ポルノ時代劇 忘八武士道

劇場公開日:1973年2月3日

解説

暗黒の過去を引きずって今日を流れる非情の男の生々流転のありさまを、剣の無情、愛欲非道をからませて描く。原作は小池一雄・作、小島剛夕・画の劇画『忘八武士道』。脚本は「まむしの兄弟 傷害恐喝十八犯」の佐治乾、監督は「緋ぢりめん博徒」の石井輝男、撮影は「恐怖女子高校 女暴力教室」の鈴木重平がそれぞれ担当。

1973年製作/81分/日本
配給:東映
劇場公開日:1973年2月3日

あらすじ

“人斬り死能”と恐れられている非情の男、明日死能は、役人に追われていたが、吉原遊廓の忘八者、白首の袈裟蔵とその一党に助けられた。“忘八者”とは、八つの徳、「孝、悌、忠、信、礼、義、廉、恥」を全て忘れた無法者、人にして人に非ず、人たる姿を忘れた鬼畜外道の集りで、江戸吉原一帯をとりしきる無頼の徒をさして忘八者と称した。明日は白首から仲間入りをすすめられ、そのための“忘八試し”を受けるが、さすがの明日も、外道に徹することはできなかった。しかし、吉原総名主・大門四郎兵衛に気に入れられ、客分にとり立てられた。このころは江戸では、湯女、茶屋女など私娼窟が流行し、御公義にばく大な冥加金を納めている吉原としては、それらをつぶす機会を狙っていたが、明日を味方にしてから、大門はいっきに行動に転じた。大門から初代首斬り浅右衛門が使ったという大刀“鬼包丁”を与えられた明日は次々と私娼窟退治をしていき、以前よりも増して人々から恐れられた。大門は老中の評定所が動くことを期待して、事を荒だてたが、期待に反して老中は、大門との正面衝突を避けるため、秘かに黒鍬者と呼ばれる忍者を放って明日の命を狙った。このため白首の命令でお紋、お陸、お甲ら女忘八者が明日を護衝する。やがて、黒鍬者の襲撃が始った。凄絶な斬り合いが展開される……。一方、大門は江戸中に、茶屋女を、吉原に足抜きさせた者には多大の賞金を出すと広言した。このため、茶屋では相次ぐ女の略奪がつづいた。窮した私娼窟と吉原の関係は一触即発の状態にまでなった。そこで老中が仲裁に入り、大門の総支配下となる共存共栄策が打ち出された。明日を斬る、という条件であった。今や、邪魔な存在となった大門はまず明日を阿片で骨抜きにしてしまう。しかし、全てを知った明日、もうろうとした意識の中で、忘八者、捕物陣を次々と斬っていった。やがて、降りしきる雪を血に染めて明日は力つきてしまった……。

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スタッフ・キャスト

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映画レビュー

4.0 エロ・グロ・アクション時代劇の逸品

2025年12月22日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

東映チャンネル(スカパー!)の放送にて。

東映のエロ・グロ路線を牽引した石井輝男監督の成人指定映画。
タイトルに堂々と“ポルノ時代劇”と謳ってるのが今となっては却ってほのぼのと感じる。

小池一夫+小島剛夕による「忘八武士道」という劇画は知らなかったが、この映画を観ていると原作の絵が想像できる。小池一夫らしいストーリーとエロティシズムだ。
お紋(ひし美ゆり子)を頭(?)とする女忘八たち(ただの遊女ではなく、“くノ一”みたいな)が、敵が仕掛けた火をゴロゴロ転がって身体で消すところとか、クライマックスで阿片に麻痺した人斬り死能(丹波哲郎)が自分に剣を刺して正気を保とうとするところなど、恐らく原作にあるのだろうと想像する。

60年代後半から、テレビに取られた観客を劇場に取り戻す策として東映が量産したピンク時代劇(と呼んだかどうかは知らない)カテゴリーの作品だが、特に石井輝男作品はエロティシズムとサディズムを強めた“異常性愛路線”と呼ばれたようだ。
東映ピンク路線は当初は成人指定ではなかったが、石井輝男は(東映の意向で)過激に突っ走り、成人指定ポルノ映画が東映の柱のひとつになっていた。

本作は、当時としてはエロ・グロをとことんやり抜いたんだろうと感じるが、剣客が主人公なのでバイオレンス描写にも注力しているから裸と血しぶきのオンパレードだ。
斬られた腕が飛び、脚が飛び、首が飛ぶという、アクション時代劇としての面白さもちゃんとあるのだ。
中でもライティングを駆使した石井輝男の演出テクニックは見事。

伝説のアクション・テレビドラマ「キーハンター」がまだ放映されていた時期で、丹波哲郎にポルノ時代劇をやらせたのだからある意味ですごい。
丹波はB級チャンバラ映画や五社英雄のテレビ時代劇で身につけた技術を発揮していて、高く跳躍したりする派手な殺陣を難なくこなしている。
石井輝男の丹波への信頼感は厚かったらしい。

加えて、ひし美ゆり子だ。
東宝を退社した直後にヌード写真(引退記念だったらしい)が雑誌に掲載(流出?)され、当時の大学生はザワついた。友里アンヌのファンたちは成人になっていたのだ。
当時の映画界では、〝脱ぐ〟となったら話は変わる。契約を更改しなかった東宝も、松竹も東映も、フリーになったひし美ゆり子をスクリーンに引っ張り出して脱がせた。
そんな中で出演した何本かの成人映画の一本が本作だ(恐らく、最初の成人映画)。
もうこの頃は慣れたもので、金髪の外人尼を貼り付けにして性感攻めしたりしちゃっている。

1966年の『丹下左膳 飛燕居合斬り』以来、’78年の『柳生一族の陰謀』が12年ぶりの東映時代劇映画ということになっているが、ピンク時代劇は連綿と作り続けていて、作り手たちはピンク路線のなかで様々な工夫と挑戦を試みていたのだから逞しい。

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kazz

4.5 冒頭から石井輝男演出が冴える

2022年12月17日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

冒頭のタイトル部分から流血シーンや火花散るチャンバラ。ポルノ時代劇と謳うだけに、ひし美ゆり子、池島ルリ子、相川圭子など妖しい女忘八役の女優陣が裸身を魅せる。劇画を意識した石井輝男演出は、降りしきる雪の中、明日死能(丹波哲郎)が阿片で朦朧とした意識の中で、捕物陣を相手に五体が宙を舞う凄まじい殺陣を展開する。捕物陣と切り結ぶ丹波の殺陣はさすがに上手い。石井監督と丹波哲郎は新東宝時代からの盟友で、東映に移ってからも親しく、石井監督晩年の低予算自主制作作品「地獄」(平成11年)にも明日死能役で付き合っている。剣の無情、愛欲非道を描いた大人向けの娯楽時代劇。

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papatyan