トニー滝谷

劇場公開日:2026年3月27日

解説・あらすじ

村上春樹の同名短編小説を、「トキワ荘の青春」「つぐみ」の市川準監督がイッセー尾形と宮沢りえの共演で映画化したラブストーリー。

トロンボーン奏者の息子として生まれたトニー滝谷は、生後すぐに母親を亡くし、孤独を抱えたまま成長する。デザイン会社勤務を経てイラストレーターとして独立した彼は、ある女性と恋に落ち結婚する。しかし幸せな日々もつかの間、妻は事故で他界してしまう。孤独を実感した彼は亡き妻によく似た女性をアシスタントとして雇い、買い物依存症だった妻が遺した大量の服を彼女に着てもらうことで妻の死に慣れようとするが……。

主人公・トニー滝谷とその父をイッセー尾形、トニー滝谷の妻と彼女に似た女性を宮沢りえが演じ、西島秀俊がナレーションを担当。坂本龍一が音楽を手がけた。2004年・第57回ロカルノ国際映画祭で審査員特別賞、国際批評家連盟賞、ヤング審査員賞を受賞。2026年には4Kリマスター版でリバイバル公開。

2004年製作/75分/日本
配給:アンプラグド
劇場公開日:2026年3月27日

その他の公開日:2005年1月29日(日本初公開)

原則として東京で一週間以上の上映が行われた場合に掲載しています。
※映画祭での上映や一部の特集、上映・特別上映、配給会社が主体ではない上映企画等で公開されたものなど掲載されない場合もあります。

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映画レビュー

3.5 高画質化で際立つ“小説のプロモ映像”的性質

2026年3月30日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

悲しい

知的

登場人物を演じる役者に台詞だけでなく小説の地の文まで語らせたり、イッセー尾形と宮沢りえにそれぞれ二役を演じさせたりと、きわめて演劇的な作り。市川準監督はCM制作からキャリアをスタートさせた映像作家で、もともと村上春樹の小説のファンだったあこともあり、この「トニー滝谷」は独立した映画というよりも原作小説のプロモーション映像のようだ、という印象が今回の4Kリマスター版で強くなった。

CMであれMVであれ、商品や楽曲の魅力を的確に伝えてプロモーション(販売促進)につなげる点では同じであり、その意味で本作が小説のプロモーション映像的性質を持つのは悪いことではない。ただ、小説へのリスペクトが強いあまり、原作を凌駕するほどの独自の魅力や面白さを備える映画にはなりえなかった。最近たまたまNHKの日曜美術館で岡本太郎がピカソについて語る古い映像を目にしたのだが、その中で岡本は、素晴らしい芸術に出会っても尊敬や崇拝にとどまってはいけない、その対象と格闘し打ち負かしてより素晴らしいものを創造する精神が重要なのだ、といった趣旨の主張をしていた。

本作の初公開は2005年1月で、1952年生まれのイッセー尾形は撮影時50過ぎ、1973年生まれの宮沢りえは30か31歳。抽象度の高い舞台劇なら同じ役者が幼少期から老年期まで演じ分けても観客側は頭の中で無理なく変換して没入できるが、具体やリアリティが求められる映像作品だと、たとえば50過ぎの俳優が長髪のかつらをかぶって大学生を演じているシーンなどに違和感を覚えてさめてしまう。父の滝谷省三郎はイッセー尾形で適役だが、トニー滝谷は3030代くらいの俳優をキャスティングしたほうが違和感のない映画として成立したのではないか。

最後に、坂本龍一が手がけたテーマ曲「Solitude」について。昔観たときは気付かなかったが、今回のリマスター版で、あれ、マックス・リヒターの「On the Nature of Daylight」に曲想がかなり似ているなと感じた。調べてみるとリヒターは米国による2003年のイラク侵攻(対テロ戦争)への抗議の意を込めて同年2月に録音、2004年2月に同曲を含むアルバム「The Blue Notebooks」が発売されている。坂本、リヒター、それにヨハン・ヨハンソンはポスト・クラシカルのジャンルでくくられることもあり、それぞれの仕事を互いに意識しリスペクトしていたはずで、「On the Nature~」の反戦テーマに共感した坂本が返歌的に「Solitude」を作曲したのだとしても不思議はない。なお、「On the Nature ~」はその後「主人公は僕だった」(2006)、「シャッター アイランド」(2010)、「メッセージ」(2016)などメジャーな映画の劇伴で多用されて広く認知された曲だ。

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高森郁哉

4.0 かつてこれほど成功した村上文学の映画化があっただろうか

2020年3月31日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

「トニー滝谷の本当の名前は、本当にトニー滝谷だった」。西島秀俊のナレーションがこの原作の書き出しを作品内に響かせる時、一瞬にして透明感に満ちた世界が広がった。単なる純粋無垢な透明でなく、どこかひんやりと冷たさが残る、青みがかった白。個人的に原作からは灰色の世界をイメージしていたところがあったので、この色彩は逆に鮮烈だった。出演者は最小限。むしろ言葉と音楽と、人と舞台との親密なセッションを見ているかのようなところがある。ここで舞台と書いたのは、本作が実際の建築物ではなく、丘の上に設営されたセットで撮影されているから。窓の外に余計なビルなどが写りこまず、自然光を十分に取り入れるためのものだ。市川準監督はここまでして世界観を作りこまないと村上文学のあの唯一無二の特殊さは表現できないと考えたとのこと。ただ、ラストは少しだけ変わっている。この映画には監督の優しさと慈愛が滲み出ている。そんな気がした。

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牛津厚信

4.0 埋められない心

2026年4月10日
iPhoneアプリから投稿
ネタバレ! クリックして本文を読む
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猫柴

5.0 何も足さない‼️❓何も引かない‼️❓村上春樹の真髄‼️❓

2026年4月7日
PCから投稿

ほとんどの著作を読んだが、ファンとゆうか、ハズレが一つもない、ただそれだけ。
どの作品も理屈も捏ねず、人間心理の最大公約数を直接的に描く、一番凄いのは文章や言葉が唯一無二。
ところで今作は、原作に忠実に、いや、そのままに、何も引かない足さない、それが素晴らしい👍
トニーの心理、妻の心理、妻に瓜二つの彼女の心理が、直接的で、尚且つ、そのまま観るものに突き刺さる。
ストーリー、セリフ、演技のどれにも原作から逸脱せず、過不足無し、それは村上春樹原作の映像化として奇跡だ。
誰もが知っている喪失感を誰もが目撃できるだろう、村上春樹が好きなら、是非。

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アサシン5