トニー滝谷

劇場公開日:

解説

孤独に生きてきた男が知った人を愛する喜びと人を失う切なさを描いたシンプルなラブストーリー。監督は「竜馬の妻とその夫と愛人」の市川準。村上春樹による同名短篇を基に、市川監督自身が脚色。撮影を、写真家の広川泰士が担当している。主演は、「みすゞ」のイッセー尾形と「父と暮せば」の宮沢りえ。第57回ロカルノ国際映画祭審査員特別賞、国際批評家連盟賞、ヤング審査委員賞受賞、第26回ぴあフィルムフェスティバル上映、サンダンス・フィルム・フェスティバル2005 ワールド・シネマ・ドラマティック・コンペティション ノミネート作品。

2004年製作/76分/日本
配給:東京テアトル
劇場公開日:2005年1月29日

あらすじ

トロンボーン奏者を父に持つトニー滝谷は、幼い頃からずっと、孤独だった。だから、特にそれを淋しいとは思わなかった。だが、大学を卒業しデザイン会社に就職した後、独立してイラストレーターになった彼は、やがてひとりの女性に恋をする。結婚、幸せな生活、しかし蜜月はあまりに短かった。妻と死別したトニーは、孤独に耐えかね、容姿、体型とも妻にそっくりな久子を、アシスタントに雇うことにした。買い物依存症だった妻が遺した大量の高価な服を、彼女に制服として着て貰い、少しずつ、妻の死に慣れようと思ったのだ。ところが、その服を見た彼女は、理由もなく、涙を流した。結局、トニーは彼女を雇うことをしなかった。そうして、1年の歳月が流れた。全てを忘れた今でも、トニーが時々、想い出すことがある。それは、衣裳部屋で泣いた久子のことだ。悩んだ末、彼は彼女に電話をかけてみる。

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映画レビュー

4.0かつてこれほど成功した村上文学の映画化があっただろうか

2020年3月31日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

「トニー滝谷の本当の名前は、本当にトニー滝谷だった」。西島秀俊のナレーションがこの原作の書き出しを作品内に響かせる時、一瞬にして透明感に満ちた世界が広がった。単なる純粋無垢な透明でなく、どこかひんやりと冷たさが残る、青みがかった白。個人的に原作からは灰色の世界をイメージしていたところがあったので、この色彩は逆に鮮烈だった。出演者は最小限。むしろ言葉と音楽と、人と舞台との親密なセッションを見ているかのようなところがある。ここで舞台と書いたのは、本作が実際の建築物ではなく、丘の上に設営されたセットで撮影されているから。窓の外に余計なビルなどが写りこまず、自然光を十分に取り入れるためのものだ。市川準監督はここまでして世界観を作りこまないと村上文学のあの唯一無二の特殊さは表現できないと考えたとのこと。ただ、ラストは少しだけ変わっている。この映画には監督の優しさと慈愛が滲み出ている。そんな気がした。

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牛津厚信

4.0村上春樹の映画化では、稀有な成功作だと思う

2025年3月12日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

2008年に59歳で惜しくも亡くなった市川準の2005年の作品。原作が村上春樹の短編。

村上春樹は、初期の作品から「ノルウエーの森」あたりまで、好きで読んでいた。最近は読んでないが、映画は村上春樹の文体を思わせる映画で、原作自体を読んでいないが、確かに村上春樹の世界を感じさせる映画だった。

大森一樹が「風の歌を聞け」を80年代に撮ったが、出来は、まあまあだったが、結局、村上春樹の原作を映画化する難しさを感じさせたものだった。今回は、市川準の作風に合ったのか、とてもいい具合に映像化されていた。

村上春樹の小説を一言で言うと、自分(主人公)と外界(他人や物など)との距離感を絶えず確認していくことがテーマのように思った。そこには、独特の孤独感があり、群れたがる日本人像とは一線を画す主人公像を感じられ、それが私にとって村上春樹の小説の魅力だった。

この映画「トニー滝谷」はその辺がとてもうまく映像化できていて、尚且つ、美しい。映画としては、劇的な部分が少なく、淡々としているが、その辺も魅力になっている。

主人公はイッセー尾形。彼はいつもの臭さは感じるが、それがひとつ孤独をまとったスタイルにも見えて適役だった。相手役の宮沢りえも危うい雰囲気が魅力的で、これも村上春樹の小説の住人になっていた(宮沢りえはひとり二役)。

撮影スタイルの統一感や、スケッチ風な描写で、ストーリーで語るのではなく存在(人も物も)のありようを克明に描くことで、語られるこの映画世界は、村上春樹の小説の雰囲気を上手く表している。

ラストの終わり方も秀逸。見る側に、戸惑いと寂寥感を残してしまう。

ちょっと変わった映画だが、やはり傑作だと思う。

「ノルウエーの森」や「世界の終りとハードボイルドワンダーランド」も市川準に是非映画化してもらいたかった‥‥。

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mac-in

3.5ほぼ2人芝居

2024年1月7日
iPhoneアプリから投稿

 オシャレな映画。
こんなに服ばかり買う奥さん、大変だなあ。結局彼女は事故?自殺?

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アンディぴっと

3.0ああこの感じだ

2023年10月29日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

悲しい

 孤独に慣れていたイラストレーターのトニー滝谷は、英子に惹かれ結婚。幸せに暮らしていたが、妻は買い物依存症で高価な服を買ってしまう。そんな時に、彼女が急死。再び孤独になったトニーだったが、妻にそっくりな久子をアシスタントにし。
 いくつかの作品を呼んでいるだけで、特に村上春樹のファンではありません。村上作品を読んだ時に想像する色や音を、ぴったり表現していると感じました。もしハルキストの人たちが同様に感じているのなら、自分の読み方は間違ってなかったと判断できそう。

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sironabe