アブラハム渓谷
劇場公開日:1994年10月29日
解説
ギュスターヴ・フロベールの『ボヴァリー夫人』を現代ポルトガルに置き換え、美貌のエマが男たちに愛され、不倫を重ねながら、愛の真実を求めて破滅していく様を描いたドラマ。監督は、サイレント時代から映画を撮り始め、近年ようやく“挫折した愛の4部作”や『繻子の靴』などで世界的に偉大な映画監督として評価され始めたポルトガルのマノエル・デ・オリヴェイラ。製作は『フランシスカ』以降のオリヴェイラ全作品を製作し、ヴィム・ヴェンダースやアラン・タネールほかヨーロッパの主だった監督たちの信頼を一心に集めているパウロ・ブランコ。撮影はナレーションの声も兼ねているマリオ・バロッソ、編集は監督とヴァレリー・ロワズルー、美術はマリア・ジョゼ・ブランコが担当。音楽は『月の光』をテーマにした選曲でベートーヴェン、ドビュッシー、シューマンほかを、ネルソン役で出演もしているアルメイダがピアノ演奏している。主演のエマを演じるのはレオノール・シルヴェイラとセシル・サンス・デ・アルバ。シルヴェイラは『カニバイシュ』での映画デビューからオリヴェイラ映画の常連である。エマの夫を演じるのは常にオリヴェイラ作品で主演を演じてきたルイス・ミゲル・シントラ。そのほかに、ディオゴ・ドリア、フィリペ・コショフェル、イザベル・ルス、ルイ・デ・カルヴァリョなど。
1993年製作/188分/ポルトガル
原題または英題:Vale Abraao
配給:フランス映画社
劇場公開日:1994年10月29日
ストーリー
現代のポルトガル、ドウロ河に沿ったアブラハム渓谷にある農園の末裔であるカルロス・デ・パイヴァ(ルイス・ミゲル・シントラ)は、医者で未亡人と結婚していた。彼はある日、14歳の美しいエマ(セシル・サンス・デ・アルバ)と出会った。エマは幼い頃に母を亡くし、父親や叔母、そして若いメイドたちや洗濯女のリティニャ(イザベル・ルス)に囲まれて暮らしていたが彼女の魅力は交通事故まで起こしてしまうほどだった。数年後叔母が亡くなり弔問に訪れたカルロスは、より美しく成長していたエマ(レオノール・シルヴェイラ)に胸を衝かれる。カルロスも妻を亡くしたばかりであった。そして2人は婚約をするがエマはメイドたちに愛のない結婚と言ってはばからなかった。嫁いだエマは、夫は往診で夜遅く、一緒に働いてきたリティニャもカルロスの姉たちに盗みの疑いをかけられ去っていってしまったため孤独であった。しかしあるルミアレス夫妻(ルイス・リマ・バレート、ミシュリーヌ・ラルパン)の開いたダンス・パーティの夜からエマは様々な男たちと交わるようになっていった。パイヴァ家には娘が2人生まれるがエマは旅行家フェルナンド・オゾリオ(ディオゴ・ドリア)のヴェスヴィオ園にしばしば訪れて、浪費を重ね、快楽を求めてますます苦しみの深みにはまっていった。ヴェスヴィオ園の執事の甥、友人の息子と情事を重ねるエマ。そんなある日ヴェスヴィオ園の執事であったカイレス(ジョゼ・ピント)が訪れ、自分は今事業に成功していて投機で失敗したカルロスの助けになれる、自分はエマを長い間慕っていたのだと口説き始めた。エマは憤慨して断り、すべてを捨て去り家を出ることを決心する。エマはお互い尊敬の念を持ち続けていたリティニャに別れの挨拶をし、ヴェスヴィオ園に向かう。屋敷からオレンジ畑を通り、エマは桟橋に向かい、腐った敷石に足を取られて水死した。数日後カルロスは公園のベンチで死んでいた。
スタッフ・キャスト
- 監督
- マノエル・デ・オリベイラ
- 脚本
- マノエル・デ・オリベイラ
- 原作
- アグシティナ・ベッサ・ルイーシ
- 製作
- パウロ・ブランコ
- 撮影
- マリオ・バロッソ
- 美術
- マリア・ジョゼ・ブランコ
- 音楽
- Nuno Vieria de Almeida
- 録音
- アンリ・メコフ
- 編集
- マノエル・デ・オリベイラ
- バレリー・ロワズルー
- 衣装デザイン
- イザベル・ブランコ
- 字幕
- 金七紀男
- 吉岡芳子