
ホラー映画には観客を恐怖のどん底へ突き落す怪物ないしお化けがつきものですが、本作でその役を担うのはネズミです。本当にただのネズミです。
一部のシーンでぬいぐるみを使っているかもしれませんが、この映画に登場するネズミはほぼ全てのシーンで本物の生きたネズミです。
一、二匹がじゃれあっている程度ならまだいいのですが、それが数十匹、百数匹とネズミ算式に増えていくと、言い知れぬ不気味さが沸き上がります。(割とデカいし)
顔だけ映っている分には可愛いんです。つぶらな瞳で鼻をヒクつかせていて・・・。ところが真っ黄色の歯が覗いたり、ちょっと引いて全身が映ると、毛のない、指が長い足とミミズの様なシッポが気持ち悪いのです。しかもそれが暗闇の中で群れで蠢いていたり、カーテンや壁を這いずりまわっていたり、人の体にまとわりついたりしている様は強烈です。生理的にキツい!
また主人公もなかなか生々しいです。
主人公:ウイラードは手の爪を噛むシーンが印象的な、内向的でコミュニケーション能力が低く、ストレスを内に溜め込むタイプです。
ウイラードの勤め先も住む家も彼の亡父が残したものです。しかしそれらの現状はウイラードにとって居心地のいい場所ではありません。
ただ当のウイラードにはそんな現状を変えたり、抜け出したりするための力が不足していますし、足りない力を補おうと努力する情熱もありません。なんとなく不満を募らせながらも、どこかで現状を受け入れて淡々と日々をやり過ごし、居心地のよくない場所に居座り続けています。
そしてそんな彼が夢中で情熱を注ぐのは地下室で増え続けるネズミたちを飼い慣らすことだけなのです。
身に覚えのある事なので言い難いのですが、ウイラードからはどこか自身の人生から目を背けた生き方をしている印象を受けるのです。そうしてなんとなく先延ばしにしていた事のツケがあるとき一気にやってきて、ニッチもサッチもいかなくなり非道な手段に打って出るという…。
得てしてそういう人間は身勝手なものですが、彼の最後の台詞にそれがよく表れています。またその一方でとても悲しく響く台詞でもあるのです。
と、正直そこまで凄い作品か?というと判断難しいのですが、個人的に妙な生々しさが刺さる映画でした。
※最後に一つ本編の結末とは関係ないネタバレをしますと、ウイラードの家の階段には昇降機が付いています!もうホラー映画で昇降機が出てくれば暴走しない訳がない!…のですが、この映画ではなんと昇降機は暴走しません。そこは暴走させようよ!!
暗い作品
弱気な青年が父の会社を乗っ取った悪い社長に対する復讐劇なんだけど、実は「人間は自分勝手」ってイタリアの動物パニック映画「猛獣大脱走」に通じる訓話めいたものを感じた
ラストのねずみの『ベン』のズームは明るいBGMも相まってなんだかブラックコメディのようなテイストだなと思った
ネズミパニック映画と思いきや・・・
ネズミはリアルでは忌み嫌われるものの、ディズニーのミッキーマウスといい、トムとジェリーといい、アメリカではネズミが主人公の作品が多い。27歳の青年ウイラードがネズミと仲良くなるには歳を取りすぎている気もするし、ハイジじゃないんだから、偏執的で根暗な性格といったイメージしか残らない。
亡父が創設した会社の従業員として働くものの、新社長マーティンからは過剰なまでの仕事を押し付けられ、いびられっぱなし。父が遺した大邸宅も母との二人暮らしでは広すぎるし、給料も上がらず、マーティンからは家を売ってくれと懇願されるほど。嫌味なマーティンはウイラードだけのけ者にしてパーティを開いたりするので、飼いならしたネズミの大群をパーティ会場に荒らさせたりするのだった。かなり陰湿・・・
やがて税金を納めなければ家を売れというお達しが来てしまい、金に困ったウイラードは会社の顧客宅をネズミを巧みに利用して強盗したりする。そして、新人の女子社員とも仲良くなるのだが、彼女とともに解雇通知が・・・
個人的怨恨でネズミパニックを起こすという陰湿な作品でもあるが、気持ちはわかるものの正当なやり方で解決しようよ!と言いたくもなる。母親が亡くなった時点で家を売ることを考えるのが普通だろうに、こだわりがあったのでしょうね・・・ネズミだけじゃなく。
演技はみんな下手だし、ストーリーも共感を得られるものじゃないけど、アーネスト・ボーグナインの嫌味な演技だけが光っていた。
自分の悪意も危険
動物パニック映画と言うよりは心理劇に近く、ネズミは主人公の悪意の比喩と思われる。主人公は、自分の責任ではない事で、周囲から不当な非難や嘲りを受け、理解者を誰も得られない。孤独の中、現れたネズミは、友ではなく、主人公が無意識に自分の内面で育てた悪意が形となったものに過ぎない。現実にも自分の悪意を反映する者を友としている者はいる。
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