アルジェの戦いのレビュー・感想・評価
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現代の大監督たちに影響を与えた記念碑的一作
1966年に公開され、ヴェネツィア国際映画祭で金獅子賞を獲得するほか、世界中で高く評価された一作。あれからが50年、ドキュメンタリー・タッチのモノクロ映像がもたらす衝撃は今なお微塵の色褪せも感じさせない。登場人物たちの怒り、焦燥などをクローズアップで克明に捉えるカメラワークも徹底しているし、何よりも街のあちこちで時限爆弾が炸裂するテロ場面などは、よくもこれほどの迫真のリアリティで描けたものだと感心する一方、世界の歴史や現実を突きつけられたかのようで心が凍りつくのを感じる。 今をときめく大御所の中には本作を信奉してやまない人も多数存在する。例えばアルフォンソ・キュアロンはその筆頭だ。未来世界をドキュメンタリー・タッチで描いた『トゥモロー・ワールド』の冒頭のテロ爆破などを見比べてみると、そのあまりの影響ぶりに頭をなぶられたような衝撃を受けるはず。映画史を紐解く上でも重要な一作と言えるだろう。
独立の高揚感の中で撮られた名作中の名作では…
多分3回目の鑑賞だが、 私の理解を遙かに凌駕している。 一体どのように撮影したのか、 あたかもアルジェの市民全員が キャストであるかのような映像が続く。 まだまだ独立から日も浅く、 当時の高揚感が溢れている中での 市民総出の撮影だったのではないだろうか。 この映画、フランス資本ではなく イタリアとアルジェリア資本の作品なのに 台詞がフランス語とアラビア語であること も、興行の観点から 何かと英語ベースで製作されることの多い 現代とは異なるし、 FLN側にも悲人道的な戦いがあったこと からも逃げない描写も含め、 それらもドキュメンタリータッチとの 評判の要素なのだろうが、 充分にドラマ性も感じた。 この作品ではアルジェリア独立に関して 改めて色々なことを知ることが出来る。 まず驚かされたのがギロチン刑だったが、 調べてみるとフランスでも 1981年まで採用されていたとのことで フランスの支配地だったアルジェリアでは 当然だったと納得した。 また、FLNとフランス駐留軍と戦いでは、 テロとその鎮圧の争いだけでは無く、 ゼネストでの国連への正当性宣伝争いや、 国連や住民への自らが味方であるとの アピール合戦もあったことが描かれた。 そして、 爆弾テロは現代の中東における悲劇を、 また、楽勝のはずだとの将軍の発言にある 山岳部の戦いは アメリカ映画「名誉と栄光のためでなく」を 思い出させた。 この作品の中の主役達がいなくなり 鎮圧されたかに見えた独立運動だったが、 最終的に独立を勝ち取る 市民・国民蜂起のラストシーンも 高揚感が溢れ感動的だ。 ドキュメンタリータッチへの評価以前に、 構成の上手さと驚くべき映像で描かれた 名作中の名作と再認識することが出来た。
40年ぶりに見ました。凄い映画です。
映画として、凄い映画。CGなんて使わぬともこんな凄い映画を作った人がいたんだと思う。兎に角、傑作でしょうね。 やっぱり、侵略する側の戦死は犬死で、侵略される側の戦死は殉教者になるんですよ。 文明の限界なのでしょ。この映画と同じ事が今でも続いているし、この時よりも今の方がひどい。 しかし、そんなイデオロギーを抜きにして、この映画は凄い。
ニュース映画みたいな。
フランスの支配下にあったアルジェリアで、フランス軍と独立を目指すアルジェリア抵抗組織との攻防を描いた話。 . 革命とか学生運動の映画って、民衆(抵抗組織)の方に視点を置いて、権力(フランス軍)の方は徹底的に悪者として描くことが多いけど、この映画の視点は比較的中立。 . どちらに味方するでもなく、ひたすらカメラは起こったことを淡々と捉え続ける。戦争中ってニュース映像を映画館で流してたというけど、そのニュース映画みたいなんだよね。 . フランス軍のことも徹底的な悪として描かない。なんなら抵抗組織だって一般人を無差別に殺してるんだから悪。映画は悪は悪、善は善って単純だけど、完全な善と悪の二項対立じゃない所が現実で複雑だけど面白い。 . アルジェリアの独立を目指すことは良い運動だと思うけど、無差別にテロを起こすことはさらに復讐の連鎖を生むだけ。結果的にアルジェリアの独立運動は激しくなって独立を勝ち取ることに成功するんだけど、何か違うやり方がなかったのか。 . 今アメリカで起きてるデモも激化してて、新しい世代に違うやり方で世界を変えて欲しいって言ってる映像をニュースで見た。暴力なしで戦うには、私はSNSをうまく使えば武器になると思うんだよな〜.
フランスが 正視出来ない戦争
映画なのに リアリティーが有りすぎる フランス軍とFLNの 迷宮の様なカスバでの攻防は 迫力がある プロである軍隊に 潰されてゆく独立運動組織… 沢山の死者や拷問の映像にマタイ受難曲やグレゴリオ聖歌が 被さり涙が出る… そしてモリコーネの有名な曲が心を 揺さぶる イスラムの民への拷問が、キリスト受難に重なる 生活の為に 宗主国フランスに渡った北アフリカの人々の心が、決して同化しないのも解るような気がする 哲学の国(サルトルはFLN支持)を自負するわりには 無理解なフランス 支配層が欺瞞に哲学を利用している気がする 精悍なアリの強く真摯な瞳が、悲しい 利権(油田、天然ガス、領土拡大、など)の為に フランスは アルジェリアの文化とアイデンティティの喪失を 企むが、失敗する… 永遠に搾取出来るとでも、考えたのだろうか? 今、不安なフランス 2018年 マクロン大統領が (やっと)アルジェリア独立運動時の拷問での 仏政府の関与を認めている 彼等の ヴェールに対する恐怖は、 理解出来るが 自業自得という側面も 災いが 次の世代に 引き継がれなければ、よいが… イタリア、アルジェリア合作の 歴史的な戦争映画に なりました
テロは戦っていない
アルジェリアもテロを行ったが、テロは国際社会の理解を得られないと認めてもいる。ISや北朝鮮は国民の為に戦うとしつつ、教育を与えない、女性を虐げる、食料がなく飢えさせる等、実態は矛盾している。国民の為に戦うなら、相手国の応戦も国民の為だから、共通部分の相互理解から和解への道がある。自分の為に戦う者とは、相互理解はなく、殲滅しかない。
圧巻
映画作品,というよりむしろアルジェリアの独立運動への関心から映画館へ足を運んだ。圧倒された。 フランス代表団の衝撃的なエピソード。いささか了見が狭いようにも思うが,そこまで神経を逆なでしてしまう秀作であったということであろう。
テロがリアルでした
1966年頃の映画でモノクロですが、緊迫感がありました。群衆シーンもリアルでした。 長く植民地として支配しているにも関わらず、教育やインフラ、言葉などひどい差別があり、搾取があった事がわかりました。 アラブの春、ヨーロッパでのテロ、ISISの事など、この映画の世界と今の現実の繋がりにクラクラしてしまいました。
今だに続くフランスでのテロ
救急車で無差別に乱射するシーンなんて近々にフランスで起こったテロを思い出してしまう。 どちらが悪くて残虐でみたいな感情論は皆無で淡々と事実を描いている本作を鑑賞している側は複雑な気持ちになる。 サッカーの親善試合も気楽に出来ない両国の今も拭えきれない感情が存在していて戦争は終わったがソレ以外は何も終わっていないのか? 映像に史実もさる事ながら音楽が素晴らしくて緊張感が際立つ。 ただ戦争映画のジャンルに置くだけでは済まない異様な何かが。
民衆自らが勝ち取った自国の「自由」
民衆自らが勝ち取った自国の「自由」「独立」。 フランスの植民地であったアルジェリアの民衆たちが、自ら立ち上り「独立」「自由そして「希望」の言葉を勝ち得た姿が、鋭く描かれている。フランスへの恨みを込めたテロを 繰り返し起こしながら自国を自分たちものにする姿が、しっかり描かれている。 デジタルマスターオリジナル映画であり、モノクロ映画であるためか、リアルに描かれて いて緊迫性を増幅させている。息つく暇がない。男も女も子供も一丸となってフランスへ 立ち向かう姿が映画作品とは思えない。 音楽担当が「ニュー・シネマ~」のモリコーネ氏であった が、そんなにインパクトは感じられなかった。
総てのテロはノンである
もう、50年も前となる1967年、 まだ子供だったが、 ヌーベルバーグやイタリア映画は好きでたくさん観ている。しかしこの年、ヴェネツィア映画祭金獅子賞が「アルジェの戦い」であったことは全く知らなかった。「気狂いピエロ」や「欲望」を押さえ受賞したこの映画を映画美学校で、今日はじめて観たが、映画の50年間のギャップはどこにもない。映像も内容もまるで昨日のニュースを観ている体験、まさに今の我々の日常世界が2時間に渡ってリアリスティック展開されている。 どのような主義主張がなされるとしても、先ずは人命尊重、双方にとって総てのテロはノン、爆撃と銃撃を直ぐに止めなければならい。このテロと戦争は歴史的には撤退を決意したドゴール大統領のOASによる暗殺未遂事件が記録されてはいるが、植民地支配したフランスがまずは爆破・銃撃を止め、さらにアルジェリア臨時政府を支援し被害者、難民の救済にあたったことで集結した。アルジェリア生まれのフランス人、アルベール・カミュの不条理を理解するなら、双方総てのテロはノンである。このことこそ、この映画のメッセージ。50年前のアルジェリア人とフランス人の悲惨と困難を克服した勇気を、今こそ思い出さなければならない。
苛烈な戦い
テロリスト対策の参考書として扱われているほどリアルな本作。 アルジェリアの10年に及ぶ、フランスからの独立戦争を、ドキュメンタリーかと見まがうほどの迫真の映像で描く。 フランス側の攻撃、また独立側の自爆テロなどで、多くの人が死んでいく。その描写は、痛ましいなどというありきたりな感想は撥ね付けてしまうほど苛烈を極める。100年にも及ぶフランス植民地支配に対するアルジェリア人の憎悪が怒濤のごとく押し寄せてくる。 映画製作国がアルジェリアとイタリアであり、フランス側から描いたらまた違う様相を呈するのかもしれない。複雑な史実を一本の映画が説明しきれるものではないと思う。それでも、いまだ無くならない武力闘争を考察する上で一助となる作品だと思う。 -- 観たのは今から10年ほど前だった。 その当時、フランスは、米国の対アルカイダ戦略を批判していた。 アルジェリア独立戦争ではフランスも同じような事をしていたのにと思った。イスラム圏混乱の一端は、長らく植民地支配していたフランスにも当然あるだろうにと思った。 現状は、過去の歴史と連綿と繋がっているのだと思った。 -- 独立戦争後のアルジェリアの道程も決して平坦なものではない。 イスラム教原理主義とアルジェリア軍部の対立により国家非常事態宣言が20年近く続いた時期もあった。2010年に漸く解除されたと思った矢先、 2013年1月16日、アルジェリア人質事件が起きた。 -- 苛烈な残酷さはいまだに続いているのか。 現状は、過去の歴史と連綿と繋がっているのか。 公開から半世紀近く経った今なお、本作は凄惨な問いを我々に投げかけている。 ----- アルジェリア人質事件に関して:日本人技術者の方々はじめ多くの方が亡くなった。このような映画感想の場で記すること自体不謹慎なのかもしれない。謹んでお詫び申し上げます。また犠牲になった方々のご冥福を心より祈念致します。
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