トニー滝谷

劇場公開日

解説

孤独に生きてきた男が知った人を愛する喜びと人を失う切なさを描いたシンプルなラブストーリー。監督は「竜馬の妻とその夫と愛人」の市川準。村上春樹による同名短篇を基に、市川監督自身が脚色。撮影を、写真家の広川泰士が担当している。主演は、「みすゞ」のイッセー尾形と「父と暮せば」の宮沢りえ。第57回ロカルノ国際映画祭審査員特別賞、国際批評家連盟賞、ヤング審査委員賞受賞、第26回ぴあフィルムフェスティバル上映、サンダンス・フィルム・フェスティバル2005 ワールド・シネマ・ドラマティック・コンペティション ノミネート作品。

2004年製作/76分/日本
配給:東京テアトル

ストーリー

トロンボーン奏者を父に持つトニー滝谷は、幼い頃からずっと、孤独だった。だから、特にそれを淋しいとは思わなかった。だが、大学を卒業しデザイン会社に就職した後、独立してイラストレーターになった彼は、やがてひとりの女性に恋をする。結婚、幸せな生活、しかし蜜月はあまりに短かった。妻と死別したトニーは、孤独に耐えかね、容姿、体型とも妻にそっくりな久子を、アシスタントに雇うことにした。買い物依存症だった妻が遺した大量の高価な服を、彼女に制服として着て貰い、少しずつ、妻の死に慣れようと思ったのだ。ところが、その服を見た彼女は、理由もなく、涙を流した。結局、トニーは彼女を雇うことをしなかった。そうして、1年の歳月が流れた。全てを忘れた今でも、トニーが時々、想い出すことがある。それは、衣裳部屋で泣いた久子のことだ。悩んだ末、彼は彼女に電話をかけてみる。

全文を読む(ネタバレを含む場合あり)

スタッフ・キャスト

全てのスタッフ・キャストを見る

U-NEXTで関連作を観る

映画見放題作品数 NO.1(※)! まずは31日無料トライアル

※GEM Partners調べ/2021年10月|Powered By U-NEXT

関連ニュース

関連ニュースをもっと読む

映画レビュー

4.0かつてこれほど成功した村上文学の映画化があっただろうか

2020年3月31日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

「トニー滝谷の本当の名前は、本当にトニー滝谷だった」。西島秀俊のナレーションがこの原作の書き出しを作品内に響かせる時、一瞬にして透明感に満ちた世界が広がった。単なる純粋無垢な透明でなく、どこかひんやりと冷たさが残る、青みがかった白。個人的に原作からは灰色の世界をイメージしていたところがあったので、この色彩は逆に鮮烈だった。出演者は最小限。むしろ言葉と音楽と、人と舞台との親密なセッションを見ているかのようなところがある。ここで舞台と書いたのは、本作が実際の建築物ではなく、丘の上に設営されたセットで撮影されているから。窓の外に余計なビルなどが写りこまず、自然光を十分に取り入れるためのものだ。市川準監督はここまでして世界観を作りこまないと村上文学のあの唯一無二の特殊さは表現できないと考えたとのこと。ただ、ラストは少しだけ変わっている。この映画には監督の優しさと慈愛が滲み出ている。そんな気がした。

コメントする
共感した! (共感した人 0 件)
牛津厚信

4.0ストーリーテリングが巧み

琥珀糖さん
2022年8月2日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

村上春樹の短編が原作です。
この独特のストーリーはやはり天才のもの。
主人公のトニー滝谷。その名の由来を聞いただけで、
掴みは完璧です。
トニー滝谷は日系2世か3世の日本人で、実在する高明な芸術家である。
殆ど信じそうになりました。

トニー滝谷(イッセー尾形)の父親は、渡米もしたことのあるジャズ・トロンボーン奏者。
母親はトニーと名付けられる前、出産後3日で亡くなります。
省三郎の友達の進駐軍の将校がトニーと名付けてくれる。
幼少期、トニーの父親は巡業で殆ど留守です。
孤独な少年を慰めたのは絵を描くこと。
幸い絵の才能があり、トニー滝谷はイラストレーターとして成功します。
孤独癖は相変わらず抜けずに、中年になります。
そんなある日、《風のように洋服をまとう女性》蓉子(宮沢りえ)が編集者として、
トニー滝谷の作品を受け取りに来ます。

トニー滝谷は蓉子に恋をします。
幸運にも結婚に至り、トニー滝谷は孤独をしばし忘れることに・・・。
しかし、妻を失ってまた孤独になったら耐えられるか?と新たな恐怖に駆られます。

蓉子は洋服に精神を蝕まれた女でした。
ブランド物の洋服を際限なく買い漁るのです。
やがて部屋を建て増す程に増えて、蓉子もトニーも、途方に暮れることに。
トニーが、・・・買い物を控えたら・・・と遂に言いました。

洋服を返しに行った蓉子は、返したコートとスーツのことで頭が破裂しそうになります。
そうしてハンドルを切り、車は今来た方向へ急転回します。
事故でした。
蓉子は事故死してしまいます。

2005年。監督:市川準。74分と短いです。
この映画はイッセー尾形と宮沢りえがふた役を演じています。
イッセーはトニーと父親の滝谷省三郎を。
宮沢りえは妻の蓉子と、トニーが妻の身代わりに残した洋服を着る女の、ふた役を。
市川準は宮沢りえの顔を左半分を写すことが多かった。
宮沢りえは佇まいの美しい妻の蓉子と、素朴で心優しいアルバイトに応募する女性を、
見事に変化を付けて演じています。

イッセー尾形は孤独で心を閉ざした中年男性にはピッタリでしたが、
宮沢りえには不釣り合いな夫に見えてしまった。
愛し合っていないから心の隙間を埋めるために、買い物に依存する?
多分それでは普通すぎると思う。

トニー滝谷は妻の衣類を売り払い・・・
2年後に亡くなった父親省三郎の形見の古いジャズレコードも売り払う・・・
その結果としてどうしようもない喪失感と孤独に襲われるのだった。
自分がすっからかんの空っぽに思える。

洋服、レコード(着物、本、靴、バッグ、宝石などなど・・・コーヒーカップのコレクションや、
その他、茶道や華道のお道具など心を砕いた品々)

物質とは心の隙間を埋める《なにか》かもしれない。
あまり断捨離などを進めると心も空っぽになるのかも知れない。

不思議な余韻の映画でした。
よく分からないけれど、トニー滝谷の孤独が、身に染みました。

コメントする (コメント数 0 件)
共感した! (共感した人 0 件)
琥珀糖

3.0村上春樹のパブリックイメージをそのまま落とし込んだ作品、まるで鉱物の様に

2021年8月28日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:VOD

知的

難しい

原作未読。私にとって初の村上春樹原作の映画。彼の作品のパブリックイメージそのまま落とし込んだような深い作品。1万円はしそうな舞台を観ているような気分だった。

孤独な男、トニー滝谷。彼に滲む孤独の背景と生き様を淡々と綴る。語りとセリフ、音楽がモノトーンでありながら、咀嚼できぬ重みを乗せてストーリーを彷徨っていく。右から左へ流れる映像は、過去から未来へと続いていく無情さに写り、思い出して立ち止まった時の彼の背中は、どこか儚くも思えた。

そんなトニー滝谷を演じるのはイッセー尾形。なんだか不気味でありながら、作品の色を作れてしまう天才的な俳優だと惚れ惚れする。そんな滝谷の相棒となる女を演じるのは、宮沢りえ。透明感の中に潜む空っぽな心が時々顔を覗かせる。行動に意味ありげなモノすら感じられて、ますます重い。また、語りが西島秀俊だったことが意外だった。『ドライブ・マイ・カー』の予習がてらこの作品を選んだので、ラッキーとは思った。ただ、ホントに異質な匂いのしてくる作品。

このあと色々と考察を漁ってみようと思う。なぜこの作品が評価されているのか、漠然とした感情しか掴めていない自分に問いながら観てみたいと思う。鉱物のような硬い映画だった。

コメントする (コメント数 0 件)
共感した! (共感した人 1 件)
たいよーさん。

4.5【遺された…】

ワンコさん
2021年8月20日
iPhoneアプリから投稿

今日、2021年8月20日夕方に観に行く予定にしている村上春樹原作の「ドライブ・マイ・カー」も、この「トニー滝谷」も、妻を失うという話がベースになっている。

この「トニー滝谷」は、なかなか上手い表現は見つからないが、村上春樹作品の雰囲気を非常によく伝えているように感じる。

短編をモチーフにして、物語の幅を大きく広げて作られた作品はあるが、これに対して、「トニー滝谷」は、雰囲気が非常に村上春樹作品的なのだ。

そして、この作品を特徴付けるのは、故人の遺したものと向き合うというところではないのか。

妻の遺した膨大な洋服。
父の遺した貴重なレコード。

それらは、故人そのものなのだろうか。
それとも、故人の何か生きた証のようなものなのか。
或いは、故人を補完するもの…。

家族を失った喪失感、或いは、故人と向き合うというより、遺されたものに囚われてしまうことで感じる孤独。

処分してしまったところで、その意味を考え続けることからは決して逃れられず、それは、まるで、亡霊のように付き纏う。

そして、もう一つ、残された自分自身は、彼等にとって、どのような存在であったのか。意味はあったのか。

自分も遺されたものであることに違いはないはずだ。

ずっと、考え続けなくてはならない。

洋服やレコードは、実は、遺された自分自身のメタファーではないのか。

村上春樹作品に、よく取り沙汰される喪失感や孤独といったものと少し異なるフレーバーが加えられた作品のように感じる。

オウムのテロや、阪神淡路大震災を経たから、少し作風が変わったという人もいたりするが、それは、作品を読んだ人や、こうした映画を観た人が、それぞれ感じるものだろう。

ただ、エピローグに加えられた原作にはない部分に、映画としての解はあるのかもしれない。

結局、答えを見出せず、愛した人の幻影を、人混みのなかに探してみたり、見つけてしまうことは、僕にはある。

コメントする (コメント数 0 件)
共感した! (共感した人 2 件)
ワンコ
すべての映画レビューを見る(全12件)
関連DVD・ブルーレイ情報をもっと見る