怒りの葡萄

劇場公開日:

解説

1940年度ピュリツァー受賞、ジョン・スタインベック原作を、ナナリー・ジョンソンが脚色、「我が谷は緑なりき」のジョン・フォードが監督した社会ドラマ。撮影は「嵐ケ丘」など、主にウィリアム・ワイラーの作品を受け持つグレッグ・トーランド。音楽はアルフレッド・ニューマンが担当している。出演者は「荒野の決闘」のヘンリー・フォンダ。この映画でアカデミー女優助演賞を得たジェーン・ダーウェル、「駅馬車(1939)」のジョン・キャラダインなど。製作はダリル・F・ザナック。

1939年製作/128分/アメリカ
原題:The Grapes of Wrath
配給:昭映フィルム

ストーリー

オクラホマ国道を刑務所給与と判る身なりの男が歩いてくる。トム・ジョード(ヘンリー・フォンダ)だ。彼は運転手に頼んでトラックに便乗させてもらう。運転手は遠回しにトムの素性を探る。「俺は刑務所にいたんだ、人殺しでな」トムは捨てぜりふを残しトラックを降りた。家の近くでケーシー(ジョン・キャラダイン)に逢った。彼は元説教師だった。人は砂塵の中をジョード家へつく。が、空き家になっていた。奥をのぞくとミューリイがいた。トムはジョード一家がジョン伯父の家へ移ったと知る。ジョード家は先祖代々からこの土地に住んでいたが、猛烈な砂嵐のため畑の収穫がなく土地会社に奪われたのだ。ジョン伯父家でトムは4年ぶりに母(ジェーン・ダーウェル)と抱擁した。翌朝ジョード一家は中古トラックに家財道具を積みカリフォルニアへ出発した。ケーシーも一緒だった。トラックは炎天下の国道66号線を西へ西へと走り続けた。チェコタ、オクラホマシティ、ベタニーを過ぎた。ある夕、祖父は、永遠の眠りについた。葬式の費用がないので身内の者が埋葬した。カリフォルニアへ入り祖母も死んだ。フーヴァヴィル移民キャンプについた。翌日、賃金のピンハネをする労働ブローカーと労働者の争いが起こった。トムとケーシーは労働者を逃がした。ケーシーは1人で罪をかぶり保安官に連行された。ジョード一家は農場のす桃もぎをして働いた。住まいも与えられた。トムはケーシーに逢った。ケーシーは保安官たちにストライキの首謀者と思われていた。川で乱闘が始まりケーシーは殺された。トムはケーシーを殺した男を殺し、自分も顔に傷を負った。保安官らは顔に傷のある男を捜している。ジョード一家はトムをかくし農園から逃げた。トラックは走り続け国営の農務省キャンプに入った。キャンプ代は週1ドル、母は生活の設備がととのい清潔であることを喜ぶ。だが付近の農場のボスは国営農場の賃金がよいので快く思わない。自分たちの労務者を安く使えないからだ。ある夜、ボスたちは暴力団を使ってキャンプを焼き払おうと計画する。しかし、トムはキャンプ自治会の人々に協力してこの計画を未然に防いだ。トムは仮釈放で州外へ出たので一同に迷惑をかけるのを恐れ1人立ち去る。母はトムを暗闇の中に見送った。翌朝ジョード一家は綿つみの仕事に出発する。父、母、アル、ジョン伯父、2人の子供とロザシャーン。ジョード一家もこれだけになってしまった。夫コニーに置き去りにされて以来ロザシャーンは抜け殻のようになってしまった。そして死産--若いからまた子供を産めるよと母は慰める。ジョード一家のトラックはアルが運転、路傍の立て札は<雇人不要仕事なし>。トラックは快速に走り続ける。

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スタッフ・キャスト

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受賞歴

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映画レビュー

4.5ジョン・フォード監督の傑作

2022年10月23日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

初見は、学生時代(1979年7月27日)、新宿アートビレッジで鑑賞。(『市民ケーン』との2本立て)
本日(2022年10月23日)、43年ぶりに鑑賞。

学生時代は「酷な労働環境」を見てツラい気持ちが残っただけに思えていたが、改めて見直すと「人間愛に溢れた傑作」であった。

ある男が歩いている。彼はトム・ジョード(ヘンリー・フォンダ)、トラック運転手に頼んで便乗させてもらう。運転手はトムの素性に探りを入れると、トムは「俺は刑務所にいたんだ。人殺しで…」と実家近くでトラックを降りる。
トムは元牧師だったケーシー(ジョン・キャラダイン)と会い、仮出所だと話す。そして、ケーシーと一緒に実家に辿り着くが、実家はもぬけの殻。家族は先祖代々の土地を捨てて、凶作で土地会社に土地を奪われ、叔父の家に行っていた。そこで、トムは母親(ジェーン・ダーウェル)と再会。トムを含めてジョード一家は「仕事のあるカリフォルニア」を目指して、オクラホマからカリフォルニアへのオンボロトラックでの旅を始める。
希望を抱きながら、カリフォルニアを目指す家族だが、途中でじい様が亡くなり家族で葬り、実際にカリフォルニアで辛い目にあった男から厳しい現実を話されて不安になる家族だが、やはりカリフォルニアを目指してトラックを走らせるのだが……。

記載したいエピソードは多数あるが、書ききれないので、印象的なところだけ…。

旅の途中、カフェでパンを買いたい父親が「10セントでパンが欲しいのだが…」と言うと、彼らの様子を見た店主は「じゃあ、出してやれ」と店員(妻?)に言うのだが、その女性は「15セントよ!」と厳しい。それでも店主が「10セントでいいから渡してやれ」と言ってパンを渡す。子供2人にキャンデーを買ってやりたくなった父親が「これはいくら?」と女性に確認すると「2つで1セント」と言って、父親は買っていくのだが、彼らが出て行った後、実はもっと高かったことを話す客。
愛情あふれる場面で、感動で心震えた。

いろいろとツラい事がトムを含めたジョード一家に降りかかるが、力強く生きていこうとする彼ら、特にトムの母親を演じたジェーン・ダーウェルの「以前だったらダメだったけど、いろんな事の後だから前向きになれるのが女性なのよ」的な言葉が素晴らしい!
本作で、アカデミー助演女優賞を獲るだけある見事な存在。

全編を通じて、アチコチで感動させられるジョン・フォード監督による傑作!

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たいちぃ

5.0とても面白かった

2022年8月4日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:映画館

お母さんがとにかく素晴らしかった。全てのシーンで強い印象を残し、完全に主役として見ていた。ムショ暮らしでヤサグレてる筈のヘンリー・フォンダも何かとお母さんっ子なのがまた面白い。
そのお母さん、セリフも良きものが多かったのだが「男は生き方を転機とか節目に沿って考える。女はそうではなく、川の流れの様にとどまらないものとして捉える」と言うフレーズがやけに腑に落ちた。
ボロトラックでの道行きが「恐怖の報酬」並にスリリングだったのだが、見終わってからグーグルマップでルート66を調べたら、オクラホマからカリフォルニアまで気が遠くなる位の距離で改めて戦慄した。
描かれている問題は現代と地続きで、今こそ見られるべき映画かと。

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どんぐり

3.5自由の国アメリカで起きていた農民からの搾取。

2022年7月17日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD
ネタバレ! クリックして本文を読む
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共感した! 4件)
Kazu Ann

3.5葡萄は嘲笑?聖なる血?コンコード?

2021年12月31日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

悲しい

楽しい

単純

内容は1930年の大不況を舞台とした貧乏な家族が希望を求めてルート66を南下する話。リンドバーグが大西洋横断しベイブルースが本塁打王に輝いた少し後の南部アメリカと北部アメリカの見えない壁を感じた作品。見えない壁が移住先でも顕著に見え人間の言葉に出来ない性質を分かりやすくしてくれた作品でした。印象に残った言葉は、主人公のいつもそこに自分が居るという言葉で一種の宗教色も感じました。ひとつ言うならば主人公は、自分が刺されたから相手を顔を潰れるまで叩き殺したら、いけないよなぁ。自業自得だけど自衛国家アメリカぽさが現れて面白かったいい作品でした。

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コバヤシマル
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